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『母性』

2022年11月28日 | 映画(は行)
『母性』
監督:廣木隆一
出演:戸田恵梨香,永野芽郁,三浦誠己,中村ゆり,山下リオ,
   吹越満,高橋侃,落井実結子,高畑淳子,大地真央他
 
109シネマズ箕面にて。
 
好きな作家というわけではないのに読んでしまう湊かなえ
原作はずいぶん前に読んでいます。そのときの感想はこちら
5年半前に読んだ本の内容をつぶさに覚えているわけもなく、
ただ、とても不愉快な思いをした記憶はあります。
 
そんな不愉快な本だったうえに、監督は廣木隆一
1年に何本も撮る売れっ子監督ではあるけれど、私はあんまり得意じゃない。
それでも観に行くのは、観なきゃ文句も言えないし、
仕事帰りに寄れる劇場で観られるものがほかにないからです。
 
ところで、そう、この日この回の客は私ひとりでした。
なんと今年10回目の“おひとりさま”。なんか悲しいなぁ。
 
女子高生が自宅の庭で首吊り自殺をしたという記事で始まります。
ある学校の職員室でそれが話題になっている。
教師のうちのひとりが永野芽郁演じる清佳という女性。
 
確か、原作では誰が語り手なのかですでに騙されていたと思うのですが、
映画版では冒頭の女子高生が清佳というわけではなく
(だって清佳は現に生きているのだから、記事の女子であるはずがない)、
死んだ女子高生の境遇に思いを至らせて清佳の少女時代が語られるふう。
 
清佳の母・ルミ子(戸田恵梨香)はそのまた母(大地真央)のことが大好き。
ルミ子は常に母の望むように振る舞い、夫(三浦誠己)は母が気に入った相手。
生まれてきた清佳には、母が喜ぶようなことばかりさせる。
 
清佳は幼少の頃から祖母の無償の愛を感じていたが、
ルミ子からは愛されているように思えず、とにかく愛されたいと願う。
 
しかしある嵐の夜、倒れた大木がルミ子の家を直撃。
ルミ子の母は清佳をかばって亡くなってしまう。
 
家を失ったルミ子と夫、清佳は、夫の実家に身を寄せるのだが……。
 
原作ほどではありませんが、とにかく不穏な空気がつきまとう。
そもそもこんな感覚がおかしいお嬢様とその母親、今時どこにいるんだと思う。
加えて、異常な夫の母。高畑淳子演じる姑の恐ろしいこと。
こんないびり方は見たくない。
 
登場人物すべてがどこかずれていて、誰にも共感できません。
ただ、ルミ子がこれだけいびられながらも姑に敬意を払いつづけ、
誠心誠意尽くせばいつか気持ちが通じると思っている姿は凄い。
これはこれで幸せなことなのかなという気すらしてきます。
 
歪んだ幼少時代を送ってそのまま大人になった清佳が教師とは、
大丈夫なんだろうかと思ったりも。
居酒屋でやかましくしているわけでもない隣のテーブルの客に
串を捨てるマナーについて説教する女、ありですか。怖いです。
 
ここに出てくる人、誰の人生も送りたくない。
だけど幸せと感じるところは人それぞれなのかなって。
 
記事になった女子高生が自殺したのはなぜなのでしょうね。
学校でいじめを受けて自殺した子どもや会社で上司のパワハラを受けて自殺した人の記事はよく目にするけれど、
親から愛されなくて自殺した子どもの話は見たことがない。
それは「事件」ではないからなのでしょうか。

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