球形ダイスの目

90%の空想と10%の事実

【ネタバレ注意】ドラクエ映画 YOUR STORYの感想

2019-08-13 | 趣味(旅行・娯楽・読書・食)
ドラクエVの映画ということで、高い話題性がありつつ、ネットでも賛否両論のこの作品。
25年ほど前にゲームをやった懐かしさから、見に行ってみようというモチベーションは結構あって。
他からネタバレされないうちに見るべきと思い、本日見に行ってみました。
これから感想を書いていくが、めっちゃネタバレしているので、未見の方は見ないことを勧めます。
それから、原作厨のコメントは見たくもないという人も、どうぞブラウザを閉じてください。
※映画本編にて、主人公の名前が"リュカ"になっているので、以下その表記を使っていきます。
マザー3ではない。

〇最初に
まず結論。個人的に賛か否かと言われたら"賛"。理由は、当時の懐かしさを大いに感じられたから…かな。
もう少し言うと、この映画の長所である"過去にゲームをプレイした当時へのノスタルジー"成分が、
他の短所に勝った。これが最たる理由。
本作最大のイベントであり、唯一取り返しのつかない要素でもある結婚。ゲームプレイ当時は、
まさに自分の結婚前夜よろしく、夜中にサラボナの街を歩き回って、晴れがましくも
正面きって向き合うのは気恥ずかしい
バラの花が咲くような音楽に浸っていたのを思い出した。

と、結論を"賛"にしたものの、映画中には見ていて
ネガティブな感想を持ちがちな場所が沢山ある。特にキャラクタ間で関係を深めていく
プロセスの描写が圧倒的に不足しているのは否めない。
僕が言うまでもなく沢山の人がそれを指摘するだろう。

〇あらすじ
下記するように細かい部分は殆どカットされているが、一応原作に沿っている。
主人公の性格はかなり軽い。仲間モンスターはスラリンとゲレゲレのみ。
結婚相手はビアンカ。フローラが自分から身を引き、
ビアンカとの結婚を後押しするくらいのことをしてしまう。
魔界への封印を守る指輪はなく、魔界と現世との扉は天空の剣が担う。
また、魔界そのもの描写はなく、ラストダンジョンと大神殿がくっついたような構造になっている。
ミルドラースが出てこない代わりに、ゲマを倒した時点で、突然ゲームでは見たことがない
外観の白い変なロボットのようなヤツが出てきて、"この世界は虚構で、誰もかれもが全てデータだ"
などと言い出し、ビアンカや息子などを次々に消去していく。

そいつ曰く、
"私はウイルス、このデータの世界を消去する。ゲームの中の世界などに浸っていないで大人になれ"
などと言って、この映画の舞台が実はゲームの中であるという衝撃的な事実を暴露し、
主人公を現実世界に引き戻そうというのである。結局リュカ(に扮する主人公)は、
ゲームの思い出の力は現実に劣らないという強い思いでウイルスの揺さぶりを跳ね返し、勝利。
ゲームでの世界を守り、現実世界での良い思い出も守ったというところで終劇。

〇テーマ
この映画は、"ドラクエVってこんなゲームだったよね、それを今の技術でもう一度見ようよ"
という要素と、"ゲームの世界であっても、それをプレイした人の心に残ったものは現実で
触れたものと遜色はないんだ"という二つのメッセージで成り立っている。
前者はウイルス野郎が劇中で堂々と口に出してしまっている。でもって、後者は主人公の最終的な意志ある。

"ゲームが終われば、愛する妻と勝ち取った平和はきえるだろう
しかし、この世界の おもいではげんじつとして、こころにのこる。
そして・・・ キミはいつかこの世界を おもいだすだろう。
この思い出こそ、キミのほんとうの記憶では、ないだろうか"
(ゼルダの伝説 ゆめをみる島 のかぜのさかなのセリフ改変)

このフレーズを思い出した人もたくさんいるんじゃないかな…
そして、このフレーズを後生大事にしている人は案外この世にいるのではないかと思う。

〇感想
"まぁ、色々粗はあったけど、当時を思い出したり、心の揺さぶられるポイントはあったし、
良かったんでない?"という感想。
だが、その良さとは個人的な思い出にリンクするものであるため、他者と共有することを期待はできない。

一通りゲームの内容を覚えている人は、勝手に頭の中で大筋を補完するので
大して気にならない(はずだ)。しかし、プレイしていない人にその筋を汲み取れっていうのは酷。
イベントを端折り過ぎで、"よくわかんないけどこういうゲームだったんだね"と
ムリヤリ受け入れざるを得ないものになってしまっている。これは感情移入の観点で致命的で、
心が離れてしまう人がかなりいるだろうと感じられた。

それからラスト10分の"ウイルス"の出てくるくだりは…
頼んでもいないのに観衆の感情を逆なでする煽り行為のようだった。

まぁ、ゲームにハマるというのは、現実から仮想世界に逃げるみたいな言い方をされ
兎角マウントをとられがちである。
しかしいい加減それを劣っていることみたいな言い方をするのは時代錯誤だと俺は思う。
毎日はやっぱり苦しくツマランし、気分転換は必要なのだ。

〇音楽
基本的にVの音楽が中心と言いたいが、実際はVIの音楽もかなり使われている。
他のシリーズもあったと思うが、多分VとVIが中心だった。
強制労働から脱出を企て、樽が流れるときに塔の音楽、
サンタローズに戻ってきた際にカルベローナの音楽、
マスタードラゴンが崖を上る時にムドーのテーマ、など。
一度見ただけで覚えているくらいなので、ある程度印象的だったのだろう。

V原作の音楽のバリエーションに乏しいところがあり、
主人公の心模様を描いた?ウェットで寂しげな曲が多い。
元気な曲、勇壮な曲はこれといったものがなく、別シリーズの曲から借りてこないといけないというところか。
あるいは、VIは楽曲として優れたものが多いのかもしれない。


参考:本編と比較し、削られている要素
・ラマダとイブールの存在(笑)
 SFCより後の移植作ではゲマばかり強調されてこの人たち冷遇され過ぎだよね…
 当時はイブールは強敵だったんだけど、今やすっかりネタ枠になっていることをどうとらえて良いかと思う。
・ラインハットの太后
 みんな大好きニセたいこうの出番は0です。
・グランバニアの存在
 グランバニアのグの字も出てこない。その所為でパパスの存在も軽い。
 これも尺の都合なのは理解するが、それにせよパパスの扱いの軽さは少し
 悲しいものがある。
・指輪
 尺の都合か。フローラとの結婚条件は、指輪を取ることではなく、
 ブオーンの打倒になっている。それ自体は割と自然な設定。
・娘
 展開の都合としか言いようがない。
・殆どのモンスターは仲間にならない
 まぁ、これも展開の都合としか言いようがないな。
・マリアとヨシュアは出てこない
 そのため、奴隷生活から脱出する時に犠牲を払った悲壮感が無く、
 "やったぜ!"くらいの感想しかない。
・天空城は出てこない。
 代わりに、プサンは大神殿の麓の町にいることになっている。
 なお、七三ヘアーのおっさんではなく、ハゲ爺になっていた。
・主人公の最強装備などは無い。
 よって、パパスのつるぎが最終装備。レッドイーターなんて知りません。

参考:原作と違う展開
・ブオーンが主人公に降伏し、仲間になること。
 僕は、まぁ映画だし別に違ってもいいんじゃないと思ってあまり気にしなかったけど…
・幼少時にフローラとリュカの面識があることになっている。
 原作はサラボナでいきなり出会っていきなり結婚みたいな話になって面食らうので、
 その違和感の軽減にはなっている。
・フローラが自ら身を引く
 平和的解決のためのファインプレーとしか言いようがない。
 結婚イベントで散々迷ったユーザからは安易な折衷案と批判される可能性はあるだろう。
 けど、俺は支持する。
・主人公が石化される状況と、石化されてからの扱いが違う。
 どこかの家の守り神になったりはせず、ゲマの魔術に石化させられてド放置。
 まぁ、尺の都合か。
・パパスの死に方がメッチャヌルかった。
 何がヌルいかって、ゲマの炎攻撃を受けた後でも肉体が残っていて、
 最後にリュカと言葉さえ交わす余裕があったこと。
 SFCでは、メラゾーマと思しきものを受け、直後に影も形も無くなっていたのとはえらい違い。
 あれは子供心にかなりショッキングだったが。
・パパスとマーサの会話
 終盤にパパスの魂は出てこない。そのためマーサに救いがない感じになって哀しい。
原作の、
 パパス「どうやら私たちの子は 私たちをこえたようだ。子供たちの未来は
 子供たちにたくそうではないか。さあ マーサ こっちへおいで。」
 マーサ「はい あなた…」
 の部分が個人的に非常に好きで、そのくらいの救いがあって欲しかったな。
・ジャミ、ゴンズとバルバロッサ
 小ネタ。ジャミの手下と言えばオークLv20とキメーラLv35だが、こちらではバルバロッサ3体。
 編隊を組んでいるとティターンズのようである。バルバロッサはバーザムか。
 (結構インパクトがあった。)

ところで…周囲のマイナス意見が多すぎて、
このプラス意見をUpすること自体がすごい怖いのは内緒。

コメント
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