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『アウシュヴィッツの生還者』

2023年08月21日 | 映画(あ行)
『アウシュヴィッツの生還者』(原題:The Survivor)
監督:バリー・レヴィンソン
出演:ベン・フォスター,ヴィッキー・クリープス,ビリー・マグヌッセン, ピーター・サースガード,
   ダル・ズーゾフスキー,ジョン・レグイザモ,ダニー・デヴィート,ミヒャエル・エップ他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴ。
 
4本もハシゴするつもりはなかったのです。
目覚ましかけずに適当に起きて、昼ぐらいに家を出るつもりでいましたが、
そんなに長いこと寝ていられないんですよね。目が覚める(笑)。
 
昼から3本はあらかじめ予定を立てていたけれど、午前中にあと1本観るとすれば何にしよう。
本当は避けるつもりでいた作品。アウシュヴィッツと聞いただけでめげるから。
でも、だからこそ劇場で観ておかないと、DVDや配信では逃げてしまってきっと観ない。
気乗りせずに選んだ作品ではありますが、結論としては観てよかった。とても。
 
アウシュヴィッツを生き延び、ボクサーとして活躍したユダヤ人
ハリー・ハフトことヘルツコ・ハフトの人生を映画化したもの。
実話に基づくハンガリー/アメリカ作品。
 
1949年、ナチスドイツ強制収容所アウシュヴィッツから生還したヘルツコ・ハフトは、
アメリカで付けられたハリー・ハフトという名前でボクサーとして活躍していた。
しかし試合中に当時のフラッシュバックに悩まされることも多く、このところ敗戦続き。
 
ハリーは戦時中に生き別れた恋人レアのことを今も忘れられずにいる。
彼女は別の強制収容所へ送られたはずだが、無事なのか。手を尽くして探しても手がかりなし。
だが、自分がボクサーとして名を揚げれば、彼女のほうが知り得るかもしれない。
その一念でボクサーを続けているが、よほど強い相手と試合を組まないかぎり、
ハリーのことが全国紙で取り扱われる可能性はない。
 
悶々とする彼のもとに取材を申し込みに来た記者エモリー・アンダーソンは、
アウシュヴィッツでどのように生き延びたのかを聴きたいと言う。
もしハリーのことが話題に上れば、次期チャンピオンと言われるロッキー・マルシアノと戦えるのではと言われ……。
 
どうやって生き延びたか。凄絶です。
 
ハリーは収容所で殺されそうになっていた親友をかばって暴れました。
その場面に出くわした親衛隊員がハリーを拾う。
親衛隊員たちは、腕に覚えのあるユダヤ人を見つけると自分のペットとして飼い、
余興としてリングに上げて戦わせていました。
どちらか片方が倒れるまで戦わせ、負けたほうはその場で射殺されます。
賭け事として楽しんでいますから、勝ち続けるハリーは貴重な稼ぎ手。
儲けさせてくれるハリーにタバコを与え、風呂にも入らせて可愛がる。
 
そんなふうに生き延びたハリーですが、それが新聞記事になった途端、
裏切り者と言われて唾を吐きかけられる。
戦争が終わったときに恥ずかしくないように。それは確かにそうだけど、それも生きてこそ。
誰かを密告したり、陰でこそこそ振る舞っていたりしたわけではないのに、
リングで同胞相手に戦って生き延びた彼を誰が責められましょうか。
 
次期チャンピオンと戦ったおかげで昔の恋人と再会できてめでたしめでたし、
というようなヤワな話ではありません。
 
主演のベン・フォスター、役者魂は認めますが、そこまで体重を増減させて大丈夫ですか。
『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)のときのマシュー・マコノヒーが思い出されて、ちょっと心配です。
ハリーが所属するジムのトレーナー役のジョン・レグイザモ、やっぱり大好き。
マルシアノのトレーナーを演じるダニー・デヴィートもさすがです。最高。
 
戦争が人々の心に残した傷は、戦争が終わった後に出会った人たちの絆にも影響を及ぼす。
どちらかと言えば最近はエンタメのほうに振れていたバリー・レヴィンソン監督。
久々に見応えのある作品でした。

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