フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター、19世紀ドイツ、アカデミズム。
夢を壊して悪いがね、これはとんでもない偽物なのだ。中身はドブスなのだよ。恥知らずなどというものではない。ほとんど何も知らない魂が、極上のよい女になりたくて、ものすごい美人から顔を盗んだのだ。
エリーザベトはオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に見初められて結婚したが、その結婚生活は幸福ではなかった。堅苦しい宮廷の作法や人間関係についていけず、はけ口を贅沢三昧の暮らしに求めた。皇后としての義務は放棄しながら、その財産を食いつぶすやり方は放埓だったという。馬鹿のやりようはこういうものだ。いいものになりたい、いい目に会いたいというだけで、なんでもやってしまうのだよ。彼女はマリー・アントワネットのように市民革命によって処刑されはしなかったが、一人の無政府主義者によって暗殺された。馬鹿の末路はよくこうなる。どうしても法則の反動が来るのだ。古代や中世の時代はこれほどではなかったが、近現代の王族や皇族には、こういうよいものになりたいというだけの馬鹿がやたらと多い。王制がすたれていくのも仕方がないことなのである。