MT MANIAX

苦難の時にこそ、われわれは隣人に対して寛大であらねばならない。そうしていれば世界はわれわれにとって寛大なものになるはず。

「きつね」と「たぬき」

2008年02月26日 | 日記
 先日、中国人の社員Aさんと話した会話について。会話の内容は、「きつね」と「たぬき」についてです。きつねうどんについてAさんに説明しようとしたのですが、これが非常に難しいことに気がつきました。
 まず、なぜ「きつね」が油揚げと関係する料理なのかを説明しなければなりません。キツネの大好物が油揚げであることを説明しましたが、Aさんは「???」という表情でした。
 続いて、同じ油揚げに関係する料理として、いなりずしについても質問されました。これには稲荷とキツネの関係について説明しなければなりません。「火事 喧嘩 伊勢屋 稲荷に犬の糞」という言葉があるように、お稲荷さんが日本に広く広まった神様であること、お稲荷さんの使いがキツネであること等々。
 中国人に「きつね」を説明すると、「たぬき」についての説明も避けては通れません。「たぬき」は関西と関東では異なる料理であることは、よく知られていることと思います。
 関西出身の私にとって、「たぬき」とは油揚げが上にのっている「たぬきそば」のことを指します。「たぬきうどん」というメニューは一般的には存在しません。油揚げがのったうどんは「きつねうどん」であるためです。また、同じ理由で「たぬきうどん」も存在しません。
 しかし関東では「たぬきうどん」と「たぬきそば」が存在します。天かすがのっているうどんやそばのことを指します。油揚げがのっているそばは「きつねそば」と呼びます。関西では、うどん屋によっては天かすがのっているうどんを「ハイカラうどん」と呼ぶことがあり、「たぬき」を冠することはありません。関西と関東の違いが現れています。
 話をしている印象では、中国人にとっては、天かすをのせるという点についても、よく理解できないようです。エビやイカなど、中身の入っていない油だらけの天かすが、なぜ麺類のトッピングになるのか。なぜ天かすが、タヌキやハイカラと関係するのか。
 実は「きつね」や「たぬき」のバリエーションは関西や関東以外の地域を含めると、いくつかの種類があります。私がイメージする「きつね」や「たぬき」は大き目の油揚げが一枚、麺の上にどーんとのっているものをイメージしますが、地域によっては、きざんだ油揚げをのせるところもあります。「しのだ(篠田、信田)」と呼ぶそうです。詳しくは書きませんが、京都の「たぬき」も独特です。また、「いなりうどん」や「いなりそば」という名前を使う地域もあります。
 キツネとタヌキが対をなす動物であるという点も面白いと思います。日本人にとっては、人を化かす動物としてキツネやタヌキは昔話を通して知られています。
 こんなことをAさんに説明しましたが、ちんぷんかんぷんになったようでした。当たり前ですね。しかし、「きつね」と「たぬき」について調べると何時間でも楽しめ、奥が深いことが分かってきます。
 うどんの名前については、「かやく」「月見」「かちん(力うどん)」「しっぽく」等々、トッピングを変えただけであるのに、バラエティに富んだ名称が存在します。
 そばにも面白い名前があります。うどんには「盛りうどん」はありませんが、そばには「ざるそば」とは別に「盛りそば」があります。また「鴨南蛮」の「南蛮」とは何のことなのか? 食べ方としては「わんこそば」は非常に面白いと思います。
 うどんやそばの文化は、日本独特の食文化の豊かさの一つであると思います。興味が尽きません。