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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

蕩蕩たり

2007-07-05 09:51:18 | てんこの論語

子曰く、君子は坦として蕩蕩たり。小人は長なえに戚戚たり。(述而)

先生はおっしゃった。君子はいつものびやかにおちついている。小人はいついつまでも、くよくよしてばかりいる。

なんといいますが、人が、いちばんいやなこと、味わいたくないことのひとつは、長々と人の愚痴を聞かされることです。毎日毎日、同じことばかり。

なんであのとき、ああしておかなかったんだ。こんなになるまで、なんで気がつかなかったんだ。おれはなんで、こんなことをしたんだ。こんな苦しいことになるって、わかっていたら、やらなかったよ。

過去のこと、終わってしまったことを、いつまでもくよくよしたって仕方ないでしょう。いつまでもいつまでも、そればかりやっているのか。苦しいこと、悲しいことはわかるけれど、そればかりでは、みんなあきれて、あっちへ行ってしまうよ。

と、言ってはみるのだけど、当人は、自分の悲哀にずぶずぶとはまっていくばかり。そこからは何も始まらない。しかもそしてそういう人に限って、ときどき、冷たく人を切るようなことを言ったりするのです。

あなた、そんなことをしたら、もうだめよ。すごい失敗しちゃったね。完全にだめよ。あーあ、やっちゃった。

それを聞いた人は、胸がつぶれるほどに苦しい。なぜなら、自分の失敗を一番痛いと感じているのは自分だから。苦しくて、あまりにも辛くて、何とかして取り戻そうと、考えていたところだったのに、その傷に塩を塗って、心を粉々に割り砕くようなことをする。そのわけは、自分がしてしまったことが、あまりに苦しいから。取り戻せないと思うほど、大きな失敗だから。それなのに、何も努力しようとしないから。だから、似たように、失敗をした人を見つけると、大喜びでその傷にすがりつき、絶望させようとする。

あなたもわたしと同じよ。もう取り戻せないよ。阿呆になってしまったよ。

小人はいつまでもいつまでも、そういう風に過去にばかり生きて、苦しみ続ける。そればかりか、その苦しみに人を巻き込もうとする。自分だけ苦しいのはいやだからと。

その苦しみがいやなのなら、なしてしまった失敗をよきこととするために、何かを始めるのが、一番よい薬なのですが。君子ならば一番にそう考える。自分の力の足りなさのために、人を傷つけてしまったら、くよくよそれを悔いてばかりいる前に、まずどうすればいいかを考える。今できる最善のことを考え、それをやる。それが、あまりにちっぽけでつまらないことのように見えても、傷つけてしまった人の心を、かけらも埋めることができないとしても、ただ目の前の、自分にできる一山を、やりはじめる。

たとえそれを人から馬鹿にされても、わたしはわたしの、ほんとうの誠意をやっているのだからと、必要以上に恥じることはない。笑って、こう言えばいい。そう、わたしは馬鹿なんですよ、馬鹿みたいにやってしまったんです。だからこうしていま、馬鹿をやっているんですよ。

苦しいな。わたしはほんとうに馬鹿だ。だからこそ、わたしはわたしが、いいんだな。

人間が、失敗をするのなんか、当たり前です。だって、ほんとに、なんにもしらないんだもの。失敗が、教えてくれるんだもの。あらゆることを。苦しみ、悲しみ、やりなおしていくために、必要なもの。そして愛。すべてを。

完璧じゃなきゃ許されないって言う人は、うそをついているんだよ。人に言えない、痛い秘密をかかえて、それが苦しいんだ。だから人を、許さないんだよ。
失敗したら、恥ずかしがらないで、やり直していいんだよ。つらすぎることは、考えなくていい。馬鹿になって、目の前の一山を、やりなさい。


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