「げっ また!?」私は思わず口にしてしまった。
「確かH先生は外出だったな。どうしよう・・・」困った。
昔私が当時日本一の営業所数を持つ自動車ディーラーのシステム部にいた頃(20年程前)、「落ちる」と言う言葉は「=システムがダウンする」という意味で大変なことだった。
新車販売のシステム開発の一員だった私は、「落ちる」という言葉にはひどく敏感だった。夜間の処理で落ちるのならまだしも、昼間のオンラインが落ちると、部内の非常事態のサイレンが鳴っているような状態になる。都内の50以上の営業所から次々と問い合わせの電話がなり続ける。一分一秒でも早く復旧しなければ・・・新米の私は何も出来ないので、ただ息を殺して様子を見守る。
月一回の部全体の朝礼では、前月の各課のシステムダウン数が報告され、今思えば課長さんは随分ストレスだったんだろうなと同情する。
あれから20年。
今の「落ちる」はちと違う。
入力練習に使っているCDがドライブの中にストンと落ちてしまうのだ。
CDをドライブにきちんとセットしないまま挿入すると、外れて中に落ちてしまう。
まったく、DELLのこのタイプはくせものだ。話によるとノート用がただ縦に付いているだけとか・・・。
というか、この製品でもCDが落ちたという生徒さんは今までに見た事がない。なのにこのクラスでは今回で3人目。どうも製品のせいじゃないような気もするが・・・。
生徒さんも落としたくて落としているわけじゃないのだから、仕方がないが・・・
「さて、どうしよう?」N先生とパソコンを前に途方にくれる。
「仕方ない、開けましょう!」私は腹をくくった。
最初の生徒が落とした時に、H先生がパソコンを開けて取り出したのを見ていたので、何となくわかる。確か思っていたよりも簡単に開いたような・・・それだけを頼りに、配線をすべて抜いて箱を開ける。見えるところにありますように・・・と願ったが見当たらない。まるで、お腹を開けてはみたけれど、手の施しようがなく閉じるしかない手術中のドクターのようだ。
「何とかならないかなぁ・・・」気休めに、パソコンを神社のおみくじのように振ってみた。
「先生見えました!」N先生が叫んだ。「赤ちゃんじゃないんだから・・・」なんて冗談を言えるわけもなく、少しだけ姿を現したCDをそ~と外へ引き出す。「やった!!」無事出産。
実はここからが一番の問題。きちんとシステムは起動するだろうか?
別に中身を壊すようにいじったわけではないが、素人に近い私にはとても不安。
案の定、ウィンドウズが立ち上がらない・・・。メッセージがでたまま動かない・・・。
仕方ないので、他の先生にSOSを求めに。
教務室に行くと何と外出しているはずのH先生がいる。(そんなら最初から呼んだのに・・・)
早速H先生を伴って実習室へ戻ると・・・「ほっといたら立ち上がりました!」なんだ時間がかかっただけなのか。
冷や汗をかいたが、なんとか復旧できて良かった。
私が担当しているのは「職業委託訓練クラス」。
いわゆる職業訓練としてパソコン操作を習得するクラスである。
CDを落としてしまったり、以前の「ゴロ寝モード」の画面など、今回の生徒さん私に職業訓練をしてくれているの?と思えるような・・・まっ何事も勉強だと思って、ありがたく経験させていただいてます。