雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

冬の晴れ間

2023-12-24 18:32:36 | 日々これ好日

      『 冬の晴れ間 』

    大雪のニュースが 伝えられている中
    当地は ほぼ快晴の一日だった
    温度はなお低いが 日差しが温かかった
    久しぶりに 荒れたままの庭を少し手入れした
    こぼれ種からの苗を 掘りあげてポットで育てているが
    今年はどれも元気で 地植えする場所に困っていて
    せっかく減らした鉢植えが また増えそう
    しばらくは 寒さが緩みそうなので
    ポットの苗たちの 居場所をしっかり作ろう

                   ☆☆☆

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男山にし立てり

2023-12-24 08:35:20 | 古今和歌集の歌人たち

      『 男山にし立てり 』


 女郎花 憂しと見つつぞ 行きすぐる
         男山にし 立てりと思へば

          作者  布留今道 

( 巻第四 秋歌上  NO.227 )
       おみなえし うしとみつつぞ ゆきすぐる
               おとこやまにし たてりとおもへば


 
*歌意は、「 女郎花は 嫌な花だと見やりながら 通り過ぎましたよ 男山だというのに 女郎花という女が立っているのだと思いますとね 」といった、比較的分かりやすい歌といえます。 
歌中の女郎花は、遊女などの名前も掛けています。男山は、石清水八幡宮のある山で、その辺り一帯の地名です。

* 作者の布留今道(フルノイマミチ)は、平安時代初期の官人・貴族です。
生没年は共に不詳ですが、掲題の和歌の前書き(詞書)には、「僧正遍昭がもとに、奈良へまかりける時に、男山にて女郎花を見てよめる」とありますので、僧正遍昭( 816 - 890 )と、同時代の人であることが分ります。また、布留今道は、歌人としての評価は高くないと思われるのですが、古今和歌集には三首採録されているのには、僧正遍昭との交流が影響しているかも知れません。全く個人的な想像ですが。

* 布留今道の逸話のようなものは、あまり伝えられていませんが、官暦は残されています。
861 年、内蔵少属  866年、内蔵少允  877 年、内蔵大允
882 年、従五位下
885 年、造酒正
892 年、下野介
898 年、三河介
以上が伝えられている官暦のすべてです。

* 残されている官暦から推定しますと、861 年の内蔵少属は内蔵寮(クラノリョウ・中務省の一機関で、財宝の管理などを行う。)の最下位の役職で、従九位くらいです。内蔵大允で正七位下相当官です。この間、十六年を要していますが、下級官吏の昇進はこのようなものだったのかも知れません。
ただ、その五年後に、従五位下を叙爵しているのです。いわゆる貴族の仲間入りしているのです。六位の時の役職が伝えられていませんので、内蔵大允のまま昇進したのでしょうが、よほど大きな働きがあったか、支援者が登場したのではないかと推定できます。
その後、下野介、三河介と地方官を歴任していますが、「介」は次官職ですが、両国の守護である「守」も従五位で就いている人もいます。二カ国の「介」を務めながら「守」に上れなかったのにも、若干不自然な気もします。
また、861 年の就任を二十歳前後と推定しますと、誕生は 840 年前後と考えられ、没年は、六十歳前後以降と推定しました。

* 布留氏を名乗った最初の人物は、物部日向(モノノベノヒムカ)という人物です。
物部日向は、壬申の乱( 672 )において、大友皇子(天智天皇の後継者。弘文天皇。)側に属していて、大友皇子の使者として募兵に務めましたが、捕虜となり、大海人皇子(天武天皇)に仕えるようになりました。
日向は、もとは
「物部首」でしたが「物部連」となり、後に、「布留連」「布留宿禰」と変っています。「布留」を名乗り始めたのは、683 年頃のようです。

* このように、布留氏は古代豪族にまで繋がる家柄ですが、藤原氏の台頭が始まるこの頃には、布留氏も物部氏も宮廷政治の中枢からは外れていて、布留氏を名乗る公卿は久しくいなかったと思われます。
古くからの名族の子孫たちの大半は、作者のような定めに流されていたのではないでしょうか。
そうした中で、布留今道は、最下級とはいえ貴族の仲間入りを果たし、僧正遍昭という当時の一流文化人と交流するなど、むしろ、勝ち組といえるような生涯だったのではないでしょうか。

     ☆   ☆   ☆

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