2014年9月26日のブログで「旧暦の秋の衣更えがどのタイミングなのか分からない」というようなことを書いたのですが、たまたま図書館で借りた『日本服飾史』(増田美子、東京堂書店、2013年)に、以下のことが載っていました。*漢数字は旧暦です。
105ページ~
『宗五大草紙』(伊勢貞頼著。大永8年=1528年成立の故実書。)より、男性の更衣(衣更え)について書いてある部分。
三月中 袷+薄小袖
四月朔日から 袷
五月五日から八月 帷(かたびら)
九月朔日から 袷
九月九日から 袷+小袖
十月の亥子 袷+紫色の小袖
十月の亥子から 袷+複数の小袖
123ページ
安土桃山時代から江戸時代の衣更え。仕立て方の違いにより、次の三種類に分類します。
①袷(あわせ):裏を付けて二重に仕立てたもの。
②綿入れ:二重に仕立ててその間に綿を入れたもの。
③単衣(ひとえ):裏の付かないもの。もしくは帷子(かたびら):裏の付かないもので麻製のもの。
四月一日から五月四日まで 袷
五月五日から八月中 単衣・帷子
九月一日から九月八日 袷
九月九日から三月まで 綿入れ
以上のことから、現代の6月と9月の単衣は、過去の歴史においては「(綿の入らない)袷」の時期と一致しているようです。9月は短いですけどね。
そうすると、「綿入れ」の時期を現代では「袷」の時期に設定し、「袷」を「単衣」に、「単衣・帷子」を「薄物」にスライドすればよいのだから、旧暦で現代式の衣更えをするとすれば、次のようになるでしょうか。
四月一日から五月四日まで 単衣
五月五日から八月中 薄物
九月一日から九月八日 単衣
九月九日から三月まで 袷
これを今年(2015年)のカレンダー(新暦)に直すと、以下のとおりです。
1/1~5/17 袷
5/18~6/19 単衣
6/20~10/12 薄物
10/13~10/20 単衣
10/21~12/31 袷
秋の単衣の時期が短すぎのようですね。それに10月上旬まで薄物、って無理がありますね。現代は、「単衣」と「薄物」の時期は臨機応変でよいでしょうか。薄物から単衣に切り替えるのは、一か月ほど早めたい気分です(もしくは、現代の衣更えを踏襲して「9月から単衣」とするか)。
この方式だと、夏はともかく、秋の衣更えはやや無理があるようです。
「単衣・帷子は旧暦五月五日から八月中」、それ以外は袷という考え方に切り替えてみます。江戸時代の綿入れ袷の時期は、『宗五大草紙』を参考に、袷にさらに重ね着するということにして、「袷+羽織」としてみます。
1/1~5/17(旧暦一月一日から三月末日) 袷+羽織
5/18~6/19(旧暦四月一日から五月四日まで) 袷
6/20~10/12(旧暦五月五日から八月中) 単衣・帷子
10/13~10/20(旧暦九月一日から九月八日) 袷
10/21~12/31(旧暦九月九日から十二月末日) 袷+羽織
これなら、いけそうです。「単衣・帷子」と書いてある部分は、薄物も含む、という考え方です。透けるもの・透けないものの切り替えは、「何月何日」と決めないで、その年の暑さによって、または個人の裁量で切り替えればよいでしょう。
ちなみに2015年11月19日が旧暦十月の初亥日です。『宗五大草紙』によると、この日から、さらに重ね着をするようですが、すでに羽織を重ねてるので、これ以上何を重ね着すればよいのか、分かりません。
ついでに長襦袢のことについて書いておくと、現代、袷の時期の長襦袢というと、身頃は単衣仕立てで、袖が無双袖、裾は引き返し、という仕立て方が一般的ですが、私は昔ながらの身頃も袷仕立てになったものを作りたいです。
江戸時代には特に麻の裏なしのきものを「帷子」、絹の裏なしを「単衣」と呼んで区別するようになり、明治時代以降は、「単衣」が両者を意味するようになった。
帷子はまさに盛夏の用いられるのに対し、単衣がその前後の時期に着用される