さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・
姉さんとこの あの男の子は不思議な子だった。
わたしの結婚の世話をしてくれた姉さんとは、結婚後も向かい合わせのような近い所に住んでいたが、その後わたしらは山の方へ引っ越しした。一時間ほどはかかる所だったねえ
その後も姉さんとことは、しょっちゅう行き来をしていたが、そこの男の子は不思議な子だった。小さい頃はそうでもなかったが、学校を出た頃からよく寝込むようになってねぇ。
その子がね、時々不思議なことを言うんだよ。田舎の小父さんが出てくるとか、和歌山の姉さんが寝込んでいるとか、ね。
そして、それがみんな当たっとるのよね。
私が出産間近なとき、その男の子が姉さんに、「山の家に男の子が生まれるからお祝いに行ってやれ」と言ったそうだ。
姉さんが、「あそこは女の子ばかりだけれど、今度は男の子かね」と冗談のように応えると、「そう、男の子だよ。人手がいるから早く行ってやれ」と強い口調で繰り返したとか。
姉さんは、生まれれば何か知らせてくるとは思いながらも、そう遠い所でもないからわたしとこへ向かったのよ。今なら電話で済むが、その頃は、朝早くから、とことこ歩いて、電車に乗って・・・。
そうしたら、姉さんがうちの家に着いたとき、ちょうど産湯を使っているところだった。
本当に男の子だったねぇ、姉さんは驚いていた。
あの男の子、その後まもなく亡くなってしまったんだ・・・、優しい子だったが、なあ。