枕草子 第七十一段 ありがたきもの
ありがたきもの。
舅にほめらるる婿。
また、姑におもはるる嫁の君。
毛のよく抜くる銀の鑷子(ケヌキ)。
(以下割愛)
めったにないもの。
舅にほめられる婿。
また、姑に可愛がられる嫁君。
毛がよく抜ける銀の毛抜き。
主人の悪口を言わない従者。
ほんの少しの癖もない人。
容貌も性格もすぐれていて、長く世間付き合いをしている間に、何のぼろも出さない人。
同じ局に住んでいる女房で、お互いに敬意をはらいあって、ほんの少しの隙もないほど心を配っていると思うのですが、最後まで隙を見せないでいるのは、なかなか難しいことです。
物語や歌集などを書き写す時に、もとの本に墨をつけないことは、めったにありません。立派な綴じ本などは、ずいぶん気を遣って書くのですが、必ずといっていいくらい、汚らしくしてしまうのですよ。
男と女の仲については、いまさら言いますまい。
女同士であっても、固い約束をして親しくしている人でも、最後まで仲の良いままなのは、めったにありません。
大変分かりやすく、少納言さまも現代に生きる私たちとほとんど変わらない感覚の持ち主だということが伝わってきます。
全文を示しておりませんが、この章段などは原文そのままでも十分理解できる内容です。
ありがたきもの。
舅にほめらるる婿。
また、姑におもはるる嫁の君。
毛のよく抜くる銀の鑷子(ケヌキ)。
(以下割愛)
めったにないもの。
舅にほめられる婿。
また、姑に可愛がられる嫁君。
毛がよく抜ける銀の毛抜き。
主人の悪口を言わない従者。
ほんの少しの癖もない人。
容貌も性格もすぐれていて、長く世間付き合いをしている間に、何のぼろも出さない人。
同じ局に住んでいる女房で、お互いに敬意をはらいあって、ほんの少しの隙もないほど心を配っていると思うのですが、最後まで隙を見せないでいるのは、なかなか難しいことです。
物語や歌集などを書き写す時に、もとの本に墨をつけないことは、めったにありません。立派な綴じ本などは、ずいぶん気を遣って書くのですが、必ずといっていいくらい、汚らしくしてしまうのですよ。
男と女の仲については、いまさら言いますまい。
女同士であっても、固い約束をして親しくしている人でも、最後まで仲の良いままなのは、めったにありません。
大変分かりやすく、少納言さまも現代に生きる私たちとほとんど変わらない感覚の持ち主だということが伝わってきます。
全文を示しておりませんが、この章段などは原文そのままでも十分理解できる内容です。