カナダ・エクスプレス

多倫多(トロント)在住の癌の基礎研究を専門にする科学者の自由時間ブログです。

米長邦雄永世棋聖、さようなら

2012年12月19日 | 将棋
将棋永世棋聖の米長邦雄氏が前立腺がんで亡くなられた。享年68歳、あまりにも早すぎる最後だった。

米長氏のことは私が中学の頃から知っていた。当時7段だったと記憶する。親友のK君が米長の大ファンだった。別の親友T君は加藤一二三、A君は二上達也、私は升田幸三の大ファンだった。古いことはよく覚えているものである。

米長氏は最年長(49歳)で名人位を初獲得したことでも有名だ。引退後は将棋連盟会長として活躍された。将棋界にとっては大きな損失である。

心からご冥福をお祈りする。

渡辺明竜王、待望のA級入り

2010年02月06日 | 将棋
将棋のB1組順位戦で渡辺明竜王が深浦王位を下し、A級入りを決めた。竜王位を6期連続防衛してきた実力者なので、A級入りは時間の問題と誰しもが思っていただろうが、予想以上に時間がかかった。順位戦はやはり厳しい世界である。

渡辺竜王は私が注目している棋士の一人だが、羽生世代のエリート的な棋士集団とはちょっと異なる、考え方が柔軟で、インターネット世代の遊び心を備えた新しいタイプの棋士だと私は思う。25歳という若さだが、その風貌はすでに大山名人に匹敵する落ち着きと貫禄をひめている。

渡辺竜王のブログは、将棋ファンにとっては貴重な存在で私も利用しているが、棋界の情報をタイムリーに発信している。そして、対局のあった次の日の感想などを紹介してくれるなど、サービス精神が旺盛で、ファンへの思いやりや棋界への思い入れが伝わってくる。

来年のA級順位戦が大変楽しみになってきた。渡辺竜王の健闘を期待している。

プロフェッショナル

2008年07月29日 | 将棋
親類から送ってもらったDVDで、7月15日に放送されたNHK「プロフェッショナル」ライバルスペシャル「宿命の対決・名人戦・森内俊之VS羽生善治」を見ることができました。素晴らしかった。

羽生はこの名人戦を制して永世名人の資格を獲得しました。この勝負にはどうしても勝ちたかったのでしょうね。その執念というか決意が画面から伝わってきました。

森内前名人が最終局に敗れた翌日、一行より先にいち早くホテルを立ち、始発で東京の自宅に戻ったという話は、勝負の世界の厳しさを感じさせてくれるエピソードです。こんな話は大山、升田時代からあったような話ですね。今も昔も勝負の世界は変わりません。

羽生名人の一言には重みがあります。プロフェッショナルとは、24時間、356日プロであり続けることだと、さらっと言ってのけます。本当にこの人はそうしているのだと思います。実にさわやか、実に爽快です。これからも、このお二人にはいい将棋を極めていってほしいと思います。

家人が横で「将棋の棋士は歳をととったらどうなるか?」と聞いています。年とともに気力や集中力は低下しますが、還暦を過ぎてもまだ現役で将棋をとことん指している棋士は数人います。成績が低下して引退していく棋士もたくさんいますが、そういう棋士たちの多くは地方の将棋教室などで将棋を教えたりしているのだと思います。

 生涯現役の方が多い世界ですね。そういえば、痴呆になった棋士の話はあまり聞きません。我々の耳に入らないだけかも知れませんが...大山永世名人などは生涯A級(トップ10人からなる棋士のクラス)でした。頭を使い続けること、大事ですね。米長邦雄さんの話だったと思いますが、将棋を指していると「脳が汗をかく」と言っていました。頭も体も汗をかくくらい使い続けたいものです。健康で長生きする秘訣かもしれません。

羽生三冠返り咲き

2008年06月19日 | 将棋
将棋名人戦第6局が天童市で行われ、羽生挑戦者が森内名人に勝って対戦成績を4勝2敗として、名人位を久々に奪取しました。これで名人位通算5期となって、十九世永世名人の資格を獲得しました。同時に王座、王将を含めて三冠となりました。羽生名人おめでとう!

羽生三冠は本日の王位戦挑戦者決定戦でも橋本七段を下し、深浦王位に七番勝負を挑む権利を獲得しました。また、棋聖戦ではすでに佐藤棋聖への挑戦権を獲得しています。すさまじいスケジュールをこなす羽生三冠は、将棋にすべてをかける姿勢を周りにも明らかにし、そして生活も完全に将棋に集中する体制で臨まれていると聞きます。そして見事な成績をあげています。誰にでもできることではありません。実にあっぱれです。

将棋界は、これまで若い人材をうまく育て、谷川九段をはじめとして、次の世代の羽生三冠、佐藤棋聖、森内前名人、さらに若い渡辺竜王をはじめとするヒーロー生み出しています。そこには年齢やら他の要素によらない実力のみの勝負の世界があり、それによって順位が決まる明確な仕組みが整っているからだと思います。サイエンスは勝負の世界とはちがいますが、日本の科学の分野でも、もっとたくさんこういう若い星がキラキラと輝くようになったら素晴らしいを思います。それには何をしていかないとならないか?、将棋の世界を見ながら考えさせられるものがあります。

名人戦第三局

2008年05月10日 | 将棋
昨日の名人戦第三局、森内名人対羽生挑戦者の将棋にはびっくりしました。森内名人が序盤から桂得となり明らかに優位に対局を進め、中盤では「森内勝勢」という専門家の解説が出ていました。森内名人の飛車が楽々と挑戦者の玉の横腹めがけて成り込む様相を呈していましたが、それを玉頭の攻めと歩のたたきなどを駆使し、最終的に自陣に打ち込んだ攻防の角を使って、羽生挑戦者はその飛車を敵陣に見事に封じこめてしまいました。そして流れが変わったと思われます。終盤では森内名人のミスも誘い、圧倒的に敗勢と思われた将棋を見事に自分のものにしてしまいました。この羽生挑戦者の実力と気合いそして集中力に、感動と感嘆の意をこめて拍手を送りたいと思います。

どんなに窮地に立っても決して諦めない羽生二冠の姿勢はほんとうに印象的でした。将棋に限らず、何事にもこうありたいものだと思わせる、素晴らしい将棋を見せていただきました。

深浦康市新王位誕生

2007年09月27日 | 将棋
羽生善治王位を4-3で破り、深浦康市八段が王位のタイトルを獲得しました。深浦新王位は初めてのタイトルです。おめでとうございます。羽生は王座と王将の二冠になってしまいました。しかし、またいづれかのタイトルをすぐ取り返すことでしょう。

このところ深浦新王位は実力をフルに発揮して好調でしたので、タイトル獲得の可能性はある程度予想はされていました。最初の二局で深浦八段が二連勝して、深浦絶好調を見せつけてくれましたが、そこは羽生三冠、踏ん張って3-3まで持ち込み、最終の七局まで勝負は持ち越されました。

会場は木村名人と升田八段との名人戦で名高い神奈川県の「元湯・陣屋」でした。羽生と深浦は最後まで熱戦を繰り広げ、先手深浦105手目「7七角」が切れ味のよい詰めろ逃れの詰めろの好手で、見事に最終局をものにしました。ただ、渡辺竜王のブログによると、後手「7六桂」という手が存在し、その後の変化がどうやらかなり面白いとのことです。ブログのおかげで、プロの視点を終局後すぐ聞けることは大変ありがたいことです。将棋が益々面白くなります。

森内俊之十八世名人誕生

2007年06月30日 | 将棋
第65期名人戦七番勝負の最終局が28日、29日の両日蒲郡市の銀波荘で行われ、森内俊之名人が郷田真隆九段を破り、名人位を防衛すると同時に、5期連続名人位獲得した結果、第十八世名人位の資格を得た。最初挑戦者が2連勝したので、「もしかしたら」という声もあったが、その後名人が連勝し、三勝三敗のタイまで持ち込まれた。郷田九段も最後まで粘ったが力及ばず、森内名人の勝利となった。

森内名人の棋風は、剛健とか剛鉄という言葉で形容される。恐ろしいほど守りが強いのである。安定した力の持ち主である。同世代の羽生善治三冠とはよく比較されるが、棋風が全く違うので、この二人の将棋が実に面白い。深みのある好勝負となることが多いのである。この二人に加えて、谷川、佐藤、渡辺、丸山、そして今回の挑戦者郷田、今の将棋界は様々なタレントの持ち主がたくさんいて、見ていて実に楽しい。大山、升田、塚田の重鎮に中原、米長、二上、加藤らの若手が挑んでいた60年代にも勝るとも劣らない顔ぶれが揃っている。

森内名人、おめでとう。これからも素晴らしい将棋を見せてください。

羽生善治永世王将誕生

2007年03月21日 | 将棋
第56期王将戦七番勝負の第七局が新潟県佐渡市で行われた。羽生善治王将に佐藤康光棋聖が挑戦して3勝3敗で迎えた大一番であった。角交換向飛車から佐藤が得意の力戦模様に持ち込もうとしたが、羽生の落ち着いた着手、特に端歩を9四の位置に控えて打ったあたりから、羽生の完璧とも言える攻めを佐藤は収拾することができなかった。実に鋭利で一直線的な攻撃で感嘆の一語につきる。

これで羽生は通算10期の王将位を獲得して、同時に永世王将の称号も得た。羽生は他にも永世棋王、永世棋聖、名誉王座、永世王位を資格を有するので、永世五冠ということになる。残るは永世名人と永世竜王の称号である。彼の若さと棋力を持ってすれば、永世七冠も夢ではなさそうだ。

ほんとうにすごい記録である。羽生善治永世五冠を心から祝福したい。ほんとうにおめでとうございます。

渡辺明竜王、堂々三連覇

2006年12月21日 | 将棋
第十九期竜王戦七勝負の第七局が新潟南魚津市「龍言」で行われました。佐藤棋聖が第六局を完勝し、両者三勝三敗のタイになり、どちらが勝ってもおかしくない雰囲気の中で行われた最終局でした。

これまで序盤で色々工夫を凝らしてきた佐藤棋聖でしたが、今回は両棋士とも得意とする「矢倉囲い」となり、どちらも譲らない雰囲気の中、中盤へと進んでいきました。戦いが始まってからの渡辺竜王の見事な指し回しにただただ感歎です。自分の玉形を少しずつ改善しつつ、相手の傷を少しづつ広げていく、沈着冷静な指し手が光りました。佐藤棋聖にもミスはあったようですが(本人言)、それを誘う渡辺竜王の差し手に軍配が上がった形になりました。

これで渡辺明竜王は棋界の最高峰タイトルを三連覇しました。本当におめでとうございます。

同棋士は、ご自身のブログでこのタイトル戦も含めて自分の対局内容を振り返りながら解説してくれます。棋士が対局中どういう気持ちで一手を指しているのかをさらっと教えてくれます。もちろん、相手がそれを毎回見ていることも承知の上です。ファンサービスもさることながら、その解説・感想の中に将棋に対する真摯な姿勢が伝わってきます。今回の最終局の解説も帰宅と同時に公開されるでしょう。それを読むのも大変楽しみです。こういう棋士が将棋界を益々盛り上げ、面白くしてくれると私は思います。

渡辺明竜王、見事な粘り勝ち

2006年12月08日 | 将棋
第十九期竜王戦七番勝負の五局目が滋賀県長浜市で行われました。やあ~、手に汗握る大熱戦でした。そして、果敢に攻めて優勢だった挑戦者佐藤康光棋聖を粘り越しで逆転し、最後は切れのいい即詰みで渡辺明竜王が勝利しました。22歳とは信じられない、落ち着きと粘り越し、そして最後まであきらめず冷静を持続するその態度に、ただただ感歎です。

研究も同じこと。こういう粘り越しが実験を成功に導いてくれます。もちろん粘っていればいいのではなく、その間に身も心もすべて実験に捧げる態度が必要です。将棋の棋士がこういう真剣勝負をしている時は考えに考えるため、それだけで体重が減少すると言います。脳の中でATPをガンガンに消費しているのでしょう。ある棋士は「脳みそが汗をかく」と表現しました。ちょっと、お説教みたいになりましたね。いかん、いかん。

このタイトル戦は、最初佐藤棋聖が2連勝して、竜王危うしと誰もが思ったと思うのですが、この勝利で竜王3連勝、一気に3勝2敗となり、挑戦者をカド番に追い込みました。今年も絶好調だった佐藤棋聖がこのまま敗退するとは思えません。残りの勝負が大変楽しみになってきました。


羽生善治王座、タイトル獲得総数歴代二位の偉業

2006年09月28日 | 将棋
羽生善治王座に佐藤康光棋聖が挑戦していた第54期王座戦において、羽生王座は3連勝のストレート勝ちで、同タイトルを防衛しました。このタイトルの15期連続の防衛という記録もすごいですが、これで他の数々のタイトルも含めたタイトル獲得総数が65となり、中原誠永世十段を抜いて歴代第二位に躍り出ました。そして羽生三冠はまだ30代半ばの若さです。まだまだ記録を伸ばすことでしょう。谷川浩司と中原誠というスーパースターを追い越し、残るは大山康晴十五世名人の記録(生涯タイトル獲得総数80)に迫るのみです。この分で行くと50歳になる前に、巨人・大山を越えるだろうと私は予想してます。彼の集中力、精神力、研ぎ澄まされた頭脳を持ってすれば可能だと私は思います。そして何よりも尊敬に値するのは、歳を重ねても弛まず研究する姿勢、自分をさらに研磨しようとする態度です。一ファンとして彼の将棋にはいつも魅せられます。これからも、ぞくぞくするような好勝負を見せてもらいたいと願っていますし、応援しています。

名人戦問題 -私見-

2006年08月04日 | 将棋
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、名人戦の主催新聞社の問題で今将棋界は揺れています。現在は毎日新聞が主催者ですが、朝日がより高額の契約金および支援金を提示し、色々な経緯の末、8月1日に棋士全員による投票が行われ、朝日に移すことを承認する決議がなされました。

毎日は朝日の契約金提示のあと、従来の契約金を増額する案を提示しました。カウンターオファーです。当然です。しかしながら、実質的には朝日の提案を上回ることはなかったと理解しています。とは言っても、毎日新聞はこの棋戦を長期にわたって主催し、さらには王将戦も支援していますから、将棋界にとっては貴重なスポンサーです。それらのことを背景に、棋士の中には毎日支持の声が多くあったようです。特に、タイトルを保持する有力棋士である羽生、森内、渡辺らは毎日新聞支持の声明を投票前から出していました。

結果的には、この決議は、将棋連盟の企業化、棋士のサラリーマン化を団体全体として承認することになってしまったようにも思えます。全棋士にサラリーを支払うためには、毎年の収入増加が必要です。この会社制度が大前提であるのなら、収入が膠着したり減少すれば会社として破綻します。この社会通念が今回の決議に作用したように考えられます。

しかし、将棋は勝負です。勝つ者が高収入を得て当然です。最低限のサラリー制度は、若手棋士の育成にとっては不可欠だとしても、「勝負がすべて」という理念を棋士の皆さんが持つことが大切だと思います。それが、引いては将棋界の発展につながるはずです。その厳しさがあるからこそ、棋士は技を磨き、勝負に真剣になるはずです。そして、そういう棋士たちの将棋にファンは魅了されるのです。サラリーマンの将棋を見たいとは思いません。

ただし、朝日主催の名人戦を頭から否定するのも懸命ではありませんね。問題は、朝日が今後この歴史ある名人戦棋戦をどのようにより素晴らしいものに盛り立てていけるか?その辺のビジョンや計画をある程度、棋士やファンの方に示す必要があると思います。毎日も同様で、朝日よりももっといい方法があるので、毎日継続を応援してください、というような具体的提案があってもいいのではないでしょうか?棋士同士が将棋盤の上で戦うように、スポンサー同士も競争して、よりよいイベントにできればいいのではないでしょうか?どこの世界にも競争はあってしかるべき。我々のサイエンスの世界にも厳然として存在します。将棋連盟は、その競争理念をうまく活用して繁栄の道を模索するしかないと思います。長考が必要な局面です。

今回の投票の結果は、将棋界のいくつかの問題点を浮き彫りにしました。上に述べたように、真剣に勝負と向き合っている成績優秀な棋士たちを尊重する姿勢も必要です。スポンサーとうまく「取引」して、ファンにとって棋士にとって、より魅力的な棋戦を増やす努力も不可欠です。「会社」としての経営計画も考慮に入れねばならないでしょう。将棋ファンの一人として、理事会が大局をよく見据え、好手を指してくれることを願ってやみません。


佐藤康光永世棋聖誕生

2006年07月07日 | 将棋
第77期棋聖戦五番勝負第3局が行われ、佐藤康光棋聖が挑戦者・鈴木大介八段に3連勝して、棋聖位を防衛しました。佐藤棋聖は、棋聖位獲得が通算5期となり、「永世棋聖」となりました。おめでとうございます。佐藤棋聖の気風は、最新の研究型将棋を基本としまがら、同時に力戦型もこなせるという点で、他の棋士と別格の地位を確立しています。高校のテストでいうと、定期試験もよくでき、しかも実力試験でも高得点をとれる、というタイプの人です。秀才ですね。羽生三冠との将棋はいつも、真剣が何度もぶつかり合う、素晴らしい将棋です。振り飛車党の鈴木八段との将棋もネットで楽しみましたが、残念ながら、挑戦者は力を出せぬまま、押しつぶされた感があります。まずは、佐藤棋聖に祝福をこめて、この記事をのせました。

森内俊之名人防衛

2006年06月17日 | 将棋
将棋の森内名人が、谷川浩司九段を4-2で押さえ、名人位を防衛しました。森内名人は、これで三連覇、通算四期の名人位在位となりました。森内将棋は、手堅く、強固な守りが真髄です。「光速の寄せ」で名高い谷川九段の攻めも、残念ながら歯が立ちませんでした。また、森内名人が先手番の将棋は、谷川九段の完敗だったとのことです。谷川九段には、まだまだがぱってほしいと心から願います。

羽生王将タイトル守る

2006年03月23日 | 将棋
羽生王将が、三連勝のあと三連敗して迎えた大将戦七番勝負最終局が行われ、挑戦者佐藤康光棋聖を下し、大将位を死守しました。手に汗握る熱戦を先ほどネットでリプレーしました。いい将棋でした。これで、羽生は三冠を堅持しました。最近棋王位を森内名人に渡し、順位戦では谷川九段との挑戦者決定戦に破れ(これも大変な好勝負でした)、羽生危うしの声もあったと思いますが、ここ一番で見事に勝利。大将位防衛、おめでとうございました。