香山リカ、PHP研究所(PHP新書)、東京、2006
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その数、なんと一九〇〇万人! 「第二次ベビーブーマー」「団塊ジュニア」と称される一群を含む70年代生まれ、いま二十代後半から三十代前半の彼らは、ひそかに「貧乏クジ世代」とも揶揄される。物心ついたらバブル景気でお祭り騒ぎ。「私も頑張れば幸せになれる」と熾烈な受験戦争を勝ち抜いてきたが、世は平成不況で就職氷河期。内向き、悲観的、無気力……“自分探し”にこだわりながら、ありのままの自分を好きになれない。「下流社会」「希望格差社会」を不安に生きる彼らを待つのは、「幸運格差社会」なのか?
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上記は、本書のカバーの袖(カバーの折り返しの部分)に書かれていた紹介文です。本屋で偶然見つけて、気づいたときにはレジへ持っていっていました。
昨年から、引きずっているテーマが心にあります。昨年、『
カーニヴァル化する社会』(鈴木謙介氏、講談社(講談社現代新書)、2005)という本を読みました。その中に、非常に印象的な文章がありました。≪若年層の就業問題とは、既得権益を有した(特に男性の)年長世代が、相対的な弱者としての若者に「たかる」という構図だったことがわかる。≫という文章です。当時は、「なるほど」と納得させらてた文章でした。私と同年代の人たちには、おそらくこのような不満が心にくすぶっているのではないか、と思います(あくまで私の推測です)。恥を隠さず正直に書いてみますと、私が抱いている「時代」に対する不満は、次の通りです。
・高校生の頃にバブルがはじけ、好景気を体験できなかった。
・同年代の人数が多いため、受験や就職の「競争率」が高かった。
・景気の悪さも、競争率の高さの原因となった。
・「年金」、「福祉」、「教育」、「国土防衛」、「家族の絆」等々、多大な社会問題が負の遺産として残された。
・「心の荒廃」が原因とされる犯罪が増加
・国や地方の「借金」が、莫大な額まで膨れ上がった。
不満をあげ続けると切りがありませんので、この辺りで終えます。
最近、私が同年代の人たちに対して感じることは、ここ2~3年で「自称右翼」や「自称ナショナリスト」が急激に増えたことです。10年前は、このような状態ではありませんでした。「反動で、時代の振り子が右に触れた」という文章をよく目にします。私の同年代についてもう少し詳しく考えてみますと、「貧乏クジ世代」の心理が働いていると思います。つまり、「古き良き「日本の伝統」が、自分たちの世代まで届かなかった」という焦りが心に生まれているのだと思います。サッカーの日本代表に対して「サムライブルー」という呼称が使われたり、『葉隠』に関する本がいくつも出版されたり、いろいろな形で「日本の伝統」を懐かしがったり、あこがれる姿を目にします。私たちの親の世代で失われてしまった「日本の伝統」を取り戻したいという心理が働いているのだと思います。
前置きが非常に長くなりました。本書の著者の香山リカさんは、私のような1970年生まれの世代を「貧乏クジ世代」と称し、前半では「貧乏クジ世代」の心理的構造を明らかにしようと試みています。さすが精神科医だと思いました。あながちはずれていないと思いました。そしてこの本の後半では、「貧乏クジ世代」が「アンラッキー世代」と感じる心理構造から脱出するよう呼びかけています。私は、前半の分析も面白いと思うのですが、むしろ後半の方が大事であると思います。頑張っていこうよ、「貧乏クジ世代」の皆さん。