水の丘交通公園

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青函連絡船 津軽丸型車載客船 「羊蹄丸(Ⅱ)」

2011-09-29 18:03:38 | 保存車・博物館
青森と函館を結んでいた青函連絡船で運用されていた蒸気タービン船の置き換えの
ため登場した車載客船である。
姉妹船として「津軽丸」、「八甲田丸」、「松前丸」、「大雪丸」、「摩周丸」、「十和田丸」が
存在し、本船は「摩周丸」と「十和田丸」の間に建造された。
製造年は昭和40年で建造を担当したメーカーは日立造船の大阪桜島工場である。
「羊蹄丸」を名乗る船は本船が2代目で初代は洞爺丸型車載客船の第4船で昭和23年~
昭和40年まで運航されていた。

船体はブロック溶接を用いた普通鋼鉄製で甲板は上から順にブリッジのある航海甲板、
グリーン船室や上級船員室のある遊歩甲板、普通船室や食堂のある船楼甲板、
スプリングウィンチや甲板長倉庫のある中甲板、鉄道車両を搬入するための車両甲板、
総括制御室や下級船員室のある第2甲板で構成される。
なお、本船は鉄道車両を搬入する関係で電気溶接後に発生する「縮み」が許されず、
十分な対策が採られた上で製造されている。
車両の積載数は48両(ワム型貨車換算)で車両甲板の配線は4線(12:14:10:12)となる。
塗装はアイボリーにエンジのツートンカラーでエンジの部分は国鉄在来線特急色と
同じものとしている。
煙突のファンネルマークは当初が「JNR」マーク、民営化後は「JR」マークを
取り付けていた。

船室は1等指定席、1等自由椅子席、1等自由席、2等椅子席、2等座席、2等寝台室に
分けられる。
1等指定席は特急「こだま」のパーラーカーに使われたものと同等の1人掛けの読書灯・
レッグレスト付きリクライニングシート、1等自由椅子席は2人掛けのフットレスト付
リクライニングシート(特急用電車と同等品)、2等椅子席は2人掛けの固定クロスシート
(特急用電車と同等品)をそれぞれ採用していた。
それ以外はいわゆるじゅうたん敷きの「升席」である。
寝台室は2段式のものが1等船室の先端側に設けられていた。
船内にはこの他に食堂、軽食堂(喫茶「サロン海峡」)、遊戯室(ゲームコーナー)、
シャワー室が設けられた他、電報や乗車券を扱う案内所が設けられていた。
なお後の等級改正で1等はグリーン船室、2等は普通船室と名称が改められている。
乗客への安全対策として各船室の荷棚や座席の下に救命胴衣を定員分収納した他、
定員以上が乗れる膨張式ゴムボートと膨張式滑り台(世界で初めて採用)、
火災報知機、スプリンクラー消火設備などを設置している。

主機関はディーゼルエンジン8基でスクリューは可変ピッチプロペラが船尾に
2基設置(舵も2つ)された。
この機関はマルチ・プル機関とされ、エンジン2基で1基のスクリューを駆動する
構造となっており、もしどれかのエンジンが停止しても別のエンジンで通常通り
航行が可能である。
また、スクリューに可変ピッチプロペラを採用し、船首側にもバウスラスターが
設けられ、運動性が大幅に向上したことから、出航時のタグボートによる牽引が不要と
なった(接岸時は必要)。
これらはブリッジからの遠隔操作が可能であり、船員の数を大きく減らしている。
また、機関の点検も航海中に可能となり、ドッグ入りの回数を減らせた。
安全対策としては船尾からの浸水を防ぐための水密扉をはじめ、船底を2重にし、
更に13区画に分けて浸水を最低限に防ぐようにしている。
車両甲板では車止めにエアブレーキを設けてブレーキをかけやすくしたほか、
車体を止める緊縛金具、転倒防止のため柱を多くするなどの対策が撮られている。

就航後、遊歩甲板を用いた自動車航送の開始やエンブレムマークを取り付けた以外、
大きな改造もなく運航された。
昭和63年3月13日の青函航路終航時は上り22便として運航されている。
同年6月より開催された青函トンネル開通記念博覧会で十和田丸と共に特別運航された
他、夜間は船上ホテルとして開放された。
この特別運航終了後、船の科学館に展示するため、日本海事科学振興財団に買い
取られた。
しかし、東京都市博覧会の中止に伴うお台場周辺の開発計画の白紙化に伴い、
展示が大幅に遅れ、三井造船にて繋留された。
当初、現役時代のまま展示する予定であったが、イタリアのジェノバで開かれた
博覧会に日本館として参加するため、船内外の大幅な改修を受けた。
イタリアでの展示を終えた後、東京の船の科学館での展示がようやく決定し、
平成8年より「フローティングパビリオン羊蹄丸」として公開された。

船内は既述の通り大改装され、船楼甲板から車両甲板にかけて吹き抜けが開けられ、
エスカレーターが設けられた。
旧車両甲板には昭和30年頃の青森駅周辺を再現した「青函ワールド」となっており、
青森駅を模したコーナーにはDE10形機関車とスハフ44形客車が置かれている。
船楼甲板は受付とプロムナードや日本の海に関する展示、遊歩甲板もラウンジや
ホールに改造され、往時を思い出させるのはブリッジ周りのみとなっている。
外観についても白に青というカラーリングにされてしまったが、こちらは平成15年に
青函航路時代のものに戻された。
平成20年に青函連絡船就航100周年記念行事が函館の摩周丸、青森の八甲田丸と共に
行われた。
その後、大きな変化はなかったが、平成23年9月30日をもって船の科学館と共に
公開展示を終了することが発表された。
公開終了にあたって、無償譲渡されることが発表され、譲渡先が無い場合は
解体されることも併せて発表されている。
明日(平成23年9月30日)で公開は終了するが、今後の予定は未定である。



○青函ワールド内の「青森駅」に展示されたDE10形機関車とスハフ44形客車。


○ブリッジ。


○船首側から。


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