MT MANIAX

苦難の時にこそ、われわれは隣人に対して寛大であらねばならない。そうしていれば世界はわれわれにとって寛大なものになるはず。

パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト

2006年07月31日 | 映画
監督:ゴア・ヴァービンスキー、出演:ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、アメリカ、2006

 大人気海賊映画の第2弾です。映画の冒頭で、いきなり第3弾が来年公開されることが明らかにされます。ということは、主人公3人は、今回は死なないことが容易に推察されます。いくら手に汗握る戦闘シーンが映画の中で続いても、主人公たちが死なないことが分かっているため、ハラハラドキドキ感が半減しました。
 この作品をこれから観る方は、ぜひ念頭に置いておいて欲しいことがあります。映画の話の作り方です。私は映画を観ている最中に気が付きました。娯楽映画の物語の基本は「緊張」と「緩和」です。この『~デッドマンズ・チェスト』は、「緊張」の時間が多い映画です。それは、「1対1」と「三すくみ」のシーンが、連続して押し寄せてくるためです。
 「1対1」のシーンは、ここ一番の盛り上がるシーンで使われます。例えば、主人公 VS 悪の親玉。
 「三すくみ」は、「1対1」のシーンを盛り上げるための前フリで、物語全体の面白さをスパイスする役割があります。例えば、主人公A VS 主人公B VS 前作の悪人 が、宝箱のカギを奪いあうシーン。
 このような「1対1」と「三すくみ」がめまぐるしく展開するため、『トムとジェリー』を少し複雑にしたようなドタバタ劇が繰り出され、映画の観客を飽きさせない娯楽大作になっているのだと思います。
 「1対1」と「三すくみ」のことを念頭においていると、驚くほど冷静に、『~デッドマンズ・チェスト』を観ることができます。冷静に観ることが、良いのか悪いのかは、はっきりといえませんが。

包丁で指を切り、人体の神秘を感ずる

2006年07月31日 | 日記
 一昨日、長ネギを切っているときに、包丁で左手の人差し指を切ってしまいました。ほんの少し深く切ってしまったため気持ちが沈んでしまいました。水道で傷口を流していると、水が染みて痛く感じました。痛さもイヤなのですが、傷の治療のため長ネギを切る作業を中断しなければならないことがイヤでした。
 そんなところだったのですが、今日はスイカを切っているときに、次は右手の親指を切ってしまいました。「どんな包丁の動かし方をすれば、こんなところが切れるんや」と思いますが、とにかく切ってしまいました。早くスイカを食べたいのに、また傷の治療です。気持ちが沈みます。
 両方の傷は、ともに自分で止血できるぐらいでして、順調に回復してきています。毎日消毒して、カットバンでも巻いていれば、そのうち完治すると思います。
 傷を治療するときは、当然、傷口をよく観察しなければなりません。観察していると、人間の身体の働きを垣間見ることができます。
 はじめは血がタラタラ流れてくるのですが(血の話になってスイマセン)、ティッシュペーパーで傷口を覆って強く圧迫していると、徐々に血が出てこなくなります。止血直前は、傷口から粘度が高そうなドロッとした血が少しだけ出てきます。そしてそのうち、血が出てこなくなります。皆さんご存知の通り、血液中の血小板による凝固作用です。
 ケガをすると(それほど大きなケガでなければ)、冷静な視点を持っていれば、回復しようとする身体の働きを実感できます。神秘を感じます。人間の身体は、よくできていると思います。自分の体に神秘を感じ、感謝の気持ちを抱いてしまいます。

数独おもろ!

2006年07月30日 | 日記
 最近、よく楽しんでいる遊びは「数独(すうどく)」というものです。一般的には「ナンバープレース(ナンプレ)」とも呼ばれているパズルです。どのようなパズルなのかは、Wikipediaの記事などを参照してください。
 昔は、Windowsに付属していた「マインスイーパ」というゲームをよくやっていましたが、「数独」もかなり面白いパズルです。じっくりと論理的に考えながら問題を解くことが好きな人は、「数独」を好きになると思います。
 本屋さんへ行くと、「数独」・「ナンプレ」の雑誌が、イラストロジックやクロスワードパズルなどの雑誌の近くに売られています。どうやら有名なパズルのようです。私は2週間前まで知りませんでした。
 興味のある方は、今、NHKオンラインで「数独」を遊べます。また、Googleで検索してみると、無料で遊べる問題を、かなりたくさん見つけることができます。
 問題をにらみながら考えていると、1時間でも2時間でもあっというまに時間が過ぎてしまいます。そういえば、私の父親は「テトリス」や「上海」というパズルゲームが大好きでした。よくパソコンの前に座って、時間を忘れたようにパズルに取り組んでいた父の姿を思い出します。パズルゲーム好きの家系なんだろうか。

夏だっ! 自転車で辛い季節を乗り越えるぞ

2006年07月29日 | 日記
 今日は7月29日です。毎月29日は「肉の日」です(本当)。来月8月29日は「焼肉の日」です(笑)。昨日7月28日は「難波の日」だそうです。語呂合わせばっかりやなあ。
 さて、本格的な夏がやってきました。日差しの強さが、梅雨の時期と明らかに違います。肌に刺さるような太陽の光。今年は梅雨が長かったため、この日差しの強さが、例年以上に強く感じられます。夏が苦手な私にとって、辛い季節が始まりました。秋が待ち遠しいです。
 最近、夜に自転車をこぐようにしています。22時頃になると、外の気温はさすがに下がっており、汗が噴き出してくることはありません。私の住んでいるアパートの中の方が、外よりも室温が高くなっています。昼間の太陽のために、アパートの壁に熱が蓄えられているような感じです。夜、涼しくなると自転車に乗って、1時間ほどフラフラと街中を移動します。夕涼みになります。また、1時間ほどフラフラした後、アパートへ帰り、シャワーを浴びるとすぐに寝られます。
 今日は、mp3プレーヤーでJUDY AND MARYのアルバム『The Great Escape』を聴きながら自転車をこぎました。夜中に大音量で音楽を楽しみながらフラフラと自転車をこぐことのは、生産性が全く感じられないため、贅沢な夏のすごし方かもしれません。

日本沈没

2006年07月29日 | 映画
監督:樋口真嗣、出演:草なぎ剛、柴咲コウ、豊川悦司、大地真央、日本、2006

 ネタバレを含んでいますので、以下、ご注意ください。
 ある意味、この夏最大の邦画といえると思います。各種メディアでたくさん報道されていますので、あらためて繰り返す必要などまったくないのですが、小松左京原作の小説をもとにした映画『日本沈没』(1973)のリメイクです。73年版を観たことがなく、小説もの読んだことがありませんので、『日本沈没』に触れるのは初めてです。しかも、今回のリメイク版の監督は、平成ガメラシリーズの特技監督の樋口真嗣です。期待が高まりました。
 感想ですが、特撮は最高でしたが、物語が残念でした。「なんでこうなるの?」と突っ込みを入れたくなるシーンがいくつもありました。

・小野寺(草なぎ剛)の実家は造り酒屋。小野寺の姉が切り盛りしており、この姉を和久井映見演じていた。『夏子の酒』のパロディやろ、これは。
・小野寺が「わだつみ2000」に乗り込む前夜、玲子(柴崎コウ)と再会するシーン。そんなにあっさりと再会できるものなのか?
・再会した小野寺と玲子がテントの中のシーン。いったい小野寺は何しに行ったの?
・小野寺が「わだつみ2000」に乗り込む当日の朝、ヘリコプターで離陸直前に玲子がバイクでやってくるシーン。なぜ玲子はこのヘリポートの場所が分かったの?
・限界深度2000mに設計された「わだつみ2000」が、深海4000mで頑張って活躍するシーン。
・結城(及川光博)が操縦した「わだつみ6500」も、小野寺が操縦した「わだつみ2000」も、ミッション完了ギリギリのところで、海流の流れの急激な変化でピンチに追い込まれる。
・崖に取り残された叔母たちを、玲子が助けるシーン。偶然すぎるやろ、この再会は。

 などなど。物語が終盤に近づくにつれて突っ込みどころが多くなり、映画の世界に集中できなくなりました。特撮に限らず、スクリーンの映像や構図がうまくできていたので、残念でした。予告編にもありますが、バックでヘリコプターのブレードがゆっくり回転し、草なぎ剛と柴咲コウがガシッと抱き合うシーンは美しいです。
 役者陣は良かったと思います。豊川悦司が演じる田所博士は、学者学者していない熱いハートの持ち主でとても良かったです。豊川悦司の演技は素晴しかったです。大地真央も意外と役にはまっており、良かったです。大地真央が演じた役(女性の文部科学大臣兼、危機管理担当大臣)は、最近の邦画では黒木瞳や川島なお美が演じそうな役でしたが、大地真央が適役であったと思います。大地真央が出演している映画を(おそらく)初めて観ましたが、このキャスティングは素晴しいと思いました。配役の難点は主人公の草なぎ剛でした。草なぎ剛は、熱い男には向いていないと思います。『ホテル ビーナス』(2004)や、テレビドラマ『フードファイト』(2000)のような、うつろな目をした男の役が合っているように感じます。

自社の工場の衛生チェック

2006年07月28日 | 日記
 私は食品加工場の品質管理を仕事としています。会社の商品の中でも仕入れ商品を専門としており、自社工場に関しては素人です。
 今日、自社工場の衛生管理状況の確認のため、工場チェックというものを行ないました。業界では「工場チェック」や「工場査察」や「工場インスペクション」など、様々な呼び名があります。ようは、安心・安全が必須となる食品工場内で、商品が衛生的に製造されているか確認する検査です。
 前述の通り、私は仕入れ商品専門なので、自社の工場チェックは非常に難しかったです。これまで本当に色々なジャンルの工場を訪問してきましたが、自社工場の製品は食品分野の中でも少し特殊なジャンルになります。よって、私がこれまで培ってきた工場チェックに関する考え方やノウハウが、うまく生かすことができず、戸惑いました。私の頭の中の常識が、通用しないような感覚です。勉強になりましたね。

正露丸の類似性

2006年07月27日 | 日記
 大阪地裁が面白い判決を出しました。大幸薬品と和泉薬品工業が発売している、それぞれの「正露丸」に関する裁判でして、大幸薬品が和泉薬品工業に対して「正露丸」の製造販売差し止めと6400万円の損害賠償を求めていた裁判です。大幸薬品がラッパのマーク、和泉薬品工業はひょうたんのマークを箱に配しています。これがポイントとなり、識別のポイントとなる)ラッパとひょうたんは似ておらず、混同の恐れはない」として、不正競争防止法違反には当たらないと判決を下しました。「和泉薬品工業の箱で『ラッパ』にあたる部分は『ひょうたん』で、類似しないことは明らか」ということだそうです。おもしろ~。
 個人的には、両商品の箱はめちゃくちゃ似ていると思います。薬屋さんに和泉薬品工業の「正露丸」だけが並んでいたら、私はラッパのマークの「正露丸」と思い込んで買うと思います。しかし、大幸薬品が「正露丸」を独占することは、いいとは思えません。
 「正露丸」には、何か因縁めいた、きな臭い歴史があるのかもしれません。調べてみたらもっと面白いかも。

中国語の勉強に四苦八苦

2006年07月26日 | 日記
 毎週、水曜日の18時から、会社で中国語の研修を受けています。今日は研修の第4回目でした。語学の勉強は10年ぶりぐらいです。会社で中国語を勉強できることはありがたいのですが、私は中国語をこれまでに勉強したことがないため、四苦八苦しています。
 痛感していることが二つあります。一つは、予習復習がいかに大事であるかということです。小学生の頃から言われていることであり、今さらではあるのですが、苦手な科目ほど意識して予習復習しなければ、授業の流れについていけません。中国語を勉強したことがないため、余計に重要になってまいります。昨晩は23時から25時までかけて、予習、復習、宿題をしておりました。
 二つ目に痛感することは、私が「音」に関してセンスがないことです。カラオケが上手な人は、耳で音を聞くことと、聴いた音を口で再現できる能力に長けた人だと思います。反対にカラオケが苦手な人は、音を聞き分けることと、音を再現する能力に乏しいと思います。私はカラオケが苦手で音痴です。「音」のセンスがありません。中国語研修を通じて痛感していることは、カラオケと外国語学習は通じるところがあり、カラオケが苦手な人は外国語学習も苦手であるということです。中国語の発音は、非常に難しいです。
 中国語学習の経験がないことと、音のセンスがないことは、努力でカバーするしかありません。勉強が面白いと思う反面、今後研修についていけるか不安が一杯です。

ヒガシカタ・ノリスケが登場!!(ネタバレ注意)

2006年07月25日 | 日記
 『ジョジョの奇妙な冒険』と『スティール・ボール・ラン』を知らない方は、すいませんが読み飛ばしてください。

 集英社の月刊漫画雑誌『ウルトラジャンプ』8月号で、『スティール・ボール・ラン』を読みました。な、なんと、期待の日本人キャラクター「ヒガシカタ・ノリスケ」が登場しました!!!!!
 以前から順位表に名前だけ登場しており、気になって気になって仕方がありませんでした。名前は、明らかにジョジョ第4部の主人公「東方仗助」を意識した名前だからです。どのような姿なのだろうか。仗助のようなリーゼントの侍なのだろうか。スタンド使いなのだろうか。ひょっとしたら、物語の最後まで姿を見せないのだろうか。「ヒガシカタ・ノリスケ」を漢字に直すと「東方乗助」となり「ジョジョ」になるのだろうか・・・・・・。
 今回、登場した「ヒガシカタ・ノリスケ」は老人でした。異形な服装ですが、顔は第4部のときのジョセフ・ジョースターに似ているように感じました。「こんな方法があるか!!」と思い、驚かされました。ファン心理と、意表のつかせ方が、まさに絶妙です。脱帽。スタンド使いなのかなあ。頭脳戦が得意な老獪な人物で、仲間になるんじゃないかなあ。
 Dioの部下になるスタンド使いも気になります。「ヒガシカタ・ノリスケ」と関係があるのか。「ヒガシカタ・ノリスケ」本人なのか。スタンドは、ゴールド・エクスペリエンスと、エコーズを足したような能力なのか。
 妄想が広がります。ますます次号からの『スティール・ボール・ラン』が楽しみになってきました。この漫画は面白いです。

雨ニヤラレタ

2006年07月24日 | 日記
 今日は日中、天気が悪かったため、すずしい夜となりました。自転車に乗って
夕涼みをしようと思い、21時10分に家を出ました。シューッと自転車をこいでいると、突然、夕立のような強い雨が降り出してきました。「天気予報では降水確率10%なのに!」と思いましたが、時は遅し。かろうじて近くにコンビにがあったため、あわてて雨宿りしました。ローソンに入った時間は21時20分。10分ほど待つと、雨が小雨になってきましたので、自転車で急いでアパートへ帰りました。なんか、雨に濡れに出掛けたような感じで、不完全燃焼です。1時間ほど自転車をこぎたかったのに。早く梅雨が明けてほしいです。

M:i:III

2006年07月23日 | 映画
監督:J・J・エイブラムス、出演:トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン、アメリカ、2006

 人気の『ミッション:インポッシブル』シリーズの第3弾です。なんか、トム・クルーズによる、トム・クルーズのための映画になっています。物語は、もうおなか一杯っていう感じでした。スパイ映画らしさは、かなり失せていました。1作目の、天井からトム・クルーズが吊るされるシーンのような、静けさの中でドキドキ手に汗握るような緊張感がありませんでした。しかし、アクションシーンは良かったです。
 敵役のフィリップ・シーモア・ホフマンについては、昔から「こいつ、めちゃくちゃ腹黒そうやなあ」と思っていました。今回の『M:i:III』では、めちゃくちゃ悪い役なので、少し笑ってしまいました。

初恋

2006年07月22日 | 映画
監督:塙幸成、出演:宮崎あおい、小出恵介、宮崎将、小嶺麗奈、日本、2006

 「作品の舞台は1968年の三億円事件」
 「犯人は18歳の少女だった!?」
 「タイトルは『初恋』」

 ものすごくキャッチーな要素から構成された作品ということもあり、かなり楽しみにしていました。近所のシネコンでは上映されない作品ですが、最近できたミニシアターのおかげで、スクリーンで観ることができました。感謝!
 犯罪映画と恋愛映画(青春映画?)が混じったような作品ですが、犯罪映画の要素はかなり抑えられていました。むしろ、18歳の少女の初恋の話に、たまたま三億円事件が絡んできたという感じです。
 一見すると、三億円事件と、少女の生活と、1960年代の学生運動の時代の話が、うまくまとまっていないように感じられます。しかし、この映画の中では、それぞれが現実であり、それぞれが非日常であったと考えると、うまくまとまりすぎる方がおかしいと思います。三億円事件のような「シンプル・イズ・ベスト」な大事件を、もし自分が犯したならば、おそらく自分のやった犯罪について同じような非現実的な感覚に陥ると思います。
 私がこの映画を見て受け取ったメッセージは、「人が生きていくには、心の隙間を埋めてくれる存在や言葉が必要である」ということでした。めちゃくちゃ面白い映画という分けではありませんが、ジンワリと心にこみ上げてくる切なさや、爽やかな風が、とてもいい映画でした。宮崎あおいの演技はよかったです。

どっからでもかかって来い! 売文生活日記

2006年07月22日 | 
日垣隆、ワック、東京、2006

 あいかわらず怒りまくっていますねえ(笑)。挑発的なタイトルも素晴しい。しかも、帯(腰巻)に書かれている一言がすごい。「思考停止のオマエらとは とことん闘うよ!」
 日垣隆さんの最新作です。以前から日垣隆さんの書籍やメールマガジンを読ませていただいていますが、最近、ラジオや雑誌などで、ちょこちょこお名前を耳にする機会が増えました。
 本書の中身は、雑誌『WiLL』に連載されていたものを、まとめたものです。日垣隆さんが、腹の立ったことや、いいなあと思ったことを日記風に記されたものです。この作家の文体や取材方法が好きなので、飽きることなく、一気に読めました。

陽気なギャングの日常と襲撃

2006年07月22日 | 
伊坂幸太郎、祥伝社(祥伝社ノン・ノベル)、東京、2006

 『陽気なギャングが地球を回す』(2003)の続編です。昨日読んだ『~地球を回す』が面白かったので、本屋に行って続編を購入しました。
 今回の話のメインは銀行強盗ではなく、人質の奪還です。月刊雑誌『小説NON』への連載の形式と、その連載の加筆修正と、本書への書き下ろしの都合上、物語は連作短編集を思わせるような展開になっています。もともと4人の主人公がそれぞれ登場する短編になるはずが、長編の小説になったようです。それゆえに、伊坂幸太郎さんの連作短編集向けの技を発見することができました。
 前作に続き、本作でも4人の登場人物の魅力を存分に味わうことができます。前作にあった、成瀬がかけた電話に響野が出た、という「えぇぇ!?」という展開はありませんでしたが、充分に楽しめました。雨の日に、軽く読書したい人には最適かもしれません。

陽気なギャングが地球を回す

2006年07月21日 | 
伊坂幸太郎、祥伝社(祥伝社文庫)、東京、2006

 2003年に刊行された新書の文庫版です。先日、この物語を原作とた映画を見たばかりですが、伊坂幸太郎さんは好きな作家でしたので、書店に並んでいる文庫版を衝動買いしました。
 キャラ立ちしている犯罪小説です。キャラ立ちしている犯罪者の物語として、私のような年代の人間にとってなじみが深いのは『ルパンIII世』です。『ルパンIII世』は、海外文学『怪盗ルパン』をモチーフにした作品です。しかし、私より若い人には、『怪盗ルパン』の存在を知らず、『ルパンIII世』のみを知っている人がいます。何が言いたいかというと、『ルパンIII世』が日本でかなり親しまれているということであります。先日、連載を終えた『デス・ノート』でも同じことがいえるのですが、なぜ犯罪者の物語なのに人気が出るのでしょうか。様々なトリッキーな方法でう犯罪を成功させる過程が楽しいことは大前提ですが、「犯罪者である登場人物の魅力」が、人気の鍵になると思います。
 そういう意味では、『陽気なギャングが地球を回す』に登場する4人の銀行強盗は非常に魅力的なキャラクターです。キャラ立ちしているなあ、と思います。特に、意味も無い話を永遠にしゃべり続けられる響野は、見ていてとても面白く感じました。4人の中に、アクセントとして響野がいるから、この物語は成り立っていると思います。こんな人が現実に近くにいたら絶対にイヤだろうなあ、と思いますが。
 一番面白いシーンは、詳しくは記しませんが、成瀬がかけた電話に、響野が出るシーンです。「えぇっ!?」と思います。物語の中で、いつも冷静沈着な成瀬があわててしまうシーンですが、この本の読者も一瞬わけが分からなくなり、混乱してしまいます。これはめちゃくちゃ面白いです。