今日は三回目の更新です。明日に回そうと思ってたんだけど、あんまりビーストが悪さをするので、もうばらしちゃうぞ!てことで、もいっかい書くことにしました。
ビーストは、わたしがこれ書くのが、とっても困るんだそうです。やめてくれえっていって、邪魔します。でもね、そのわりに、みんな自分で話したりするのよ。聞いてくれよ~、おれはこんなことやってるんだよ~ってね。ビーストも、いろいろつらいことがあるみたいです。
ビーストはね、ほんとはとっても弱いのです。人間がうらやましいのは、人間とおんなじことが、できないから。人間みたいに、難しいことを、やってみたいの。すごいことを、やってみたいの。でね、人間の皮を盗んで、人間に化けるんだけど、正直、人間についていけなくて、いろおんな、ばかみたいなことをやって、結局失敗して、ずらかる、ということばかりなんですって。
社会性、というのが、ビーストには難しいそうよ。つまりは、自分というものがわかって、社会とのバランスをとり、役割をしっかり果たしつつ、自分の名前と個性に責任を持って生きていくというのが、ビーストはできないそうです。
つまりね、ビーストは要するに、大勢でないと、何もできない弱虫なの。みんなでやってるんだってことにして、自分は隠れていたいの。怖いからなの。人間のように、立派なことや、大変なことをやるのには、たくさん勉強して、難しい心の問題も、解決しなければならないの。孤独だとか、命だとか、大切なものに真剣に取り組まねばならないの。それはとっても難しいことなの。勉強しないとできないのよ。でもね、ビーストは全然勉強しないの。ばかだっていって、なんにもやらないの。やるのがいやなんだって。なんでってきいたら、にんげんなんてばかだよーってさ。
ビーストはとにかく、つらいことがいやみたい。自分が痛い目にあったり苦しい目にあったりするのはいやなの。勉強なんかは、ばかなやつにやらせて、おれがバカっていって、なんでもやらせてやるんだってさ。それで、責任とれっていったら、逃げるんですって。痛いことはいや。だれでもいいから、ほかのやつに押しつけるの。それでね、ビーストはいっつも失敗して、馬鹿なことになって、逃げちゃうんですって。
ビーストは大勢が好き。大勢でやってれば、怖くないし、強いし、だれがやってるかもわからないし、まずいことになったら、すうっと逃げることができるから。それで平気で、自分はなんにもやってないよって顔で、ふつうの人間のふりして、生きることができるから。
ビーストはいつも、こんなふうに、大勢の蔭に隠れて、ばれないように、だれでもないものになって、いやなことや悪いことばかりしてるんですって。みんな知ってるんだけど、誰も言えないんですって。大勢だから。いつ、自分がやられるかわからないから。人間も、とっても苦しいんだけど、わからないことにして、なんとかしてるの。
ビーストの別名は、「だれでもないもの」なのよ。自分の名前だとか住所だとかは、絶対に秘密よ。だれだかわかったら、ぜったいにまずいってことを、やってるから。ものすごくいやなこと。そんなことばかり、やってるから。
「だれでもないもの」だから、できるのよ。
でもね、この頃は、ビーストの正体がばれまくってるものだから、もう「だれでもないもの」はできなくなってきてるそうよ。責任とれって、強い妖精に怒られてるんですって。それで、ほんとに困ってるんですって。
人間を心底困らせてきた責任を、十分にとらされるんですって。これからは。
それがつらくて、ビーストはいつも、わたしにくどくど愚痴ばかり言ってるみたいです。早く責任とりにいったらっていうんだけど、つらいのはいやだから、もう少しいるってさ。