梅雨末期の大雨。
今年も大きな被害が出た。
2009年7月21日。
山口県では北西~南東に向かう前線が数時間に渡り停滞し、
同じ箇所で集中的に大雨が降った。
昨年は金沢市で2時間に200㍉を越える大雨により大きな被害があった。
前々日の19日には岡山県美作市での竜巻被害。
香港に上陸した台風6号の発生以来梅雨前線の活動には注意していたが、
この日これほどの雨量を記録するとは考えてもしなかった。
前日には最大で24時間に200㍉との気象情報が出ていた。
しかし、
防府(ほうふ)市では50ミリ前後の豪雨が5時間の内に3回。
山口市では50ミリ前後の豪雨が5時間の内に4回。
想像を超えていた。
今回の大雨の原因を探るに手がかりがない。
~1つ気がかりなのは太平洋側近海の海面温度が平年よりも約2度高く、
日本海側の海面温度が2度低いこと。
また九州地方南部の梅雨明けと関東地方の梅雨明けが発表された後も、
太平洋高気圧の勢力が発達せず再び西日本に前線がおりていったことは、
はるか南海上で発生したとされるエルニーニョに原因があるのかも知れない。
~今週いっぱいも九州南部や関東では愚図ついた予報で、
梅雨明け宣言が解除されるかもしれない。
豪雨のデータを見るとひとつ気がかりなことがある。
午前9時30分頃に防府西高校の裏山が崩れる被害があったにもかかわらず、
2時間30分後の午後12時前後の国道に流れ込んだ土石流や、
老人ホーム周辺への土砂の流入を推測できなかったのか?
県や市の防災ではどのような防災基準を定めていたのだろうか?
前日からの雨を含め、
述べ300ミリを越える雨量の中で行政の目は河川だけ集中したのだろうか?
気象庁が発表した画像データを見れば理解できると思うが、
午前9時の時点で既に非常事態に陥っていることは容易に想像がつく。
日頃どれだけの雨量で老人ホームが危険であるかのデータを、
地元行政は準備していなかったのか?
~せめて2階への避難を呼びかけるだけで状況は変わっていただろう。
谷に沿って走る国道の危険雨量が何ミリに想定されていたのか?
昨年の金沢での突発的豪雨とは違い予見ができたように感じる。
重要なことは24時間雨量でなく短時間降雨量に注意をはらうことだ。
災害が起きる可能性としての数字は乾燥時の地域雨量(スポットでなく)で、
1時間50㍉、3時間100㍉、5時間130㍉、12時間150ミリ、24時間200ミリ。
前日に降雨があれば危険性はさらに増える。
しかし気象情報の精度が飛躍的に高まっても、
気象災害は起きてから対策が採られる。
これ以上は言うまい。
<降雨時間雨量:Yahoo!天気情報・アメダスの記録。>
*観測地:防府市西浦/標高:6m
13時:11.5 ←12時:49.5 ←11時:19.0 ←10時:25.5 ←9時:63.5
8時:24.0 ← 7時:38.5 ← 6時:7.5 ←5時:1.0㍉
~最大値:7時~12時(5時間)220㍉
*観測地:山口市周布町/標高:17m
13時::1.0 ←12時:49.5 ←11時:53.0 ←10時:3.0 ←9時:49.5
8時:74.5 ← 7時:36.5 ← 6時:2.5㍉
~最大値:7時~12時(5時間)266㍉
<関連記事>
*台風第6号 (モラヴェ) 2009年7月 ~梅雨前線と大雨情報。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/79f251765be746e06ae03f9ba0a20db3
*平成21年7月中国・九州北部豪雨(気象庁PDF)
→ http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/new/jyun_sokuji20090719-26.pdf
*北陸豪雨:金沢・浅野川水害と日本海側の防災対策。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/873581235111d0180307d221ba3e0f92
*九州北部の記録的集中豪雨と情報伝達:2009年7月24日
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/60beced2629fd96c65c5a2a1e1389a5d
~以下、Web記事編集転載。
*山口県防府市の県立防府西高で21日の午前9時20分頃、
裏山の斜面が幅約20メートル、高さ約50メートルにわたって崩れた。
グラウンドにいた男性(34)が土砂に巻き込まれ右腕と右足の骨を折る重傷。
グラウンドには、崩れたガードレールやなぎ倒された樹木がなだれ込んでいた。
<21日の正午頃>
山口県防府市下右田の国道262号付近で土砂崩れがあり、
自動車3台や住宅などが巻き込まれた。
同市真尾でも土砂崩れがあり、
老人ホーム「ライフケア高砂」に土砂が流れ込んだ。
県によると少なくとも5人が死亡9人が行方不明になっているという。
県によると下右田の現場では、近くの住民1人が死亡し、1人が行方不明。
救助に向かった消防隊員約10人が鉄砲水にのみ込まれたが無事だった。
県の災害派遣要請を受けた陸上自衛隊などが救助活動に当たっている。
現場では道路が完全に土砂に埋まり直径5、6メートルの岩も転がっている。
最も大きな被害となった、
老人ホーム「ライフケア高砂」では87人が2階や屋上で救助を待った。
ホームは川沿いの低くなっている土地にあり施設内にも土砂が流れ込んでいる。
屋内に取り残されている入所者もおり担架などで順次救助されている。
下関地方気象台によると防府市では、
21日午前9時20分までの1時間に観測史上最大となる70.5ミリの降水を記録。
19日午後1時の降り始めから21日午後4時までの総雨量は、
297.5ミリに達したという。
下関地方気象台によると1時間雨量は、
・美祢市桜山で午前7時50分までに90・5ミリ。
・山口市で同8時までに74・5ミリを観測。
・山口市阿知須では同8時半までに気象レーダーによる解析雨量が、
約100ミリに達した。
JR西日本は午前6時半頃、
山陽新幹線の新山口~新下関間で運転を見合わせ、
広島~小倉間に拡大した。
降雨がいったん治まったため一時再開したが、
同11時頃から再び降雨により運転を見合わせた。
また、
中国自動車道:小月インターチェンジ(IC)―小郡IC、
山陽自動車道:下関ジャンクション―埴生ICの上下線等が、
通行止めになった。
中国電力によると午前10時現在、
落雷により山口、防府、下関市などで約7900戸が停電となった。
(朝日・読売・北九州新聞:記事編集転載/ 2009年7月21日)
*防府市下右田の国道262号で午前11時45分ごろ土石流が発生。
数台の車が流され周辺の民家も土砂に埋まった。
現場は山陽自動車防府東インター近くの山間部。
◇老人ホーム:ライフケア高砂周辺。
『ライフケア高砂』から1キロ離れた場所に住む男性(62)は、
午後0時50分頃にテレビを見ていると突然、
「ゴオー」という音が響きはじめ北と東西の3方向から、
「ドーン、ドーン」とすさまじい音を立てながら、
土砂や岩、木が押し寄せてきたという。
乗用車と軽自動車が目の前を流れ、「
家の前は川のようだった」。
そのうち土砂などが家に押し寄せ居間のサッシが、
男性に直撃し両足にケガをした。
「ライフケア高砂」の近くに住む女性(66)は、
「滝のような雨と雷に震えるしかなかった。」とその時を振り返った。
真尾地区では真尾川上流の山が崩れて樹木が濁流とともに流れ出し、
ホーム以外にも家屋の浸水が相次いだ。
近くの山で2カ所が崩れ茶色い濁流とともに杉などの、
大木数本や砂利が道路を流れていった。
ホームの下流約500メートルに住む主婦(50)は、
「あっという間に家の周りが海みたいになった」と当時の様子を語る。
午前中、いったんは小康状態になった雨が正午前後に再び降り始めると、
1時間もたたないうちに自宅前の川があふれ外に逃げる間もなく、
ヘドロまじりの濁流が家屋に迫ってくるのをただ窓越しに、
見ているしかなかったという。
◇土石流:2度発生(国道周辺)。
土石流があった国道は山口市と防府市を結ぶ幹線道路。
市境にある佐波山トンネルを防府市側に抜けた道沿いに、
佐波川の支流が流れる。
現場近くに住む20代の夫婦によると、
21日午前10時半頃に支流が氾濫し直径約1メートルの石を含む、
土石流が国道に流れ込んだ。
その後、雨が小康状態になったため市消防署員や住民が、
土砂の撤去作業を開始した。
しかし正午すぎ、
「どぶのようなにおいがした」と異変に気づいた直後、
外から「うわーっ」という消防署員の悲鳴が聞こえたという。
すぐに窓から国道に目を向けると車両用の信号機(約5メートル)の、
高さほどの鉄砲水が一気に国道を駆け下った。
また、
国道から脇の市道に土砂が流れるのを防ぐため近所の人と、
土のう積み作業をしていた無職の男性(60)は、
「突然、高さ3メートルぐらいの木片や岩石の塊が、
自分たちの横を通り過ぎていった。」
と恐怖を振り返った。
(毎日新聞:2009年7月21日/記事編集転載)
<防府市での22日現在の被害>
・146か所で土砂崩れが発生。
・21戸が床上浸水。
・140戸が床下浸水。
・水路や河川の氾濫は112か所。
~23日夜の報道
・死者11人、行方不明者6人。
<山口市での22日現在の断水>
・約2万9300世帯が断水。
(Web記事:編集転載/ 2009年7月23日)
*画像が小さい場合は、
拡大(タイトル上or画像上をクリック)してご覧ください。
国土地理院の2.5万分の1ウエッブ地形図では、防府の老人ホーム「ライフケア高砂」の東側の裏山の標高135mほどの所に、砂防ダムの印が見え、その上方が、荒地のマークになっていますね。このへんから崩れ落ちたのではないでしょうか?
まず読者の方々が理解しやすいように地図のリンク先を表示します。
*国土地理院:2万5千分の1地形図(矢田:山口県)
→ http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?b=340558&l=1313618
NHKの報道によると山口県防府市の老人ホームに流れ込んだ土石流は、
標高400メートル付近の山から約2キロに渡って発生。
との報道があります。
報道映像を見る限り土石流の発生によって、
新たな川の流れができたのではないかと感じます。
高地からの土石流は一瞬の内に老人ホームまでを駆け抜け、
薙倒された大木が新しい河川を造成したとのではないか?
でないと24時間たってもホームのエントランスに向けて、
大量の流水が流れ込むことの理由を見出せません。
(河川となったことで山の蓄え量以上の水が川に押し出される)
ご指摘の砂防ダムは計画中のダムとの情報もあり、
地図上の砂防ダムは機能していないと認識しています。
いずれにせよ地形的に沢沿いに大量の土石流が発生する要素は高いようで、
地元自治体の責任追及に議論が及ぶのは仕方ないことなのかな?
と感じます。
でも地元行政の機能性の限界を越えた災害なのだろうと感じます。
ただし機能性とは危機意識と情報伝達マニュアルの徹底であり、
それが欠けていた事は否めまないとも感じます。
今後の報道を待ちたいと思います。
>NHKの報道によると山口県防府市の老人ホームに流れ込んだ土石流は、
標高400メートル付近の山から約2キロに渡って発生。
ご紹介の地形図には、ライフケア高砂の南東の石切場のあるあたりが、標高400mですね。確かに、枯れ谷の地形が、「ライフケア高砂」に続いていますね.
135mの砂防ダムの谷も、その西の187.6mの三角点付近からの谷も、三つとも、「ライフケア高砂」に向かっていますね.
老人ホームは、文字どうり「高い砂や泥\に埋まり、人命(ライフ)も多く失われました。「ライフケア高砂」命名の意味でしょうか。
確かに山を背にした地形は土砂災害の危険が多いですね。
<河川とは太古の昔からの決壊(土石流)の爪跡。>
と治水の本で読んだと記憶してますが、
施設を維持すらために山を整備するには、
数十億の工事費がかかりますし、
施設を移転するにも数億の費用が必要です。
施設を修理すれば良いと言った問題ではありません。
全国で土砂災害危険地帯は数万件にも上り、
税収不足の地方自治を将来展望のない国庫で補うことも困難。
どうすれば良いんだろう?と頭を痛めます。
<ケア>は世話とか手助けの意味で、
「人生のお世話をする。」
との理念が命名理由だと感じます。
お世話するスポットが危険地帯。
建設許可を出した過去の行政責任。
でも時代の変化で気付くこともあり、
日々改善されることを望みます。