水の丘交通公園

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名古屋市交通局 100形電車

2011-11-17 19:05:19 | 保存車・博物館
名古屋市交通局が同市で初めての地下鉄路線となる東山線の開業用に導入した
車両である。
昭和31年~昭和38年までに40両が製造された。
製造を担当したメーカーは日本車輛である。
編成の組み方は藤ヶ丘側(開業時は栄町(現・栄)側)から順に以下の通り。

開業時:100形(奇数)+100形(偶数)

引退時:100形(奇)+500形(奇数)+500形(奇)+700形(奇数)+700形(偶数)+100形(偶)※
※編成によって若干異なる。

全車電動車でユニットは組まない構造となっており、走行に必要な機器は
一揃い搭載している。
路線延伸による増備車として100形と同様の構造の中間電動車で簡易運転台を有した
500形、本形式で特殊な車体構造だった部分(後述)を通常の構造に改良した200形及び
600形をベースに製造された中間電動車の700形が存在した。

車体は普通鋼鉄製で車体側面構体を床下機器まで包むようにしたボディマウント
構造を採用した。
本形式の製造にあたって市電の「無音電車」と呼ばれる電車をベースに開発したため、
車体の大きさが15.5mと小型である。
塗装はウィンザーイエロー一色で名古屋出身の画家・杉本健吉氏により選定された。
この塗装は東山線及び名城線の鋼鉄製電車にも引き続き採用され(名城線はウィンザー
イエロー+パープルの帯)、「黄電」の愛称で親しまれた。
行き先表示は試作車である101号車で方向幕の搭載が検討されたが採用されず、
高畑延伸までは黄色の縦長の方向板、高畑延伸後は正方形で黒色に黄色文字の方向板
(いずれも2つ折)を貫通扉下部に掲示していた。

車内はオールロングシートで車体が小さいことから圧迫感を与えないように連結部の
通路幅を広くとった。
また、網棚についても同様の理由と乗車時間が短いという判断から敢えて設置を
見送っている。
側面窓は上段下降・下段上昇の2段窓でドアは片側3箇所の片引き戸である。
これらの窓やドアの配置も開発ベースとなった路面電車のものに準じている。

主制御装置は抵抗制御でブレーキは発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキである。
台車は軸バネ支持をウイングバネとした下揺れ枕式コイルバネ台車で
モーターの駆動方式は直角カルダン方式である。
車輪には防振ゴムを挟み込んだ弾性車輪を採用し、走行音の低減を図っている。

最初に製造された101号車は市電下之一色線下之一色~中郷間にてテスト走行を
実施し、開業に向けた量産にデータを残した。
開業後は東山線に投入され、昭和35年~昭和37年まではATOの試験走行を
栄町~名古屋間で実施している。
昭和40年代後半から路線の延伸と利用客の増加で東山線は激しく混雑するようになり、
その中でも特に混雑した藤が丘側先頭車(奇数車)の戸袋窓が客の圧力による
破損が相次いだことから、鉄板への張り替えが実施されている(200形も同様)。
昭和50年代に入り、老朽化が進んだことと車両冷房化のため、後継の5000系が
就役し、昭和63年までに全車が引退した。
本形式のグループのうち、中間電動車・700形の両引き戸車については経年が
まだ新しいものが多かったため、一部車両を先頭車250形として改造し、
平成11年まで運用された。
この先頭車化改造は日本の地下鉄で平成23年現在唯一のものである。

廃車後、107号と108号が藤ヶ丘車庫で保管されていたが、平成12年に日進工場に
オープンした「レトロでんしゃ館」に移設され、公開展示されている。
また、市営交通資料センターには本形式の運転台が展示され操作することが
可能である。


○車内。網棚が無く、蛍光灯が屋根の肩部と側面幕板の接合部に設置されている。
 天井にある丸いものはファンデリア。


○運転台。


○台車。駆動方式は直角カルダン方式である。ちなみにこの台車は135号車の
 ものである。


○ボディマウント構造を採用した床下部分。本形式最大の特徴といえる部分。
 機器の点検の際は側面のカバーを開けて点検しなければならず、抵抗器からの
 放熱もこもりやすかったことから200形・600形から通常の吊り下げ方式に
 変更された。


○打ち子式ATS。東山線の他、東京メトロの銀座線や丸ノ内線でも使用されていた
 保安装置。赤信号になるとバーが起き上がり、台車にあるトリップコックに
 当たって緊急ブレーキをかけるもの。原始的だが、物理的に車両を止める
 方式としては最も確実な方法だった。
 ちなみに東山線では現在、保安装置としてCS-ATCを使用している。


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