雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

不思議な子

2010-04-19 14:42:24 | さても このごろは

さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・


姉さんとこの あの男の子は不思議な子だった。


わたしの結婚の世話をしてくれた姉さんとは、結婚後も向かい合わせのような近い所に住んでいたが、その後わたしらは山の方へ引っ越しした。一時間ほどはかかる所だったねえ


その後も姉さんとことは、しょっちゅう行き来をしていたが、そこの男の子は不思議な子だった。小さい頃はそうでもなかったが、学校を出た頃からよく寝込むようになってねぇ。
その子がね、時々不思議なことを言うんだよ。田舎の小父さんが出てくるとか、和歌山の姉さんが寝込んでいるとか、ね。
そして、それがみんな当たっとるのよね。


私が出産間近なとき、その男の子が姉さんに、「山の家に男の子が生まれるからお祝いに行ってやれ」と言ったそうだ。
姉さんが、「あそこは女の子ばかりだけれど、今度は男の子かね」と冗談のように応えると、「そう、男の子だよ。人手がいるから早く行ってやれ」と強い口調で繰り返したとか。


姉さんは、生まれれば何か知らせてくるとは思いながらも、そう遠い所でもないからわたしとこへ向かったのよ。今なら電話で済むが、その頃は、朝早くから、とことこ歩いて、電車に乗って・・・。
そうしたら、姉さんがうちの家に着いたとき、ちょうど産湯を使っているところだった。
本当に男の子だったねぇ、姉さんは驚いていた。


あの男の子、その後まもなく亡くなってしまったんだ・・・、優しい子だったが、なあ。


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1 コメント

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いいですねー! (木戸秋)
2010-04-01 14:43:46
こうした作品は・・・小説ではないし、詩でもないし何なんだろう?でも大好きなジャンルです。生と死と、超越したところにある不思議と、次を期待しています。
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