世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

魔法

2015-03-14 07:24:12 | 瑠璃の小部屋

銀の炎を着た君は
風に揺れる白い菊のように指を揺らす
すると本当に
指先に白い真珠のようなつぼみが現れて
それを卵にして 君はたくさんの白い鳩を生むのだ
鳩はしばらく群れとなって上空を何度か回った後
ばらばらになって菫色の空に溶けていく

ああ よく見れば
銀の炎と見えた君の服は
風を凍らせて作った雪のように白いスーツだ
光が毛羽立つように君を覆っている
氷なのに 静かに燃えている
熱くはないのかい?と尋ねてみると
君は 氷だからねと そっけなく答える
ああ ほんとに
僕ときたら わかるはずなのに
わからなくて いつも
変な質問ばかり君に聞かせてしまうのだ

心が 目から滴って
体の重さに負けてしまう前に
僕は彼をまねて 魔法をやってみた
すると 僕の手は風に踊る菜の花のように揺れて
黄色いつぼみを卵にして 白い蝶々がたくさん生まれるのだ
ああ と僕は叫ぶ
白い蝶々は風の中を紙ふぶきのように舞いながら
やがて風に乗ってどこへともなく消えてゆく
僕がうれしそうな顔でそれを見ていると
君がいうのだ

すてきだね 君はもっと
心を大きくしていいと思うよ

うん
君がそう言ってくれるので
ぼくは本当に助かる
アクリルで作った偽物の空気が 
一瞬で本物の空気に戻って
呼吸が楽になって
ああ まだ生きていけそうだなって 思う




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