夜な夜なシネマ

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ふたつの『クロッシング』(ハリウッドと北朝鮮)

2011年04月15日 | 映画(か行)
邦題を同じくする2本の作品を観ました。
アメリカ作品の『クロッシング』(2009)と韓国作品の『クロッシング』(2008)。
どちらも日本では昨年公開され、ごく最近DVD化されています。

前者はニューヨーク、ブルックリンが舞台。
低所得者層が暮らす犯罪多発地区を管轄するニューヨーク市警の警察官3人が主役です。

定年退職を1週間後に控え、つつがなく過ごしたいベテラン警官エディ。
子沢山で、愛する家族のために広い新居を購入したい麻薬捜査官サル。
ギャングの中での生活に疲労困憊し、いいかげん抜けたい潜入捜査官タンゴ。

3人とも、正義感あふれる警官というわけではありません。
面倒なことは見て見ぬふりをしたり、犯罪組織の金を横領したり、
出世をちらつかされて迷ったり。
「人生は、より“善”か、より“悪”かなだけ」という台詞があるのですが、
3人のそれぞれの人生を追って行くと、
物事の両側から見ないと善悪はわからないものだとしみじみ。

原題は“Brooklyn's Finest”。
3人の人生が交差すると言えなくもないですが、ちょっとこの邦題は無理やり。

余談ですが、リチャード・ギアの絡みのシーンを見ていると、
やっぱりクリント・イーストウッドよりはまだかなり若いなぁとホッ。

後者は北朝鮮が舞台。
韓国人の監督が脱北者への入念な取材をおこなって撮り上げています。

北朝鮮の田舎の村に暮らすヨンスは、妻と息子の3人家族。
妻が結核に罹りますが、北朝鮮では薬が手に入りません。
河を渡って中国へ行けば薬があることはわかっていますが、
見つかれば強制送還のうえ処刑は確実。
それでもヨンスは中国へ密入国する決意をします。

薬を得たらすぐに帰るつもりだったのが、
メディアに脱北者のひとりとして大々的に報道され、
帰国できなくなってしまったヨンス。
その間に妻は亡くなり、11歳の息子は過酷な運命を背負うことに。
息子を呼び寄せるため、ヨンスはあらゆる手を尽くすのですが……。

これは凄い作品です。
どうか生きて。そう願わずにはいられませんが、叶いません。
深い哀しみが、あとからあとから募ってきます。
前者の感想と矛盾しますが、彼らには“善”しかないのに。
そう思ってしまいました。

どちらも見応えがありますが、
前者はどちらかと言えば、豪華キャストの陰ある役柄に魅せられた感じ。
後者は俳優が著名かどうかなんてどうでも良し。
子役も含めて圧巻の演技でした。観るべき作品。

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