雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

滝は音無しの滝

2014-12-26 11:00:41 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第五十八段  滝は音無しの滝

滝は、
音無しの滝。
布留の滝は、法皇の御覧じにおはしましけむこそ、めでたけれ。
那智の滝は、「熊野にあり」ときくが、あはれなるなり。
轟の滝は、いかにかしがましく恐ろしからむ。


滝は、おとなしの滝。
ふるの滝は、法皇がご覧にお出かけになったそうですが、とてもすばらしいことです。
なちの滝は、霊場熊野にあると聞いていますが、実に心ひかれる滝です。
とどろきの滝は、どれほどうるさく轟いているのでしょうか、恐ろしいことですねぇ。



音無しの滝の所在については諸説あるようですが、単に名前を挙げているだけなので、宮中でよく知られているものだったのでしょう。そう考えれば、大原三千院の裏山にある滝を指しているものと考えられます。
布留の滝については、大和・石上神宮の裏山のものらしく、以下の説明は古歌から引用されたもののようですが、どうやら幾つかの史実が混同されているようです。

那智の滝は、当時、熊野詣でとともによく知られた存在だったようです。
轟の滝は、泊瀬観音の近くに実在しているものですが、これを取り上げた理由は、少納言さまお得意の「音無し・・・轟」を対照させた悪戯心なのでしょうね。
コメント
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