雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

人柄が出る ・ 小さな小さな物語 ( 687 )

2015-03-16 10:01:15 | 小さな小さな物語 第十二部
俳優の高倉健さんが死去したニュースが大きく報じられました。
号外まで出る騒ぎでしたが、わが国ばかりでなく、中国においても異例の報道ぶりで、追悼番組まで放送されたようで、今更のように存在の大きさを教えられました。
私自身は、大ファンというほどではないのですが、それでも何本か、あるいは十何本かの映画を見ています。死去を受けて、テレビの広い分野の番組で芸能人の方を中心に多くの著名人がコメントされていましたが、よく聞いてみますと、わざわざ表に出てくるほど親しかったのかと考えてしまうような人も少なくないのですが、それらの人が、自分が高倉健さんと出会ったことがどれほど幸せなことであったのかということを、実に熱っぽく話されていることが印象的でした。

これは、テレビコマーシャルの影響が大きいと思うのですが、高倉健さんといえば、「不器用ですから・・・」というのが代名詞のようになっています。
高倉健さんの大ファンだという人のほとんども、私と同じように映画などを通じてのファンだという人がほとんだと思うのですが、やはり、「寡黙で、不器用で、誠実で・・・」といった人物像を描いているのではないでしょうか。
このところの高倉健さんに関する逸話などを聞いていますと、結構お茶目なところもあるようですが、それを含めても、やはり「寡黙で不器用で」に加えて、離婚することになってしまった江利チエミさんとのその後の関わりなどを聞きますと、「誠実で、愛情深い」なども加えたくなってしまう人柄だったと思われます。

これは、もともと高倉健さんが言った言葉ではないようですが、演技に関して、「人柄が演技に出る」ということを話されていたとも伝えられていました。
かつて、どなただか忘れてしまったのですが、「大俳優、大女優などと言われる人は、演技は下手なものだ」といった内容のことを話されていたことを思いだしました。演技が上手ければ大俳優・大女優にはなれないということではないのでしょうが、本当のスターという人には、演技などではどうすることも出来ない何かがあるということのようです。
実際によく経験することですが、演技が上手いという評判の人が、それまでは脇役主体であったのが、抜擢されて主役を務めることがよくありますが、そのほとんどが色あせた演技者に見えることが実に多いように思うのです。
やはり、全く架空のドラマだとしても、その最も脚光を浴びる登場人物を演じる役者には、どんなに素晴らしい演技力よりも滲み出てくるような人柄といいますか、オーラのようなものを必要としているのかもしれません。

折から、衆議院議員選挙は、公示日前でありながら、さまざまな駆け引きが伝えられています。
立候補予定者は、本当の選挙期間とどこがどう違うのか区別がつかないような状態で、早くも当落が決定しつつある選挙区も少なくないそうです。
さて、「人柄が出る」というのは、何も役者に限ったことではないと思います。
国会議員を目指そうというほどの人であれば、相当の演技力もあるでしょうし、それぞれの道で相当の経験や知識も積んでいることでしょう。当選して、晴れて衆議院議員となる人のすべてに高潔な人柄を求めようというわけではないのですが、演技力、つまり、演説やゼスチャー、見た目の押出やハッタリの強さなどに惑わされないで、滲み出て来るような人柄というものを何とか見極めたいものです。
善人だけで政治が成り立つとも思われませんが、やはり、誠実な人がベースとなる国会を誕生させたいものです。

( 2014.11.28 )

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 違憲状態の戦い ・ 小さな... | トップ | 空理空論 ・ 小さな小さな... »

コメントを投稿

小さな小さな物語 第十二部」カテゴリの最新記事