はなしのひろば

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歌を忘れたカナリヤは

2020年01月02日 20時46分36秒 | Weblog
詩人を目指していた西条八十、実家の父親の死、兄の放蕩により一家は破産し、母と7人の兄弟を養うため意に沿わない株取引、天ぷら屋の商売に手を出しわずかな財産も失ってしまった。
 そんな時、生まれたばかりの長女を抱いて上野公園を散策していると少年時代に見た教会のクリスマスの光景がふと蘇ってきた。灯されたろうそくのなか一つだけ消えていて、カナリヤの群れの一斉に鳴くなか一羽だけ歌を忘れたカナリヤのよう、それは詩人になる夢を忘れて似合わない株取引や商売に熱中する自分のよう。それに気づいた八十であった。
 大正七年「赤い鳥」に掲載された「カナリヤ」はそれまでの子供の歌のイメージをがらりと変え爆発的ヒットとなった。
歌を忘れたカナリヤを打ち捨てず、象牙の船、銀の櫂、月夜の海に浮かべて、忘れた歌を思い出す、文学・芸術性の高いものになっている。


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