夜な夜なシネマ

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『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』

2019年07月29日 | 映画(さ行)
『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』(原題:Le Grand Bain)
監督:ジル・ルルーシュ
出演:マチュー・アマルリック,ギヨーム・カネ,ブノワ・ポールヴールド,ジャン=ユーグ・アングラード,
   ヴィルジニー・エフィラ,レイラ・ベクティ,マリナ・フォイス,フィリップ・カトリーヌ他
 
フリーパスを使うラストチャンスの日だったというのに、
前述の『ハッピー・デス・デイ 2U』は席数上限にひっかかって自腹で観ることになり、
ほかの選択肢だった作品も、席数上限にひっかかる前に普通に満席に。
今回のフリーパスは27本、前日に観た『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』で打ち止め。
気になっていた本作を大阪ステーションシティシネマへ観に行きました。
 
モデルになっているのはスウェーデンに実在する男子シンクロナイズドスイミングチームだそうで、
それをちゃっかりフランスでいただいちゃいました、てな作品。
 
監督は名役者でもあるジル・ルルーシュ。今回は監督に徹す。
フランス版『ウォーターボーイズ』(2001)と言えますが、
このチームのメンバーはくたびれたオッサンばかり。
腹もでっぷりと出て、見ていて嬉しくなるハダカは無し(笑)。
でもものすごく応援したくなる。
 
鬱病と診断されて2年経つベルトラン。
会社を退職して引きこもり、ようやく就職活動を始めたものの、簡単には決まらず。
妻は責めたりしないが、子どもたちは辛辣。
今日の予定をベルトランに問う妻に、「パパは毎日ゲーム」と子どもたち。
 
ある日、地元の公営プールに足を運んだ彼は、
男子シンクロナイズドスイミングのメンバー募集のチラシを目にする。
迷った末、思いきって参加。
 
ほかのメンバーに会ってみれば、揃いもそろって負け犬臭がプンプン。
吃音症の息子と精神状態の安定しない実母に苛立つロラン、
ロックミュージシャンになる夢をいまだ捨てきれないシモン、
会社は倒産寸前なのにその事実から目を背けているマルキュスなどなど。
 
また、チームを指導する女性コーチ、デルフィーヌは、
かつては国際大会に出場するシンクロ選手だったが、
コンビを組んでいた親友が怪我をして引退を余儀なくされ、
自らもシンクロを辞めてアルコール依存症に。
 
チームがプールで練習できる時間は、
女子シンクロや水球等ほかの競技チームが使用しない時間帯に限られている。
なのにデルフィーヌはプールサイドで本を朗読するだけ、
オッサンたちも楽しそうではあるが決して上達はしていない。
その状況にロランが爆発したところで、事態は変わらない。
 
それでもシンクロに楽しさを見いだし、練習に励むベルトランだったが……。
 
めっちゃ楽しかった。何がいいって、まず選曲が嬉しい。
オープニングはティアーズ・フォー・フィアーズの“Rule The World”。
途中テンションを上げてくれるのは、オリビア・ニュートン=ジョンの“Physical”。
フィリップ・ベイリー&フィル・コリンズの“Easy Lover”で泣きました。
ま、泣いていたのは私ぐらいか(笑)。
 
どうでもいいことですが、マチュー・アマルリックを見ると、
私は三上博史を思い出す。似てませんかね?
それとシモン役は『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』(1986)のジャン=ユーグ・アングラード。
すげぇオッサンになってる。確かに「昔はモテただろう」感はあるけれど。
ロラン役のギヨーム・カネぐらいです、まだ若々しいのは。
 
序盤もじゅうぶんに面白いのですが、俄然面白くなるのは、
デルフィーヌの元相棒で車椅子に乗るアマンダが登場してから。
 
怪我をしてシンクロができなくなり、落ち込んでいるのはアマンダのはず。
しかしデルフィーヌはそんなアマンダを思いやることもなく逆に責めた挙句、酒に走る。
おかげでアマンダとはすっかり疎遠になっていました。
そんなデルフィーヌが恋愛でも失敗してプールに来なくなり、
見かねたアマンダが代わってオッサンどものコーチを始めるわけですが、
そりゃもう強烈、抱腹絶倒。
オッサンたちが「あの女、殺したい」と言うほど(笑)。
 
女々しいという言葉は今の時代はあまり使ってはいけないのかもしれません。
でもここに出てくるオッサンたちは女々しい。
彼らを叱咤する上記のアマンダも格好よいし、
引けを取らない格好よさだったのはベルトランの妻クレール。
夫の鬱病に関して理解のない姉夫婦に彼女がズバッと言うところは胸のすく思い。
 
冴えないオッサンたちの問題を映しながら、
家族たちとの絆や再生も感じられて、しみじみ良かったなぁ。
 
元気のない人、観てみて!

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