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『万引き家族』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の14本目@伊丹)

2018年06月14日 | 映画(ま行)
『万引き家族』
監督:是枝裕和
出演:リリー・フランキー,安藤サクラ,松岡茉優,池松壮亮,
   城桧吏,柄本明,高良健吾,池脇千鶴,樹木希林他

第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したために、
6月8日だったはずの公開日が繰り上がり、前週の土日のみ先行上映。
フリーパスにその制約はなかったので、先行上映中に鑑賞。

「衝撃と感動の社会派ドラマ」との触れ込みですが、カンヌのパルムドールだぞ。
同じくパルムドール受賞作の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)を
感動作を期待して観に行ってどんよりした気持ちで帰ってきた人、
あんなにはどんよりしないと思いますが、お気をつけあそばせ。
ラストにみんな幸せになりそうな予感なんてものはないですからね。
個人的には、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はあれが最良のラストだと思ったけれど、
本作のほうがやるせない気持ちが強い。

高層マンションが建ち並ぶ町の隙間に残る平屋の一軒家。
家の持ち主である初枝(樹木希林)の年金をあてに暮らす5人家族。
大黒柱のはずの治(リリー・フランキー)の稼ぎは日雇いでわずか。
信代(安藤サクラ)はクリーニング店のパートを切られそう。
亜紀(松岡茉優)は女子高生に扮してミラー越しに客と会話する風俗で働き、
祥太(城桧吏)は治から教え込まれた盗みで日用品や食糧を入手。

いつもの万引き帰り、治と祥太は通りかかった団地の廊下で、
暗闇のなか、ひとり寂しげにたたずむ女の子と目が合う。
お腹も空かせている彼女に「コロッケ、食べる?」と声をかけると、
驚くべきことにうなずき、ついてくる。

彼女は5歳、名前はゆり。翌日になっても帰りたいと言わない。
両親を恋しがる様子は皆無で、むしろこの状況のなかに居たがっている。
彼女の腕にやけどの跡を見つけた治たちは、両親からの虐待を疑い、
ゆりをこのまま住まわせることにするのだが……。

ご覧になる方は想定済みでしょうから、
ネタバレにはならないと思いますが、5人はもともと擬似家族です。
『at Home アットホーム』(2014)と同じ設定で、あちらは本多孝好原作の映画化。
こちらは是枝裕和監督のオリジナル脚本の模様。
状況設定が同じ程度では盗作なんてことにはならないのでしょうし、
また、鑑賞後の印象もまったく異なるものですが、ちょっとデジャヴ。

血の繋がりってなんなのか。
親は子を想うもの。だけど、そういうものだと思いたいだけなのか。
子どもを産めば誰でも母親になるか、そうじゃない。
実際、産まれた子どもの育児を放棄する母親がいる。
血の濃さだけで誰といることが幸せなのか決めつけていいのか。
いろんなことを考えさせられます。

成長するにつれ、善悪について悩む祥太。彼の苦渋の決断がつらい。
何もかもお見通しで、ひとこと声をかけただけの「やまとや」のおじさん。
柄本明演じる彼の表情が私の心に残りました。
彼の姿がウィレム・デフォーとかぶり、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』と併せて観たい作品です。

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