夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ウインド・リバー』

2018年08月05日 | 映画(あ行)
『ウインド・リバー』(原題:Wind River)
監督:テイラー・シェリダン
出演:ジェレミー・レナー,エリザベス・オルセン,ジョン・バーンサル,
   グレアム・グリーン,ケルシー・アスビル,ギル・バーミンガム他

たいして長期間ではないけれど、ダンナがまた海外出張中。
父が白内障の手術をするというので病院まで送迎したり、
ダンナ実家へいつものように食パンを配達したりと、
ひとりで羽伸ばし放題というわけにもいかないのですが、見つけた時間は大事に。
最近はそうして時間を見つけてもついついまっすぐ帰りたくなってしまうから、
出勤直後に「今日は映画を観に行くから、千里中央まで送る」と同僚に宣言。
こうして宣言しておけば、梅田に向かって車を走らせる気持ちを維持できる。

シネ・リーブル梅田にて。

主演のふたりはいずれも“アベンジャーズ”のメンバーで、
ジェレミー・レナーホークアイエリザベス・オルセンスカーレット・ウィッチ
そんなふたりをこんなミニシアター系サスペンスの秀作で見られるのは嬉しい。

監督は『ボーダーライン』(2015)の脚本家テイラー・シェリダン。
もとはテレビドラマに多く出演している俳優だそうで、
初めてメガホンを取った『バウンド9』(2011)は日本では未公開だったから、
映画監督としての日本デビューは本作と言ってよいのでしょう。
月が替わってしまいましたが、先月の私のNo.1です。

米国中西部ワイオミング州にある、ネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバー。
コリー(ジェイミー・レナー)は、野生生物局の職員として活動する優秀なハンター。

ある日、保留地内で飼育されていた牛がピューマに襲われたため、コリーが始末に出向く。
ピューマを追ううちに見つけたのは、雪の上で凍りついている少女の死体。
彼女はネイティブアメリカンの娘ナタリーで、コリーの娘エミリーの親友だった。

コリーは直ちに地元の警察署長ベンに通報、ベンからFBIへ。
FBIが寄越したのは新米の女性捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)、ただひとり。
保留地での事件の重要性なんて、世間にとっては常にこんなもの。
コリーとベンのあきらめ顔に反して、ジェーンは意外と熱い。

検死の結果、ナタリーは生前にレイプされていることが判明。
犯人から逃げようと極寒の中を懸命に走りつづけ、
マイナス30℃の冷気を吸い込んで肺出血を起こし、死に至ったらしい。
死因がそれだと殺人事件にはならないせいで、FBIの増援は受けられない。
ひとりで捜査することを余儀なくされたジェーンは、
この土地に詳しいコリーに協力を求めるのだが……。

事件自体は悲惨だけれどもシンプル。
若い女性が強姦殺人に遭い、FBIと地元の住人が犯人を捜す。それだけです。

しかし、それが起きた土地にまつわる話がつらすぎる。
何も悪いことなんかしていないのに、何もかもを取り上げられ、
一方的にひとところに追いやられたネイティブアメリカンたち。
そこで何が起きようとも、真剣に捜査された試しなどない。

コリー自身は白人ですが、妻はネイティブアメリカン。
義父や地元の人びとと心を通わせているものの、
彼にも何やら悲しい過去がある様子で、それが少しずつ明らかにされます。

生き残るためにはあきらめなければならなかった人たち。
どうか、こうして暮らしてきた人たちがいることを忘れないで。

心まで凍てつくような物語。

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