夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『剣の舞 我が心の旋律』

2020年09月05日 | 映画(た行)
『剣の舞 我が心の旋律』(英題:Sabre Dance)
監督:ユスプ・ラジコフ
出演:アンバルツム・カバニャン,アレクサンドル・クズネツォフ,アレクサンドル・イリン,
   イヴァン・リジコフ,ヴェロニカ・クズネツォーヴァ,インナ・ステパーノヴァ他
       
世間のお盆最終日だった日曜日、がら空きの新御(しんみ)を走って梅田へ。
テアトル梅田にて、ロシア/アルメニア作品を鑑賞。
 
『剣の舞』を知らない人はいないですよね、きっと。
もしそのタイトルを知らない人がいたとしても、曲を聴けば知っているはず。
小学生の頃、運動会でかかっていたような気がします。
 
その『剣の舞』を作曲したのはアルメニア人のアラム・ハチャトゥリアン。
旧ソ連、ロシア帝国の支配下にあったグルジア(現ジョージア)
1903年、アルメニア人家庭に生まれました。
本作は『剣の舞』が誕生するに至った秘話を描いています。
 
キーロフ記念レニングラード国立オペラバレエ劇場は戦禍を逃れて地方に疎開中。
団員たちはバレエ『ガイーヌ』の初演を控えて猛稽古中だが、
公演まであと2週間しかないというのに、振付家アニシモワが何度も振付を変更。
それに合わせて曲も変更を求められ、作曲家ハチャトゥリアンはイライラ。
さらにはそこへ文化省の役人プシュコフがやってきて、好き勝手言い始め……。
 
このプシュコフがもの凄く嫌な奴なんです。
地獄へ堕ちろ〜と念じたくなるぐらい(笑)。
どうやらかつてはハチャトゥリアンと同じく作曲家を目指していて、自分はその夢叶わず、
ハチャトゥリアンだけが成功を収めたことが悔しいらしい。ちっせぇ男です。
 
ただただ良い音楽を作りたくて作曲に没頭しているハチャトゥリアンのことを
音楽には政治的意味が込められるものだと言って貶めようとしたり。
しかしナチスドイツが兵士にワーグナーをよく聴かせていたとは知りませんでした。
作曲家が意図してもいないのに政治的意味を持たされてしまうことは
往々にしてあるのでしょう。逆に実は意図しているということもあるのでしょうけれど。
 
アルメニアに特別な想いを抱くハチャトゥリアンはこう言ったそうです。
アルメニア人虐殺をもしも世界が傍観せずにいたら、ユダヤ人虐殺は起こらなかったかもしれない」。
 
戦地で負傷して帰国し、退院したらまたすぐ出征する兵士たち。
出征前夜にせめてバレエが観たくて劇場に向かい、何も観られないと知って憤る。
そんなとき、ハチャトゥリアンの独断で兵士らは招き入れられ、
目を輝かせてリハーサルに見入る。とてもいいシーンでした。
 
「運動会の曲」にこんな誕生秘話があったことが知れてよかった。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ぶあいそうな手紙』 | トップ | 『ファヒム パリが見た奇跡』 »

映画(た行)」カテゴリの最新記事