じふじかの

じふじかの　むかしがたりを　ことのねに　とかしてうたふ　はるかなる風




したたりし　血を吸ひとりし　つちの香の　いまだのこりて　余のむねを噛む




はるかなる　ときの彼方を　見る君の　まなざしに浮く　星の名を問ふ




目をとぢて　わらひとばすも　やすきとは　おもふがこたふ　こはべつれへむ

血のごとき

血のごとき　珊瑚の珠を　目にこめて　君はひとつの　孤独の裂け目






白鳥の　声なくて呼ぶ　悲しみの　青空に染む　涙を浴びぬ

闇路ゆく

千里ゆく　ひとのおもひに　つきかげの　しろきあしあと　ついて来よとふ





闇路ゆく　ひとのおもひは　わかれども　しばしかくれよ　しらたまの月

ますぐにも

ますぐにも　赤くしたたる　傷をもて　地にきざみたる　君故の道




愚かなと　いふ君の目を　微笑みに　そらして我は　まだ先をゆく




ゆくなとは　いはぬが君の　その足の　砕け散りては　もはや進めぬ




くづをれて　夢に心を　吸ひ取られ　倒るる我を　君が背負ふか

阿呆蛙

阿呆蛙　足でつぶそか　手で打とか　どちらがよいと　たづねてもみむ




阿呆蛙　どちらもいやと　答へては　風をかすめて　逃げむとぞする




阿呆蛙　そうはゆくかと　つかまへて　甘きからしを　食はせてもみむ




阿呆蛙　まいりましたと　頭を下げて　ほうら逃げろと　馬鹿が打たれる

野を探り

野を探り　森を探りて　子を探す　赤き毬もて　消え去りし子を




山の端の　あをきすみれに　たづねみて　知りしまことを　余は君に秘む




胸の戸を　とぢてまだ吹く　隙間風　明日を信じる　我愚か者




長々と　瞼に隠す　君の目の　闇に溶けむぞ　日はいつ上る

ますらを

あしたゆく　ひとはおのれを　かみしめて　苦き血をなむ　痛きますらを




やへがきの　かひなをふりて　石を負ふ　をのこの道は　厳しともゆく




吹き戻す　風にあらがひ　血を吐きて　骨は裂けても　ゆけ阿呆らめ




うつくしと　いふことのみの　道ならば　おのれをのこの　意味はなきかな

たかゆくや

たかゆくや　はやぶさの羽　風広げ　我知らぬ野に　音もなく去る





いわのとの　ひめかみの秘む　血に割れし　胸はぬひても　また割るる故

面影

なよたけの　影にすがりて　さまよへる　ひとよおのれの　黒き影掘れ





いわのとに　ひとりしづかに　まどろみて　ときに夢みる　ひとの面影

荒れ野にまよふ

あはゆきと　きゆるかなしき　ひとの屋に　せめてよりそふ　星くづの鳥





玉を縫ひ　飾りたる衣　身にまとひ　わらふ阿呆に　やる星はなし





あすはなき　かすみの館　かげりゆく　未だあるとて　荒れ野にまよふ




御心の　悲しみは知る　砂山の　砂に倒れる　人は知らずも