緑陰茶話   - みどりさんのシニアライフ -

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掛軸、どう扱う

2021年09月22日 | 茶道
今時、床の間のある家なんて少ないかもしれません。
我が家にはあります。
60年近く前に建てた家ですので。

当時の木造一戸建てには、床の間のある和室は珍しいものではなかったのです。
我が家が珍しいのは、そういう和室が未だにリフォームもされず、そのまま残っていることです。


こうやって写真に撮って見るとかっこいいですね。
実はあちこちボロボロなんです。

掛軸は、近寄って見るとこんなの。

表千家の永田宗伴宗匠の瀧直下三千丈という文字です。
中古品をネットで買いました。(プチプラです(-_-;))

でも下に置いている置物が多すぎ。
他に置き場所がないもんですから 💦

置物はともかく、問題は掛軸です。

公民館の茶道教室で先生から軸飾りの説明を受けました。
茶の湯では掛軸が主役のお茶事があるらしくって、その時の作法を簡単に習いました。
何か由緒のある掛軸が手に入った時などに、人に見て貰う手順なんですが、掛軸をどう扱うか学んだわけです。

本格的な軸飾りは床の間に巻いた掛軸を立て掛けておいて、亭主と客のやり取りがあって、亭主が客の前で掛軸を掛けます。
でも、私がそんな機会にあずかることは、亭主の立場であれ客の立場であれ、一生ないです(断言!!)。

というわけで、茶道では軸飾りというものがあるということだけ覚えておいて、お勉強したのは掛軸のかけ方と外し方、そして掛軸の巻き方です。
一応、我が家には床の間もあることだしね。

家で練習です。
とりあえず掛けてあった完全に季節外れの瀧の掛軸を外しました。

上の写真は外した掛軸を畳の上に置いたところ。

掛軸を掛けたり外したりする棒のことを矢筈(やはず)というのですが、矢筈を持つとなぜかそのまま掛軸を外したくなります。
でも待って! そこは我慢。
矢筈は掛軸の横の床の間の壁に立てかけておくんだそうです。

矢筈は立てかけておいたまま、まず両手を使って掛けてある掛軸を下から巻いていきます。
写真くらい巻き込んだら、左手で巻いた掛軸を持ったまま、やっと矢筈を右手に取り掛軸を外し、そのまま床に掛軸を置くのです。それが上の写真の状態です。

やり方を知らない頃は掛軸を巻かないまま外し、バッサバッサと音を立てながら掛軸を床に置いてました。
そんなことをすれば掛軸が傷むの当たり前です。
必ず、ある程度巻き上げてから、外さなければならないみたい。
外して床に置いた後、最後まで掛軸を巻いていきます。

そこからも正しいやり方があるんだそうで・・。
風帯の処理です。
ところで風帯って何? ですが、上から下がっている2本のビラビラのことです。
そもそも掛軸は中国から入ってきたもので、中国では屋外に掛軸を掛けることもあり、風帯は元々は鳥除けだったそうです。
今では飾りという以外完全に意味のないものです。


まず右側の風帯を上に上げ、左側の風帯を折り込んでいきます。
心配しなくても風帯に折り型が付いているのでその通り折ります。
ただ、この時も、風帯を手で無遠慮に持ったり触ったりしてはいけない!!

風帯の先端に短い紐が少し出ているので、そこを持って扱うんだそうです。
風帯の裂地が傷まないようにする為だそうです。

風帯の裂地は、掛軸がそれなりに良い物だと掛軸の本紙の上下にある一文字と呼ばれる部分と同一の裂地を用いているそうなんです。
我が家の瀧の掛軸も同一の裂地を用いています。
それなりの物だったんでしょうか。

福田美術館に行った時、🐘の柄の織り込まれた一文字を面白いと思ってブログにもアップしたのだけれど、風帯がどうだったか注目しなかった。残念。

掛軸の扱い方に話を戻すと、それからが最難題、紐の巻き方です。

紐は3重に巻きます。1回目は真ん中、2回目は右寄り、3回目は左寄り。
後側に交差した部分が重なるように巻きます。

その後、紐の掛ける部分右側の手前から輪状にした紐を入れ(上の写真の状態)、次に左後ろ側から先の輪状の紐を入れます。

長さを揃え、出来上がりです。
このやり方だと解く時、右の紐を引くだけで綺麗にほどけ、かつ保存時に掛軸が緩むということもなく、紐の見た目も美しいのです。

本式には紐を巻く時に、傷まないように紙をはさみ、そのはさみ方も決まっています。
我が家では、そこまではやりません。
本格的なやり方を知りたい方は「軸飾り」で検索すれば動画で見ることもできます。

外した掛軸の代わりに掛けた掛軸。

伊藤若冲の竹虎図の模倣画です。
兄がどこかの美術館のショップで買ってきた掛軸です。

掛ける時も外す時同様、巻いたまま掛けます。
今までは畳の上に掛軸を広げて、バッサバッサいわせながら掛けてました。
これで私もようやく正しい掛け方を身に付けたみたいです。

茶道教室では、自分ちには床の間はむろんのこと畳の部屋さえないという人達もいました。
先生曰く、利休さんは二畳の茶室も作っている。床の間がなければ壁に直接掛ければ良い。
小さい掛軸もあるので、ちょっとした空間に掛軸を掛けて楽しむことはできる。
色々と工夫してごらん、ということでした。

和風テイストのインテリアとして、家でのお稽古の時に楽しみなさいということだと思います。
万年ビギナーの私も、家では肩肘張らず楽しめばよいと思っています。