夜な夜なシネマ

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暗いようで暗くない。

2003年05月26日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
映画を「明るい」「暗い」で括るわけにはいかないけど、
ものすごく大ざっぱにいくとそんな分け方になるでしょうか。
「明るい」「暗い」の観点も、人によってまったく異なるのがおもしろいです。

前述の『サンタ・サングレ 聖なる血』は、
私は暗い映画だとは思いません。
もう1本、私が断じて「暗い映画」だと思えないのが
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)です。

ビョーク演じる町工場で働く女性は、
先天的な病気で次第に視力を失いつつあります。
自分の血を引く幼い息子もいずれは視力を失うはず。
息子が手術を受けられるように、女性は賢明にお金を貯めます。

この映画はカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞して、
日本でもロングランになりました。
あらすじだけ書くと感動のドラマだし、
アイスランドの歌姫ビョーク主演の異色のミュージカルということもあり、
映画館に足を運ばれた方も多いのでは。

公開当時、私は観にいきませんでした。
監督がラース・フォン・トリアーという人で、
この人の映画は、観るのにかなり忍耐力を要するからです。(^^;
マスコミなどでは感動モノとして取りあげていたけれど、
この監督が一筋縄ではいくものか!と思っていました。
案の定、感動モノと思って観にいった知人からは、
「めっちゃ暗くて残酷」「観にいかなければよかった」などの感想。
私が観たのはビデオ化されて数か月も経ったころ。
「今日はがんばって観てみよう」と万全の態勢で臨みました。

で、私の感想は「この映画は暗くない」。
主人公はせっせと貯めたお金を隣人に盗まれ、
半狂乱になって隣人を殺してしまいます。
結果、絞首刑になるのです。
拘留中、工場の友人が息子の手術の段取りを進めてくれるのですが、
自分の刑のことよりも、息子のことが心配でならない主人公。

刑が執行される日、絞首台を前に震える主人公のもとへ、何かが届けられます。
視力を失っているために、手でそれが何かを確かめる主人公。
それは息子の眼鏡でした。
息子にもう眼鏡が必要ないことを知ったときの、主人公の満ち足りた表情。

刑が執行されるシーンの生なましさよりも、あの満ち足りた表情。
幸せいっぱいの映画だと言うと「どこがや~!」と言われそうですが、
私にとっては「全然暗くない」。
見よ、あの表情を!と思った映画でした。

ちょうど今日、今年のカンヌ受賞作品が発表されたようです。

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