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きょうの潮流

2017-08-20 | コラム

「心配しているのは『八月の砲声』のような事態だ」。米軍事専門紙ディフェンス・ニュース(11日電子版)で、米当局者が語っています▼『八月の砲声』(ちくま学芸文庫)とは、第1次世界大戦(1914~18年)が始まり、拡大していく過程を追ったノンフィクションのことです。著者は米歴史家バーバラ・タックマン▼同大戦は14年6月にボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボでオーストリア皇太子夫妻がセルビア人青年に殺害されたことがきっかけ。オーストリアがセルビアに宣戦布告すると、各国で総動員が始まり、緊張が高まりました▼各国指導者たちの誤算や過信が重なり、軍が用意していた作戦計画にしばられ世界は戦争に引きずり込まれていきます。機関銃でなぎ倒され死人の垣ができても、次々に押し寄せては突撃する。凄惨(せいさん)な戦闘の様子を「まるで弾丸のように生命を消費した」と描きました。同大戦の死者数は2500万人以上ともいわれます(『現代の起点 第一次世界大戦 第2巻』岩波書店)▼『八月の砲声』が出版された62年にキューバ危機が起きました。当時のソ連がキューバに核ミサイルを持ち込み、米ソは核戦争の瀬戸際に追い込まれました。危機対処にあたりケネディ米大統領が読んだのが同書でした▼国連安保理決議に違反し核兵器・ミサイル開発を進める北朝鮮。その対応をめぐり米朝が恫喝(どうかつ)の応酬を繰り返し、情勢の緊張が続いています。戦争は膨大な数の命を奪います。歴史の教訓を生かすときです。

 

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