夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『真夜中のゆりかご』

2015年05月22日 | 映画(ま行)
『真夜中のゆりかご』(原題:En Chance Til)
監督:スサンネ・ビア
出演:ニコライ・コスター=ワルドー,ウルリク・トムセン,マリア・ボネヴィー,
   ニコライ・リー・コス,リッケ・マイ・アナスン,トマス・ボー・ラーセン他

前述の『駆込み女と駆出し男』とハシゴ、同じくTOHOシネマズ西宮にて。

強く心に残った『未来を生きる君たちへ』(2010)のスサンネ・ビア監督。
デンマーク出身の女性監督で、本作もやっぱり心にグサッと突き刺さる凄い作品。

多分にネタバレが入っています。ご覧になる予定の方はご注意ください。

刑事のアンドレアスは、美しい妻アナとまだ乳児の息子アレキサンダーとともに幸せな毎日を送っている。
アレキサンダーの夜泣きが激しくて、睡眠がじゅうぶんにとれないものの、
アンドレアスとアナが交代で散歩に連れ出したりして、大変な子育てにふたりで奮闘中。

ある日、アパートの一室が騒がしいとの通報を受け、
アンドレアスは長年の相棒シモンと一緒に駆けつける。
部屋の中からは男女が激しく言い争う声。
ドアを開けると、そこには過去にアンドレアスが取っ捕まえたヤク中の暴力男トリスタンが。
同居の女性サネがクローゼットの前に立ちはだかり、何かを必死で隠そうとしている。
サネを押しのけて中を見れば、糞尿にまみれて泣きじゃくる乳児ソートスの姿。
衝撃を受けるアンドレアスだったが、法の壁に阻まれて、乳児を保護することができない。

数日後、その日は珍しく夜泣きしない息子の様子を見に行ったアナが絶叫。
アレキサンダーがまったく息をしていないのだ。
アンドレアスが人工呼吸をほどこすも手遅れで、すでに死亡していた。
通報しようとするアンドレアスをアナが止める。
アレキサンダーと離れたくない。もしも通報するなら私は自殺すると。

とりあえずアナを落ち着かせ、眠らせると、
アンドレアスはアレキサンダーの亡骸を抱えて車を走らせる。
そしてふと考える。あのろくでなし夫婦の息子はどうしているだろう。

トリスタンとサネの部屋を訪れると、ふたりはヤクを打って熟睡中。
トイレの床にまたしても糞尿まみれで放置されて泣くソートスを見たアンドレアスは、
とっさに息子たちの服を取り替える。
そのままアレキサンダーの遺体をそこに置き、ソートスを連れて帰るのだが……。

他人の子を連れ帰った夫を狂っていると揶揄するも、
次第にこのままでなんとかなると思いはじめたように見えた妻。
しかし、しばらく経った日に、妻は身投げ。
ろくでなし夫婦の夫のほうは、息子が死んでいると通報すればまたムショ送りになると思い、
これを誘拐の末の殺人事件に仕立て上げようと画策。
すべてが悪いほうへ悪いほうへと流れてゆきます。
終盤にはさらに絶望的な展開が待っていて、救いようなく愕然。

そんな中、誰も信じてくれなくても、これは自分の息子ではないと言い張るサネ。
育児放棄のどうしようもない母親かと思いきや、
物語が進むにつれて決してそうではなかったことがわかります。

物事を正し、気持ちの整理をつけて、いっぱい傷を負いながら生きてゆく主人公。
つらいつらい話だけれど、ラストシーンに見える光。秀逸。
悲しくて切なくて、でも決して不幸ばかりじゃないと思えて、涙がこぼれました。

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