青き実の苦きをなめてはるかなる千歳の道をゆめわずらふな
風かろき日月の水にひたりゐてちどり千鳥の歩幅にてゆく
花の実のふとる吐息に耳よせてかすかにうたふ野のおるごおる
花の香をさらひこしかと風に問ふ君かみしめる今日のあやまち
おくやまに石切る人のその夜の深き眠りにひそみたき百合
ゆふづつのみづにおつるをひろひこよ
余は若竹の玉籠を編む
墨のごとき泥にこもりしその星を
ひろひし君の白きひたひよ
われの目の高さの肩によりそはむ
その若き背の花のごときなれば
ふれむとしてふれぬその手のかたへにて
星飼ふ籠を窓につるしき
☆☆☆
うしなひし幻の星放たれよ天伝ふ日の入る水の果て
ありありてあるこの我のうるはしきことより高き星はなきかな
あだし世をともにせし実のほろ苦きを今在る君と語りたきと思ふ
神よりの あまきこころを ことのはに
とかさむとして きみいひよどむ
ひらかざる さくらのかひの かたくなに
いはざることを とはむとぞする
きよきことを ちかはむとして ためらふは
このよの愛の たよりなきゆゑ
かへりきぬ おれたる薔薇の ふるえだを
いかにせむとて 見ぬ箱に捨つ
あらざらむこの世のほかのかなしみを
露玉を割るごと狂ひたり
ならぬとぞ言ひたりし手を古枝の
ごとくくだきて去り行くか君
君何に勝たむとぞせしまぼろしの
にくきものみなわれにありしと
君君にあらざるものをことごとく
苦しめたきと笑ひ狂ひぬ