地方自治、あるいは地方創成という言葉が聞かれるようになってから久しいですが、実態はどうなのでしょうか。
現内閣も、「地方が元気になるように」と地方の繁栄を重要政策の一つとされています。テレビ報道などでも、村おこしや町おこしなどについて、成功したとされる例が紹介されることが時々あります。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか。
三月十七日付の毎日新聞朝刊の一面トップ記事には、「無投票の首長 過半数」ということが大きく報じられていました。
その横には、「バヌアツ壊滅的 支援難航」というサイクロンによる被害報道が、状況を伝える大きな写真があるとはいえ、トップ記事より控え目に載せられていました。
トップ記事の内容は、『 民間の有識者会議「日本創成会議」が昨年推計した「消滅可能性都市」で消滅可能性が高いとされた上位100の市町村のうち、過半数の52市町村で直近の首長選が無投票になっていたことが分かった。地方の衰退が、民主主義の基本である選挙にも影響を及ぼしている。 』
というものです。重要といえば重要ですが、トップにするほどのことなのかとの違和感がありましたが、同新聞社は重要問題と認識したのでしょう。
無投票で選ばれた首長が駄目だということではないのでしょうし、この状況が地方の民主政治を脅かせていることになるのかどうかはともかく、積極的にその市町村のトップになろうという人が少ないということだけは確かなようです。
折から、ある村の村議会が解散になったということがテレビで大きく報道されています。
人口わずか六千人に満たない小さな自治体の村議会の解散が話題にされたのは、首長がセクハラ騒動の渦中の人物であり、それを追及されることから予算審議などを投げ出して議会を解散させたそうです。
セクハラ云々は訴訟になるようですから是非を問うのは避けたいと思いますが、六千人に満たない人口で自治政治を行っていくことが、果たして地方創成に役立つのかどうか疑問を感じました。消滅の可能性が高いとされた市町村が、ほんとうにそのような環境にあるのかどうか、個人的には若干の疑問を抱いておりますが、人口が確実に減っていく時代を迎えているわが国は、人口の減少に先立つ形で地方自治体の数を思い切って整理していく方針を立てることが絶対に必要なのです。
北陸新幹線開通の喜びに満ちた報道がありました。鉄道が地方に活況をもたらす大きな力になることは確かでしょうし、そうなることを切に願っています。
しかし、あらゆる小規模な市町村が頑張って、わが国の人口が一億人を切った段階でも、現在とと同じ数だけの地方自治体が残っていたとすれば、おそらく、そのことだけでも、大きな社会問題となることでしょう。
大都会に生活する人が、地方の都市や村を訪れると、ほっとするという声を聞くことがよくあります。
幾つになっても、「うさぎおいし かのやま・・」という歌を聞けば郷愁を誘われるものですし、小さな漁村の夕陽を見るために遥々と尋ねてくる旅人は後を絶たないという話も耳にします。
美しい国土、豊かな文化・伝統、それらの多くを地方の町や村が支えていることは確かでしょうが、その根本には、しっかりとした地方自治の体制が確立している必要があると思うのです。
予算を地方に回し、女性を多く登用し、農業や漁業を一人前の産業に育成していく・・・、どれもこれも大切なことなのでしょうが、地方自治を担う、しっかりとした人物を養成することも重要な要素のように痛感するのです。
( 2015.03.19 )