夜な夜なシネマ

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『消えた声が、その名を呼ぶ』

2016年01月25日 | 映画(か行)
『消えた声が、その名を呼ぶ』(原題:The Cut)
監督:ファティ・アキン
出演:タハール・ラヒム,シモン・アブカリアン,マクラム・J・フーリ,
   トリーヌ・ディルホム,アルシネ・カンジアン他

ドキュメンタリー2本を観たあと、やはりシネ・リーブル梅田で本作を。

『そして、私たちは愛に帰る』(2008)、『ソウル・キッチン』(2009)、
『トラブゾン狂騒曲 小さな村の大きなゴミ騒動』(2012)のファティ・アキン監督の作品。
19世紀末から20世紀初頭のアルメニア人大虐殺をモチーフとし、
監督が共同執筆でオリジナルの脚本を書き上げています。

1915年、オスマン・トルコの街マルディン。
ここにおいては少数派であるアルメニア人に生まれついたナザレットだが、
妻と双子の娘とともに、鍛冶職人として幸せに暮らしていた。

しかし、第一次世界大戦の影響が街にも現れるようになる。
突然やってきた憲兵が、15歳以上の男性は全員ただちに兵士、
オスマン・トルコのために戦えと言う。
妻子と引き離され、強制連行されるナザレットらアルメニア人たち。

彼らを待っていたのは灼熱の砂漠での重労働。
過酷な日が続いていたある日、解放してやってもよいとのお達しが。
喜んだのも束の間、自由になりたければキリスト教からイスラム教に改宗せよと言われる。
家族のもとへ帰りたいと改宗を誓った者は労働から解放されるが、
ナザレットをはじめ、大半の者は十字架を捨てることなどできない。

しばらく経った日、アルメニア人は一斉に処刑を宣告される。
次々とナイフで首を掻き切られて絶命、ナザレットもその場に倒れ伏す。
ところが数時間後、ナザレットは目を覚ます。
彼の処刑を担当した男が殺人に恐れおののいて首を浅く切ったためだ。
死せずとも声を失ったナザレットは、家族の消息を追いはじめるのだが……。

壮大な旅路の物語です。

妻は早々と死んでしまったことがわかりますが、
双子の娘ルシネとアルシネは生きているかもしれない。
神のことなどもう信じられなくなったナザレットに、
まさに神か仏かと思うような救いの手を差し伸べる人も。
凄絶な旅路ではありますが、絶望ばかりではなく、
人って捨てたもんじゃないと思わせてくれるのがこの監督。

モーリッツ・ブライブトロイがちょこっと出演。
『ソウル・キッチン』のご縁でしょうね。

ちょうど職場にアルメニア人の外来研究員が来られていて、
十字架にまつわる展示をしたいと聞いたばかり。タイムリーでした。

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