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『ふたりのマエストロ』

2023年08月22日 | 映画(は行)
『ふたりのマエストロ』(原題:Maestro(s))
監督:ブリュノ・シッシュ
出演:イヴァン・アタル,ピエール・アルディティ,ミュウ=ミュウ,キャロリーヌ・アングラーデ,
   パスカル・アルビロ,ニルス・オトナン=ジラール,アンドレ・マルコン他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴの2本目。
 
第64回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したイスラエル作品『フットノート』(2011)のリメイク。
『コーダ あいのうた』(2021)の製作陣が手がけたフランス/ベルギー作品です。
 
フランソワ・デュマールとドニ・デュマールは、共に著名な指揮者
父親のフランソワは40年以上のキャリアを誇るベテランだが、ここ最近はくすぶり気味。
それに対して息子のドニはヴィクトワール賞を受賞するなど、勢いに乗っている。
フランソワはドニの活躍を素直に喜べないばかりか、それを態度に露骨に出すものだから、
父子は顔を合わせれば喧嘩ばかり。
 
そんなある日、フランソワのもとへ1本の電話が入る。
それはミラノのスカラ座からで、音楽監督に就任してほしいという依頼。
夢にまで見た世界最高峰からの依頼に有頂天になるフランソワ。
自然とドニへの態度も和らぎ、ホッとする家族たち。
 
ところが翌朝、今度はドニにスカラ座の総裁マイヤーから電話があり、呼び出される。
聞けば、マイヤーの秘書カルラが父子を間違って電話してしまったらしい。
フランソワから何度も留守電が入っていたせいでそのことに気づいたと。
 
マイヤーはドニからフランソワに話をするように言うが、
あんなにも喜んでいるフランソワにどのように伝えればいいのか。
苦渋のまま時間が経ち、焦るドニだったが……。
 
予告編を観てとても良さそうだと思いました。
『テノール! 人生はハーモニー』並みの出来を期待して観に行ったのですが、うーん、だいぶ残念。
 
ピエール・アルディティ演じるフランソワにまったく魅力なし。
息子のほうが人気者でスネる爺ちゃんといえば可愛いかもしれないけれど、大物指揮者ですよ。
こんな器のちっちぇえところを見せられてもねぇ。
団員に八つ当たりして、自分の携帯が鳴っているのにも気づかず怒る。
このシーンって、本国ではウケるところなのですか。まったく笑えない。
 
だいたい、スカラ座が間違って電話したくせに、それを息子から父親に伝えろと言うのはいかがなものか。
「ウチの美人秘書が阿呆で間違っちゃったんだ。申し訳ないけど頼むよ」とでも言うならまだしも、
「おまえから父親に言え。時間はない。スカラ座だぞ。就任したい奴はほかにいくらでもいる」って、超高圧的。
 
自分の勘違いだと知った後にフランソワの取る行動も腑に落ちません。
ドニの家に押しかけ、陰で笑い者にしたんだろと悪態をつく。
どうやら帰り際にドニに言い渡したことは息子を羽ばたかせるための言葉だったようだけど、
私にはただ嫌味を言って帰ったようにしか思えません。
善人面、被害者面をしていて、顔を見ているだけで嫌になった(笑)。
 
一方、ドニ役のイヴァン・アタルはアラン・リックマンを彷彿とさせ、悪くありません。
別れた妻は変わらずドニのエージェントを務め、恋人は美人ヴァイオリニスト
彼女が難聴という設定は別に要らないんじゃないかと思いましたが、
その彼女から「クソじじぃ」呼ばわりされるところなんかは気の毒すぎてちょっと笑いました。
 
ニルス・オトナン=ジラール演じる一人息子マチューも良い。
両親が別れてもこんなに面白い子に育つ。ピアノに料理に、彼はいつでも楽しげ。
 
オチもあまりに唐突です。
万事オッケーということで後味は悪くないけど、丸くおさめすぎだってば。

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