雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

大谷翔平選手 残念 

2020-07-27 18:58:45 | 日々これ好日

        『 大谷翔平選手 残念 』

     米メジャーリーグ エンゼルスの大谷翔平選手
     693日ぶりに マウンドに立った
     結果は ウーム・・・ 残念
     今日は あまりにも悪過ぎた
     たまたまだったのか まだ回復途上なのか
     次の登板が 大切だ
     周りの期待が大き過ぎるのも 困ったものだが
     とはいえ 二刀流を 期待してしまう
     ガンバレ ガンバレ

                   ☆☆☆  
     

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桜の花の散るごとく

2020-07-27 08:10:23 | 麗しの枕草子物語

        麗しの枕草子物語

            桜の花の散るごとく


小一条大将殿の御邸で、上達部(カンダチメ・上流貴族)の方々が「結縁の八講」を催されるとのことでたいそうな評判でございました。
遅く行くと牛車の止める場所がないということなので、私は朝露とともに起きて参りましたが、すでに大変な混雑でした。牛車の引き棒を重ねなければならない状態で、後ろの方は講師の声がようやく聞こえる程度なのです。

六月半ば(旧暦)のことですから、とっても暑く、お庭の蓮の花だけが涼しさを伝えてくれています。
お部屋の方には、左右の大臣方を別にしますと、上達部の方々のすべてが集まっているご様子です。それぞれに涼しげなご装束をお召しになっていて、それはそれは見事な眺めでございます。
その次には、殿上人や若い公達の方々が、狩装束や直衣などをとてもおしゃれに着飾っておられ、この方々はあちらこちらと動いていらっしゃいます。
まだ幼い君なども、とても可愛らしい様子で坐っていらっしゃいます。

私たち女性は、当然牛車の中から拝聴することになります。もちろん牛は離されていますが、たくさんの牛車がぎっしりの状態です。
そのような状態の女車に対しても、講師が登場するまでの間は、美しく着飾られた貴族の方々が何かとお世話をされたりお話をされたりしておられるのです。
その中でも、ひときわすばらしい様子のお方は義懐権中納言殿(従二位権中納言。花山天皇の叔父にあたり、この時三十歳)でございました。

法華八講は朝夕二度の講座が行われますが、朝の講座の講師は清範殿でございました。
文殊菩薩の化身と噂されるだけあって、まことにすばらしいお説教でございました。ただ、まことに残念なことですが、この日は後に避けられない用事があり、朝講が終わるとともに帰らねばなりませんでした。
しかし、さて退出しようとなりますと、ぎっしりと並んでいる牛車の群ですから、それは大変なことになりました。
後方にある牛車の方は、自分が前に出られるものですから気持ちよく承知してくれるのですが、簡単に牛車を移し替えることなど出来ません。
さらに、凄まじいまでの暑さの上に、私が帰ろうとしていることを知った殿方たちが、
「朝講だけで帰るのですか」
と、責めたり冷やかしたりするのです。それも、年配の上達部の方までがですよ。

ようやく外に出られそうな所まで来ました時、かの義懐権中納言殿が声を掛けてこられたのです。
「『退散するも、また良し』、ですな」
と、お笑いになるのです。まことに、実にしゃれた言葉です。
私は、人々の声と暑さから逃げ出すことに必死で、ご返答も出来なかったものですから、外に出てから、
「こう暑くては、五千人の中にあなたもお入りになるかもしれませんよ」
と書いて、使用人をやって伝えてもらいました。

これは、釈迦が説法されていた時、「五千人の生意気な人たちが出て行こうとするのを、あえて制止せず『このような増上慢の人は退出するもまた良し』と言われた」という法華経にある説話を引用されているのです。
義懐殿は、途中で退出する私を増上慢だとからかったのですが、そこには悪意など全くなくおしゃれな会話を楽しんでおられるのです。私も、「あなたも暑さのために途中で退出して、五千人の増上慢の中に加わるのではありませんか」と実に失礼なご返事を差し上げたのですが、義懐殿であれば、ちゃんとしゃれだと受け取ってもらえると思ったからなのです。

さて、あの見事なまでの雄姿を拝見いたしましてから僅か五日ばかり後に、義懐権中納言殿が法師になられたとお聞きいたしました。
花山天皇のご退位にともなうご出家なのでしょうが、将来を嘱望されていたお方の決断は、政(マツリゴト)のもつれからとはいえ、まことにおいたわしい限りでございます。
この世の無常を、「桜の花の散るさま」とか「白露のはかなさ」などと人は例えますが、とてもとてもそれでは表しきれないほどの無常を感じる出来事でございました。


                             (第三十二段  小白河と・・、より)

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