壮絶たる食の達人。日本を代表する作曲家であった團伊玖磨氏の『パイプのけむり選集・食』を読んで、そう思った。
37年もの長期にわたってアサヒグラフに連載された『パイプのけむり』という同氏のエッセイはあまりにも有名で、私もおそらく過去に何度かその一遍をかじったことはあるとは思うが、膨大な数のエッセイの中から食に関するものをうまく集めたこの新装本(小学館文庫)を今回大いに楽しませてもらった。
この人の食に対するあくなき好奇心、探究心は、科学するこころに通じている。また、職業柄世界中を旅されて、各地で出会う食の文化をきわめて独自の食感で持って心から楽しみ、それをうまく文章として表現された才能には感服するほかない。科学者もコンフェランスなどで世界中を旅する幸運に恵まれた職業であるが、團氏のような著名な作曲家の「出張」の多さには驚嘆するとともに同情せざるをえない。同氏は、2001年旅先の蘇州で心不全を発症し、帰らぬ人となった。享年77歳。最後に何を食されたのだろう。
九州の財閥の家に生まれ、祖父、父ともに男爵であった家柄だった。文章の節々に認められる気骨さは、家庭環境の中からはぐくまれたものに違いない。その独断と偏見にも近い自己の主張が、あまりにもセルフ・コンシステントというか自己的に筋が通っているので、滑稽であるはが納得させる力をもっている。
久しぶりに読んでいて楽しい文章にめぐり合うことができて、こちらもお腹が満腹になったような気がした。
37年もの長期にわたってアサヒグラフに連載された『パイプのけむり』という同氏のエッセイはあまりにも有名で、私もおそらく過去に何度かその一遍をかじったことはあるとは思うが、膨大な数のエッセイの中から食に関するものをうまく集めたこの新装本(小学館文庫)を今回大いに楽しませてもらった。
この人の食に対するあくなき好奇心、探究心は、科学するこころに通じている。また、職業柄世界中を旅されて、各地で出会う食の文化をきわめて独自の食感で持って心から楽しみ、それをうまく文章として表現された才能には感服するほかない。科学者もコンフェランスなどで世界中を旅する幸運に恵まれた職業であるが、團氏のような著名な作曲家の「出張」の多さには驚嘆するとともに同情せざるをえない。同氏は、2001年旅先の蘇州で心不全を発症し、帰らぬ人となった。享年77歳。最後に何を食されたのだろう。
九州の財閥の家に生まれ、祖父、父ともに男爵であった家柄だった。文章の節々に認められる気骨さは、家庭環境の中からはぐくまれたものに違いない。その独断と偏見にも近い自己の主張が、あまりにもセルフ・コンシステントというか自己的に筋が通っているので、滑稽であるはが納得させる力をもっている。
久しぶりに読んでいて楽しい文章にめぐり合うことができて、こちらもお腹が満腹になったような気がした。