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カナダ・エクスプレス

多倫多(トロント)在住の癌の基礎研究を専門にする科学者の自由時間ブログです。

Eva Cassidy

2012年04月15日 | 音楽
久しぶりに音楽の話し。

YouTubeという便利な道具がこの世に現れてから、音楽の楽しみ方に幅が生まれたような気がする。
題名をサーチすれば、様々歌い手のバージョンが視聴できる。最近はカバーバージョンがたくさん出回っていて、素人さんでも素晴らしい歌唱力を持った人に巡り会うこともある。

そんな中、先日ちょっとしたことで、Eva Cassidyというアメリカの歌手を知った。この人は90年代にワシントンDCのクラブでギターの弾き語りで歌っていたらしく、ビデオはそのクラブでの録音が多い。彼女は自分の気に入った歌しか歌わず、バラード調の優しく、物悲しい曲が多い。なかでも「Wonderful Life]」、「Over the Rainbow」、「True Colors」の録音は最高である。ちょっと時代はずれのスタンダード曲を静かなギターの弾き語りで歌い続けていた。

CDも出しているようであるが、発売当時はあまり売れなかったようだ。実は彼女はメラノーマ(皮膚癌)で1996年に他界している。33歳の若さだった。私は彼女のことを生前は知らなかった。

彼女の死後、心に響いてくる彼女の歌がインターネットを通して多くのファンを集めるようになったらしい。彼女のホームページもある。CDも復活して、Amazon等で売られている。こういうこともあるのだなあと思った。インターネットがなかったら、Eva Cassidyという歌手はアメリカの一部の人にしか知られず、その才能は埋もれた存在で終わったであろう。

Eva Cassidyさんのご冥福をお祈りするとともに、こういう音楽の出会いを可能にしたインターネットの世界に感謝したい。

"Higher Window" by Josh Groban

2011年02月16日 | 音楽
久しぶりにいい音楽に出会いました。それは、アクシデントのようにやってくるものです。

数日前のことですが、通勤の車の中でFM96.3MHz(トロントのクラッシックチャンネル)をいつものように聴いていると、いい音楽が流れてきました。

それは、Josh Grobanというシンガーソングライターの”Higher Window”という曲でした。

このミュージシャンは知りませんでしたし、もちろんこの曲もはじめて聴きます。しかしながら、聴いたときの印象は、「懐かしいスタンダード・ミュージック」という感じでした。この曲は彼の最新アルバム「Illuminations」の入っているそうです。

早速YouTubeで彼のPVを発見しました。皆さんにも紹介します。こちらをクリック。

Nashville在住のGavin Mikhailさんのカバーもなかなかのものです。

Bank Band

2010年11月23日 | 音楽
最近素晴らしい音楽家とめぐり会った。日本のポップファンの方には笑われると思うが、桜井和寿さんのことである。

私が彼に出会ったいきさつはこうである。とあることから、「To U」という曲と出合ったのが今年になってからで、それが誰の曲かを知らずにしばらく時間が過ぎた。いつの間にかその曲を口づさむようになり、誰の曲かをどうしても知りたくなった。そしてYouTubeでその曲がBank BandとSalyuによって歌われていることを知り、Bank Bandの存在、そして桜井和寿さんをはじめて知ることになった。Bank Bandはなじみが薄くても、Mr. Childrenの桜井さんといえば日本の方ならおそらく皆さんご存知だろう。

Bank Bandは桜井さんと彼の音楽のパートナーである小林武史さん、さらに坂本龍一さんの三人が中心となって行っている「環境保護や自然エネルギー促進事業、省エネルギーなど様々な環境保全のためのプロジェクトを提案・検討している個人や団体へ低金利で融資する非営利団体」(Wikipedia)である。「To U」という曲も、世界中の人々に平和と災害救済支援を呼びかけるスケールの大きな曲だ。

桜井さんの音楽活動は80年に始まっていたというから、これまで知らずにいたのが実に不思議である。まあともかく、今は彼の才能に魅了されている。ここ数ヶ月でいろいろ彼の曲を聞き込んだ。特に私は彼がBank Bandとして活動して歌っている曲が気に入っている。「HERO」、「はるまついぶき」、「手のひら」、そして彼の歌う「糸」(中島みゆき作曲・作詞)、「生まれ来る子供たちのために」(小田和正作詞・作曲)、「歌うたいのバラット」(斉藤和義作詞・作曲)も素晴らしい。嬬恋で毎年夏に開催されるBank Bandを中心とした音楽祭AP Bank Festivalに一度行ってみたいものである。若者に混じって。

桜井さんの歌いっぷりがいい。彼の歌は心の叫びであり、全身のエネルギーが歌に注ぎ込まれている。そして、若者の言葉でもってつづる歌詞が人の心を動かす。「HERO」の一節にこんな歌詞がある。

     駄目な映画を 盛り上げるために
     簡単に命が 捨てられていく
     違う! 僕らが見ていたいのは
     希望に満ちた光だ

今朝鮮半島で起こっていることを投影しているように聞こえてならない。

加藤和彦さんの『感謝』

2009年10月20日 | 音楽
まだ、加藤和彦さんの突然の死のことを考えている。彼が残した名曲『感謝』を聴きなおしてみると、彼のこころの中からの叫びが聞こえてきそうである。

「深い川を越えたならば わたくしも戻らぬ だから今が 大事すぎて 幕がおりるまでは 恨みつらみ語りつくして 心からの感謝を」

作詞きたやまおさむ、作曲が加藤和彦だが、北山さんが加藤さんの気持ちを代弁しているようにも思えてならない。2002年の比較的新しい作品。

これも私の想像でしかないが、癌で若くして亡くなった加藤の最愛のパートナー・安井かずみさんを思って、この歌が生まれたのではないか?この歌の第一番は以下の歌詞で始まる。

「長い橋を渡る時は あの人は帰らぬ 流れ星のふりそそぐ 白い夜の船で 消える御霊 見送りながら 心からの感謝を」

加藤さんが亡くなる直前に、ありがとうの言葉を周りの知人、友人に残していたという。心の病を抱えながらの、覚悟の死だったのだろう。あまりに繊細な人だったから、これほどの名曲を数多く残せたのかもしれない。

YouTubeに『感謝』の素晴らしい録画があるので、ぜひ一度聴いてみてほしい。リンクはこちら

訃報・加藤和彦さん 私は『悲しくてやりきれない』

2009年10月17日 | 音楽
悲しいニュースが入ってきました。音楽家の加藤和彦さんが自らの命を絶ったとのことです。享年62歳。あまりにも突然の知らせで、驚くとともに本当に悲しくてなりません。

加藤さんはフォーくクルセダーズというグループを北山修さんらと始めてから、たくさんの名曲を残しました。『悲しくてやりきれない』、『あの素晴らしい愛をもう一度』、そして『イムジン河』。あまり知られてないところでは、『花のかおりに』そして『感謝』という隠れた名曲があります。これらはどれも私の大好きな曲ばかりで、今でも通勤の車の中で聴いたりします。素晴らしい音楽センス、そして類まれな才能を持たれた方でした。

つい最近まで音楽活動を元気にされていた様子ですが、加藤さんの心の中で何が起こっていたのかはわかりません。本当に悲しくてやりきれない気持ちです。

加藤さんのご冥福を心からお祈りします。

P.S. Otake様。私がこの記事を書く前に、この知らせを私に教えてくれるために、コメントくれていたのですね。ありがとう。本当に残念です。天国へ行かれたのだと思います。また、コメントください。元気で。

夜空ノムコウ

2009年02月04日 | 音楽
最近はYouTubeや音楽のダウンロードサイトがあって、大変便利になりました。日本ではやっている曲を簡単に聴くことができますが、10年前はこうではありませんでした。そういうわけで、音楽が大好きな私も、日本のミュージックシーンの情報にまったく疎い時期があり、「えっ、こんないい曲があったの?」ということがあります。

スガシカオ作詞、川村結花作曲の「夜空ノムコウ」はまさにそんな曲の一つで、つい最近知りました(笑)。1998年にSMAPが歌って大ヒットしたとか。全然知りませんでした。そして、このメロディーの美しさと歌詞の素晴らしさに今感動しています。日本にいらっしゃる方には、まったく笑われてしまいますよね。

海外に暮らしていると、こういうこともよくあります。浦島太郎の心境です。でも、逆にいろんなものが新鮮に見えたり聴けたりしますし、メディアの仕掛けに左右されず、自分の目と耳で本当にいいと思えるものを見つけることもできます。

「夜空ノムコウ」に出会ったときは、隠れていた宝石を見つけたような気がしました。世の中には才能のある人がいるものです。素晴らしい。


吉田美和さんのこと

2008年01月20日 | 音楽
正直言って、昨日NHKのスペシャル番組を見るまでドリカムの吉田美和さんのことはあまりよく知らなかった。読者の方には笑われることだろうが...もちろん、「何度でもLove Love Love」という曲は聴いたことがあるし、ドリカムというバンドの存在も知ってはいた...

このグループは88年に結成されたという。もう20年も活動を続けてきていることに驚いた。ちょうど私が渡米した年とも重なるので、その年月の重みを感じざるを得ない。

吉田美和さんは北海道池田町の出身だそうだ。「ワインの城」には私も昔行った。帯広平野の広い大地が印象的だった。小さい時から音楽が好きだったらしい。才能はあったに違いない。彼女の歩みを番組から見て感じることは、この人は努力の人だということだ。しかも自分の夢をいつも忘れずそれに毎分毎秒邁進している彼女の姿があまりにも美しい。彼女の眼はいつもまっすぐ前を向いている。天職をえた人である。

パートナーにも恵まれている。中村正人というよき理解者であり音楽家とのチームワークも素晴らしい。そこには男女の関係を超越した信頼関係、フレンドシップ、プロフェッショナリズムが存在するのだろう。これもファンを引き付ける要素なのかもしれない。

昨年秋、吉田美和さんは彼女の私的パートナーを癌で失っている。番組でも紹介されていた「ワンダーランド2007」という一大ツアーイベントで全国を飛び回りながら、その陰には癌と戦いながらイベントの成功を願う夫の姿があった。そしてかたわらで彼を暖かく見守る彼女の姿があった。そしてイベントがすべて終了して三日後にこのパートナーは他界したとのことだ。悲しい話である。

これからも、このバンドには素晴らしい愛の歌を作り続けてほしい。歌い続けてほしい。


才能と天職

2008年01月16日 | 音楽
才能のある人というのはいるものである。音楽の世界、絵画の世界、芸術の世界には、たくさんの人がその才能を華咲かせている。そして彼らの作品に触れると、多くの人々が美しいと思ったり、心を惹かれたりするものだ。

今Sarah McLachlanの曲を聴いているが、この人も実に才能に恵まれた逸材であって、その才能が見事に彼女の音楽に表現されている。聴いていて何とも心が気持ち良くなるのである。彼女はカナダのノバスコシア出身のシンガーソングライターで、90年代後半から多くのヒット曲を出しているので、ご存じの方もいらっしゃるであろう。前にも彼女の音楽についてこのブログで書いたことがある。今は二児出産のため休暇中である。

もう一人カナダ出身の音楽家を紹介するとすると、やはりピアニストのGlenn Gouldであろう。バッハを生涯にわたって愛し続け弾き続けた。その数々のレパートリーにはつくづく感心させられる。毎日聞いていても全く飽きることのない完成された音楽なのである。この才能も実に見事な花を咲かせている。

それからカナダの音楽家で忘れてならないのが、昨年暮れに惜しまれて他界したジャズの巨匠オスカー・ピーターソンである。素晴らしい才能の持ち主であった。彼の自宅のあるミシサガは私の家から30分足らずのところである。

一方で、才能がありながらそれを発見するチャンスを逸して生涯を閉じる人もたくさんいる違いない。才能を自ら見出し(もしくは誰かに見出されて)天職を全うできた人たちは幸せであろう。そのかげで、そうでない人々も少なからずいることを忘れてはならない。できることなら、すべての人が才能を見つけ出して自分の道を見出せたらいいのだが、こればかりはどうにもならないのか...

言えることは、自分の才能がなんであるかわからないからと言って躊躇したり、引っ込み思案になってはいけないと思う。少しでもひらめきがあったり、興味を持てるものがあるのなら、それをさらに磨くためにその世界に飛び込んでみてほしい。才能はやはり努力によってさらに磨きをかけられるものだ。躊躇することなく、自分を試してみてほしい。もし仮にうまくいかなかったとしても、自分が信じたものにチャレンジできたのなら、きっと後悔はしないと思う。

科学を目指す諸君にも、このメッセージを送りたいと思うから、そしてエールを送りたいと思うから、思いつくままに書いてみた。最後まで読んでくれてありがとう。

ザ・フォーク・クルセダーズ

2007年07月21日 | 音楽
ふとしたことで、10代の前半から聴いていたフォークソングに再開しました。その一曲とは、ザ・フォーク・クルセダーズの「悲しくてやりきれない」です。

ご存じない方も多いでしょうね。作詞はサトー・ハチロー、作曲加藤和彦です。ザ・フォーク・クルセダーズは加藤和彦、北山修が中心となって結成したフォークグループで、「帰ってきたヨッパライ」、それに「イムジン河」などのヒットを出しました。「帰ってきたヨッパライ」のレコードが出たとき、近所のレコード屋さんに注文して、何日も待たされたあとようやく手にした時には、そのレコードが宝物のように思えました。

「悲しくて・・」は実に名曲。何度聞いて胸が熱くなります。それに、「イムジン河」は、現在の朝鮮半島の状況だけでなく、反対勢力間の紛争が絶えない中近東の状況を思うとき、平和の大切さを訴える実に素晴らしい曲です。

最後に、加藤と北山コンビの名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」は私のカラオケの持ち歌です

千の風

2007年07月15日 | 音楽
日本では「千の風になって」という曲がヒットしているのですね。私も昨年暮れの紅白歌合戦で聴いた時、その歌詞とメロディーの美しさに惹かれましたが、しばらく忘れていました。

「私はお墓の中にはいませんよ。千の風になって地上の生命を育て、星になってあなたを見守っています」というような内容です。この歌には色々エピソードがあります。ニューヨークのテロで亡くなった方々の追悼式で、お父さんを亡くした幼い少女が作者不明のこの詩を朗読して、多くの人に感動を与えたとのことです。原作は英語だったのですね。驚きました。

というのは、この歌詞を初めて日本語で聴いたとき、これはまさに真言密教の伝える思想であると思ったからです。実に東洋的思想、仏教的思想の匂いのする詩だなあ、と思ったからです。ところが、この原作者はどうもアメリカ人女性であるようです(諸説があるようですが)。やはり人間の行きつく死への考え方には、人種や文化を超えて共通性が存在するのだと思いました。私にとっては驚きと感動の発見でした。

「千の風になって」をいまiTuneでダウンロードして聴いています。心にしみいる名曲です。

Glenn Gouldを聴く

2007年02月25日 | 音楽
最近家にいる時バックグラウンド音楽として聴いているのは、グレン・グールドのピアノによるバッハの曲です。何度聴いていても深みが増すばかりで、飽きることがありません。それは、その巧妙な技術によるものではなく、ピアノの音の中にこめられている彼の気持ちというか感性が素晴らしいからです。

グレン・グールドはトロントのユダヤ系の家に生まれ50歳の若さで一生涯を閉じました。その間、素晴らしい作品を数々残しています。私の気に入っているアルバムは「イタリア協奏曲」「フランス組曲」「イギリス組曲」などです。これらのアルバムを紹介してくれたA氏とM氏に感謝します。バッハの旋律がグレンに手によって生き物のように蘇って、聴き手の心に染入ってきます。音楽は時代に関係なく人の心を動かします。素晴らしいことです。

Sarah McLachlanの「Wintersong」

2006年11月20日 | 音楽
久々に音楽の話しです。毎朝行くスターバックスでSarahの新しいCD「Wintersong」を目にし、早速購入しました。とてもいいCDでした。

以前にも書きましたが、Sarah McLachlanはカナダのバンクーバー出身の人気シンガーソングライターです。日本ではあまり知られていないようですが...このCDも日本のスタバにはないのかもしれません。もうすぐクリスマスシーズンということで、このCDもクリスマスソングが中心ですが、Sarahのオリジナルも入っています。たとえば、「Song for a Winter's Night」、とてもいい曲です。彼女の透き通るような声がWintersongによく合っていて、できれば雪の降る、クリスマス休暇にピッタリです。

日本でもいつかきっとSarahの音楽がポピュラーになるを予想するとともに期待してます。

バート・バカラックの音楽

2006年07月17日 | 音楽
中学のある時期、私はバートバカラックの音楽に魅了されていた。映画音楽で彼の作曲・演奏したメロディーが私の心を惹きつけた。「明日にむかって撃て」がその代表例だ。黒人歌手ディオンヌ・ワーウィックが歌う名曲も数え切れないほどある。当時、バカラックのLP盤を私は数枚持っていて、何度も何度も聞き返しながら夜を過ごした。

中学の音楽の先生に、バカラック音楽の素晴らしさを幾度となく伝えると、当時まだ20代だったと思われる女性のその先生は、私に一番好きなバカラックのLPを学校に持ってきなさいと言われた。そして、授業でそれを鑑賞しようということになった。西洋のクラッシックや日本の古典音楽ならともかく、当時のポップ音楽を授業を一時間つぶして、皆で聴くなどということは、当時かなり前衛的であったろうと思う。実際、この授業は予定通り行われ、クラス全員がバカラックの音楽を、整然と並べられた教室の机と椅子に着席して、一時間近く物音一つたてず聴いたのだ。こんな環境で、一体何人のクラスメートがバカラックのよさをわかるのだろうと思いながら私は聴いていた。曲が終わると、この先生は何も言わず授業を終了した。そのあと、私には一言こんな感想を述べられた。「君は音楽に酔っている。」そのことをいいともわるいとも言わず教室を後にされた。私はいまでもこの言葉を忘れられないでいる。遠い昔の思い出である。

グレゴリアン・チャント

2006年04月27日 | 音楽
最近、グレゴリアン・チャント(グレゴリアン聖歌)をよく聴いている。特に、早朝まだ薄暗い時間に目が覚めたりして(今がまさにそうだが)、ことを始めようとする際、バックグランドとしてグレゴリアン・チャントを流すと、部屋の空気が透き通るような気分になる。清々しい気分にさせてくれる。

話しは変わるが、最近イラン人の同僚のH氏と談話していて、彼が並みはずれたオーディオのマニアであることを知る。SANSUIの高級アンプのことを情熱をこめて話してくれた。彼はテヘランで音楽家の家族の中で育ったそうだ。それを聞いた私には、シルクロードの音楽の音色が響いてくる。彼の脳の中にインプリントされた音楽への愛着が、オーディオを介してにじみ出ているのではないか?やはり、故郷の音楽を聞くそうである。

グレゴリアン・チャントを聞きながら音楽と脳、音楽と人、そして音楽と文化、のことに思いをはせている。

尺八の音色

2006年04月19日 | 音楽
3月17日の記事で、ヨガ教室で聞いた尺八のCDの話をしました。早速このCDを入手し、ここのところ毎日自宅で聞いています。尺八の音色がこんなに「リラックシング」で「リフレッシング」だとは、今までまったく想像だにしませんでした。実に素晴らしい音色です。このCDを演奏しているのが、外国人であることを思うと、これまた感動もひとしおです。演奏者であるStan Richardsonはテキサス在住のイギリス人で、尺八を20数年修行していて、テキサスでは道場も持っているそうです。きわめて日本的なメロディーの間や物悲しさ、さびが実にきいたすばらしい演奏なのです。日本の伝統や文化に造詣が深い外国人に接するたびに、日本人でありながら日本の文化(この場合尺八)を解せず、接することのなかった自分自身を恥ずかしく思います。また一つ外国人から教わりました。

以前にもエリザベス桐谷さんのことを紹介しましたね。東京下町の長屋に対する彼女の愛情と造詣にも、私は敬愛の念を禁じえません。それから、何といっても、私がもっとも敬愛する日本通の外国人は、ドナルド・キーン博士(コロンビア大学)です。ご高齢ですが、ご健在です。彼の書いた日本の文化や文学に関する著書はほぼすべて読みましたが、尊敬の一言です。しばらく京都に住まれたこともあり、日本をほんとうに愛されていることが彼の著書からうかがい知れます。たとえば、彼は『このひとすじにつながれて』(朝日選書)の中で、「下駄の音が私は好きだ。特に夜近所の人たちが、丘の麓の銭湯へ往き来するときなど。これは私にとって、最も日本的な音だったのだ。」と書いています。桐谷さんの心につながるところがありますが、日本人にとってもこういう音がほんとうに懐かしい音になってしまいましたね。

キーン博士はこの日本人の心を、大多数の日本人よりもさらに鋭い感性と知識で彼の著作の中で表現しています。驚くべきことです。この他にも、『二つの母国に生きて』(朝日選書)、『果てしなく美しい日本』(講談社学術文庫)、司馬遼太郎氏との対談『世界の中の日本』(中公文庫)など数多くの素晴らしい作品を残しています。一言でいうと、彼は日本人よりも日本の美を解し、それを日本語でも英語でも表現できる人物なのです。素晴らしいことです。

尺八の音色から、とんだ方向へ話しが逸れてしまいました。あしからず。