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『プライベート・ウォー』

2019年09月23日 | 映画(は行)
『プライベート・ウォー』(原題:A Private War)
監督:マシュー・ハイネマン
出演:ロザムンド・パイク,ジェイミー・ドーナン,トム・ホランダー,スタンリー・トゥッチ他
 
TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの3本目。
この日の本命は本作でした。
 
イギリス/アメリカ作品。
監督は数々のドキュメンタリー映画で高い評価を受けてきたマシュー・ハイネマン。
ドキュメンタリー出身監督らしく、劇映画デビュー作として選んだのは、
2012年にシリアで命を落とした戦場記者メリー・コルヴィンの伝記。
 
英国サンデー・タイムズ紙の特派員として活躍するアメリカ人女性記者メリー・コルヴィン。
戦場を飛び回り、2001年にスリランカでの取材中に左眼を失明してしまう。
片眼を失いながらすぐに現場復帰を果たしたメリーは、
それ以降、黒い眼帯をトレードマークとして着用するようになる。
 
2003年にはフリーのカメラマン、ポール・コンロイとともにイラクへ。
スクープをものにするが、帰国後に悪夢に悩まされるようになる。
紛争地での過酷な取材が彼女の心を少しずつ蝕んでいたのだ。
PTSDの診断が下され、メリーはしばらく入院を余儀なくされてしまう。
 
それもなんとか克服し、仕事に復帰すると、
2011年にはカダフィ大佐へのインタビューを敢行。
 
2012年にはシリアへ入国、政府軍に包囲されたホムスで反政府勢力側の取材をおこなう。
シリア政府は市民を攻撃したことはないと一貫して主張するが、
メリーが見た現実は、建物内に身を潜めて動けない市民たちの姿だった。
外に出ようとすれば容赦なく政府の攻撃を受け、怪我人や病人多数。
 
やがて、市民が隠れている建物が政府の標的にされると知り、
記者たちはただちに逃げる用意を始めるが、メリーは引き返して取材を続ける。
その様子は全世界に動画配信される。
 
動画の配信を終えた後、建物から脱出しようとした折りに爆撃に遭い、
メリーは命を落としました。
政府はこの爆撃も反政府勢力によるものと発表したそうですが、
メリーと行動をともにして生き延びたポールがそれは嘘であると主張。
 
戦場のシーンは凄絶で言葉も出ません。
現場を映すことに意味はあるだろうか、
いや、映すことで世界の人々が少しでも関心を持ってくれたらと願うメリー。
 
ドキュメンタリー映画でも観ているかのような戦場シーンとともに、
取材を終えた記者たちが過ごす時間も描かれています。
お酒も飲むし、その場で目が合った記者と一夜限りの情事も楽しむ。
そうでもしなきゃやっていられないんだろうと思うことしきり。
 
綺麗なお姉さんだったり、天然系の可愛い女性だったり、
好きな女優ではありましたが、今までのイメージはそんな程度。
ところがこれはイメージ一転。凄いです。
エンドロールが回りかけたとき、生前のメリー本人の語りが流れますが、
声だけ聞くとロザムンド・パイクがまだ喋っていると思ったぐらい。
声の出し方からしてパイクはなりきっていたのがわかります。
 
戦場で使われる武器なんてどうでもいい。
人がどうなっているのかを撮り続けた彼女。
取材に命をかける記者たちに敬意を払いたい。

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