カナダ・エクスプレス

多倫多(トロント)在住の癌の基礎研究を専門にする科学者の自由時間ブログです。

細胞接着のゴードン会議

2005年06月28日 | サイエンス
今ニューハンプシャー州アンドバーのプロクター・アカデミーに来ています。空港での入国審査も予想したより簡単に通り抜けられ、拍子抜けしました。それにしても指紋と顔写真を取られるのはあまり気持ちのいいものではありませんね。このゴードン会議は細胞接着に関する会議で、今回はカドヘリンを会議の中心テーマとしていて、初日の夜のキーノートは日本から竹市雅俊先生、ドイツからロルフ・ケムラー先生のダブルヘッダーで行われました。それにしても、とにかく蒸し暑いです。ゴードン会議というと、こういう田舎のプライベートスクールの夏の休暇を利用してやるのが恒例です。この会場も例にもれず、そういうところです。宿舎は学生用の寮で部屋にはエアコンなどありません。部屋にエアコンはありませんが、ワイアレスインターネットはあります。面白いですね。トイレとバスはもちろん共同。学生に戻った気分が味わえるのはありがたいのですが、この暑さにはまいります。昨夜はなかなか寝つけませんでした。幸い会場とダイニングルームはエアコンがきいていますので助かります。このあたりはこの学校以外に何もないので、特にすることもありません。私の発表も今朝無事終わり、4時から始まるポスターセッションまで休憩です。

どこも猛暑ですね

2005年06月25日 | カナダ
日本も相当な猛暑が襲っていると聞きますが、こちらトロントもかなりの暑さになってきました。今日は33度まで上がりそうです。電気節約が盛んに呼びかけられています。どのうちからもエアコンのファンの音が聞こえてきます。ただ、朝夕は20度近くまで下がるので、日本の「真夏日」とはくらべものになりませんね。今年の夏はトロントも猛暑になるという予想らしいです。明日から出張です。行ってきます。

名人戦七番勝負 第7局

2005年06月24日 | 将棋
将棋の名人戦がいよいよ大詰めを迎えて第7局の二日目の対局が伊豆で始まっています。森内俊之名人3勝-羽生善治王将3勝で、この勝負に勝ったほうが名人位に就くことになります。羽生王将が勝てば、5冠を独占するばかりでなく、永世名人の称号を獲得できる大一番です。インターネットのおかげで、対局場の様子がほぼ瞬時に写真と解説付きで中継(有料)されています。指し手はもちろん、お昼ご飯は何を食べたかとか、午後のおやつは何かまで、写真入りで見られる時代になりました(ちょっと野次馬的ですが...)。それも地球の反対側に住んでいる私などにも、同時に入ってきます。今朝の羽生四冠は、有名な寝癖が大胆にできていたそうです。これはよく寝た証拠でしょう。若干20歳の渡辺竜王の解説も的を得ていて大変楽しめます。こちらの時間で明朝までに決着が着くはずですが、今夜は寝られるかどうか...。

アメリカへの旅行

2005年06月23日 | サイエンス
この週末から数日間ニューハンプシャーで行われるゴードン会議に行ってきます。アメリカ行きは久しぶりです。というのは、ここしばらくアメリカ行きを敬遠していたからです。とにかく空港の旅券審査に時間がかかります。極端な言い方をすると、誰でも容疑者扱いで見られます。私の場合、1時間半近く通過にかかったケースがあり(ほとんどの時間が待ち時間)、その後しばらくアメリカでの学会等を皆キャンセルしていました。私は日本のパスポートを持っていますが、アメリカに入国するには緑のカード(VISA WAIVER)に記入して、入国時にはその半券をパスポートにつけておきます。そして重要なのは、この半券をアメリカ出国時に必ずアメリカの移民局に戻さないといけません。日本と違ってアメリカは出国検査がないので、この半券は通常航空会社が飛行機の座席指定を行うとき返却を要求して、アメリカの移民局に戻すことになっています。これが行われないと、後にトラブルのもとになります。気をつけてください。今回はボストンに飛びますが、どのくらい時間がかかるか不安を感じています。会議には行かなければならないので仕方ありません。一日も早くアメリカが世界情勢の中で正常な状態にもどるのを望むのみです。

街のスーパー

2005年06月19日 | カナダ
こういう何気ないスーパーマーケットの様子も面白いのではと思い、載せてみました。こちらの人たちは林檎が好きですね。それから、最近は大抵のスーパーで、すしコーナーがあります。このスーパーにもクック(すし職人とはいいがたいが)がいて、せっせと太巻きやカリフォルニアロールを作っています。すしは健康食品として北米でも広く知れわたってきたという証しですね。それから、豆腐もあります。これも健康食品の代名詞化しつつあります。もう15年以上も前ですが、アメリカにいたとき、チョコレートあじの豆腐を発見したときは驚きました。このスーパーでは、中国系の豆腐店から仕入れている豆腐も置いてあります。これはいけます。

ブログ de 実験

2005年06月18日 | ブログ
気がついた方もいらっしゃるとは思いますが、今までブログ上でいくつか実験をしてみました。目的はというと、私自身ブログの「仕組み」や「常識」をいまだ把握できずにいて、どうやってブログと付き合っていったらいいのか、まだ分からないことがあり、それの答えを探すべく、実験をしてみました。

まず私が知りたかったのは、一体どういう方々が私のブログを見てくださっているのか?おそらく科学に関連のある方々であろうとは予想がつきましたが、具体的に人物像が浮かばず、一体どういう方々を対象に書くべきか不明でした。それともう一つは、科学以外のことも書くことが多いので、それらの話題に共通項を見出して下さる方々にも見に来てほしいという、管理人としての願いもありました。

そこで、まず試みたのは、これまでにも多くの写真を載せましたが、そのテーマに関して書かれた同じようなブログを見つけて、トラックバックをしてみました。その方々のサイトに書き込みも数件試みてみました。これは、即効でした。驚きました。まったくこれまで私のブログに来たことのない方々がいらっしゃいました。そしてコメントもくれました。そこで気がついたのは、多数の訪問者で賑わっているサイトは、関連のよそのサイトにいってTBをしたりコメントをして、来訪者を呼んでくる努力を日夜されているのだ、ということです。こういうことを毎日続けるのは私には時間的に無理だということもわかりました。

そこで次に行ったのは、サイエンス関係の話しについて、コメントをいただけるようにお願いしました。グラントの話しの時です。これにもすぐに反応がありました。何人かの方々から、ためになるコメントをいただきました。そして、読者像がだんだん浮かんできました。何よりも素晴らしいと思ったのは、私のブログを真剣に読んでくださる方がいて、まじめに考えや疑問をぶつけてくださることでした。こういうコミュニケーションはブログだから簡単にできることですね。皆さんのコメントを読んで、このブログの方向性もだんだん見えてきました。このタイプのコミュニケーションの方が私にとってもしっくりくると感じました。

ここ数週間の私のブログの実験に参加してくださった皆さん、ありがとうございました。これからもぜひコメントをください。グラントの話しや北米の科学事情は、これからも書いていきます。皆さんの考えや疑問をぜひお聞かせください。それから、花やペットそれから食べ物等々の話しも続けます。こちらにも何か反応をいただけたらうれしいというのが、管理人の心情でもあります。今後ともよろしくお願いします。




夕立のあと

2005年06月15日 | カナダ
今は夜の9時ですが、たった今家の近所を嵐のような雷雲が通り過ぎていき、落雷とともにかなりの雨が短時間(30分程度)のうちに降りました。まさに土砂降りという表現がふさわしい雨でした。雲は西から東に抜けていって、今はすっかり雨もあがりました。東の空は真っ暗ですが、西の空は日差しが見えて明るく綺麗です。その西の空を撮影しました。このところ蒸し暑い日が続いていたので、これで少しは涼しくなります。どこの家の芝生も黄色に枯れかかっていましたが、この雨で芝も少しは元気になるでしょう。いい夕立でした。

新シルクロード・天山南路

2005年06月12日 | シルクロード
今晩8時から衛星放送(TV JAPAN)で、NHKスペシャル「新シルクロード-第五集:天山南路ラピスラズリの輝き」が放送されるので、今から楽しみです。日本の仏教文化に少なからぬ影響を及ぼした天山南路のオアシス国家・亀茲国の物語です。2000年前のこの地域の有様が一体どんなものだったか、遺跡や発掘された遺品を見るたびに益々興味が沸いてきます。この番組は日本ではすでに放送済みですが、こちらでも少し遅れで見られます。残念ながら日本で同時に再放送されている25年前の「シルクロード」はこちらでは見られません。

夏が来ました

2005年06月11日 | カナダ
今日はついに日中の温度が30度まで上昇しました。湿度も高く外を歩くのがつらいくらいでした。テレビやラジオでは、「年配の方や子供は外出を避けるように」という警告を発していたようです。日本の方が聞くと大げさに聞こえるでしょうね。まあ、トロントもそれほど暑かったということです。この週末も暑さが続きそうですが、こちらはグラント書きで忙しく、コンピューターに向かう時間がほとんどでしょう。話しは変わりますが、一週間ほど前から近所の猫が家の玄関に遊びに来ます。とてもいい顔をしていて、寝っころがったりするしぐさがかわいい猫です。

グラントの話し 2.はじめてのグラント獲得方法

2005年06月07日 | サイエンス
前回はピアーレビューの意義、正当性について書きました。何人かの方から、この話題を続けるようにとの要望がありましたので、今日はグラントの獲得方法、それも始めてのグラントの場合について触れたいと思います。すなわち、初めて自分で研究室を立ち上げて、初めてのオペレーティング・グラントを書く場合です。ここでオペレーティング・グラントとは、特定の研究プロジェクトに関して提案するもので、その研究の遂行に必要な人件費や消耗品を予算として計上できます。機器類の備品は一部認める機関もありますが最小限ですので、大型の備品(数万ドルを超える)については他の種類のグラントの申請が必要になります。アメリカの場合、このグラントには研究代表者(PI)の給料分も計上できます。すなわち、グラントが継続的に取れないと自分の給料も保証されないという過酷な現実があります。カナダの場合は、もう少し保守的な仕組みで、PIの給料は大学や研究所のコア予算から支払われ(もしくは研究者給与サポート専用アワード)、オペレーティング・グラントに自分の給料を計上することはありません。

 さて、初めてのグラントとなると、何を書くべきか迷うことでしょう。それまでやっていたこととはまったく違った新しいプロジェクトで書くべきか、ポスドク時代にやって来たプロジェクトの延長線上で書くべきか、迷うことでしょう。私の経験から、もしどちらにしますか?と聞かれれば、私は後者を選ぶように進めるでしょう。それはどうしてか?もし「理想的な科学の社会」があるとするならば、これはあまり正当な推薦とは言えません。科学は自由な発想と俊敏な実行能力によって前進するべきで、前にやっていたことばかりにこだわってやっていては、いっこうに新しいことは生まれないと考えるのは、私だけではないと思います。しかしながら、現実は、より確実な、より保守的な研究計画を求める気運が大勢を占めているのです。現在のグラントシステムは、残念ながら、まったく新規な研究を促進する方向にはありません。そのような新規性に富む研究は、「ハイリスク」な研究として、別枠で更新不可の1年程度のグラントを出している機関もあります。いわゆるシードマネーです。これらの現実を踏まえて、安定した研究費の「収入」を得るには、現在のところ後者を薦めざるをえないのです。

 では、あなたのグラントを審査する審査委員会の人々は、あなたの申請書のどこをポイントとして見ているのか?それはいくつかありますが、特に重要な3点について以下に述べます。

1.第一に、論文業績。特に、提案されたプロジェクトに関してすでに論文が発表されているか?
  -矛盾があると思いませんか?「新しいことをやりたくて研究費申請をするのだから、論文などまだない。論文が出たときはそのプロジェクトはもう終わっているのでは...。」最もな話しですが、これではグラントは通りません。上位で承認されるためには(すなわち分配予算も多く認められる)、いわゆるインパクトファクターの高い雑誌に論文が発表されていることが大きな後押しになることは、間違いありません。提案されたプロジェクトとは直接関連はなくても、論文業績は貴方の研究者としての評価に関して大きなウエイトを持ちます。審査委員は、研究計画だけでなく、研究者自身の資質や実績に関してもコメントを求められるのです。彼らが判断のよりどころとできるものは、やはり論文による業績ですし、あとはその分野での貴方の仕事の評判等です。よきにしろ悪しきにしろ、いわゆるreputationはついて回りますので、ご注意あれ。この研究者の仕事はいつもしっかりとしていて信頼がおけるという評判をもらえば、もう貴方のものです。

2.次に、提案されたプロジェクトに関して、その提案内容をサポートする初期実験がしっかりと盛り込まれているか?
  -ひとつは、審査する側から見て、申請者がどのくらい真剣に提案されたプロジェクトに取り組んでいるか、という点がはっきりしていないといけません。彼らの仕事は、ほんとうに優秀で意欲のある研究者が練りに練って出してきた申請書とそうでない申請書を見分けることで、大変な責任があります。それを助けてあげないといけません。そこで彼らが一番求める内容は、初期実験の結果です。どこまで、予定通り研究計画が進んでいるのか?という点です。これらをはっきりと示すことで、より説得力のある申請書になります。ここで、この審査の方法・基準の良し悪しの議論はしません。これが現実だからです。もちろん上で述べたように、論文が出ていればそれに越したことはありません。もっとも、研究計画ですから、そこには何か新規性がないと困ります。その新規な部分に対して、どれだけサポーティング・データがあるか?ということです。私の専門の構造生物学ですと、課題とする蛋白質について、発現・精製はもちろん完了していて、NMRですと綺麗なHSQCスペクトルが提出できているかどうか、X線ですと結晶の写真及び綺麗な反射データが見せられるか、がカギです。ここまで行っていれば、プロジェクトは半分終わったも同然ですね;-)

3.申請書は、科学的に高度で深く、しかも読みやすく作成されているか?
  -よくあるアドバイスですが、「審査員はあなたのグラントをどこで読んでいるかわからない。ビーチでビールを片手に横になりながら読んでいくかもしれない。そんな状況でも、読みやすく親切にまとめらた申請書が好感を与える。」オブジェクティブおよび仮説がはっきり書かれているか?それをどうやって解き明かすか、実験過程が論理的に書かれているか?予定の研究期間内に終了できる研究目標なのか?図の配置、必要は文献引用は完璧か?見かけをよくするページ・フォーマットにも工夫するとなおさら好感を与えます。ビーチであなたの申請書を読んでいる審査委員は、タダでその仕事をやっているのですから、キーポイントが押さえてあって、しかもそれらがハイライトされている読み安い申請書にすれば、彼らの仕事も速く進み、大いに好感を与えることでしょう。

最後に、初めてオペレーティング・グラントを書こうとするあなたへ。ポスドク時代に成果をあげたプロジェクトの延長線上で書く場合、どうしても付きまとう疑問符は、提案されたプロジェクトがポスドク時代のボスのものではないこと、あなたのオリジナルな提案であることを、はっきり示す必要があります。前のボスからのサポーティングレターもプラスになります。あなたの提案したプロジェクトに関して独自性を認めてもらう事と、できればボスからの支援も明記してもらえれば、より安全です。

ちょっと長くなりましたので、この辺で今日は終了します。書き足りなかったこともあると思います。それから、これはアメリカ・カナダのグラント制度における話しですが、日本の場合、このスタンスでうまくいく保障はありません。かなり共通するところはあるとは思いますが、日本固有のやり方があるようですから...。その辺の違い、及び問題点についても、いつか議論してみましょう。それをはじめると文化の違いとか歴史的は背景などに話しが飛んでしまう恐れがあります。今回の話しが皆さんの参考になれば幸いです。参考になったかどうか、コメントをいただけると嬉しいです。

グラントの話し 1.ピアーレビュー

2005年06月04日 | サイエンス
今日はグラントの話しをします。科学の分野でグラントとは研究費を指します。日本では文科省や厚生省、アメリカではNIH、カナダはCIHR(Canadian Institutes for Health Reseach)などの国の機関や私的な研究助成団体などに研究申請書を提出し、認められれば研究費がおりて、めでたく研究が遂行できるわけです。ここで重要なのは、研究者の研究活動の生命線とも言える研究費を、いかに公平に効率よく配分するか、という問題です。「公平に」といいましたが、これは研究者全員で均等に分配するという意味ではなく、配分した予算に見合う研究成果が生まれる研究者のところに確実に必要なだけ配分できているかという意味合いでです。研究費をどんどんつぎ込んでも、何もいい成果が出てこない状況は避けねばなりません。ここで、いい研究者、いい研究申請書を一体どうやって決めるのか?これが重要なカギになります。ここに公平性の意味があるわけです。この公平性をいかに保つか?の答えは、「ピアーレビュー(peer review)」制度であるというのが、一般に世界的に広く受け入れられている常識です。特に欧米諸国では、この方法が科学の世界に広く浸透していて、我々科学者はこの制度を避けて通ることはできません。
 ピアーレビューとは何か?一言でいうと、専門家が専門家の研究申請書なり研究成果を評価する、ということになります。ここで重要なのは、審査する側が誰なのかは審査される側には公表されません。それから、審査する側は審査される側の研究者と個人的な利害もしくは友好関係にある人であってはいけません。例えは、親しい友人同士とか、同じ大学で同じ学科の同僚の場合とか、または、同じ分野で激しく競合している相手同士、など正にも負にも「私情」が混入する可能性がある場合は、審査員としての資格はありませんし、その場合は自分からできないことを伝えるのが常識です。この状況のことを「conflict of interest」と言って、研究申請書や論文の審査の依頼があって断りたいときに使う言い訳(excuse)にもなります;-)要するに、審査とは、客観的に判断が可能でしかも専門的に深い理解をもった者によってなされるべきである、ということです。このことが、厳格たる公平性を保つ根源にあるわけです。もちろん、具体的には色々な問題はありますが、ここで議論したかった論旨から逸脱しますので、ここでは触れません。
 では、具体的にどうしたらグラントがとれるのか?そのポイントは?特に若い研究者でこのシステムに入ろうとされる方には興味があるところでしょう。これはグラントの種類によっても違いますから、長くなります。これは次の機会に書きます。こういう話しは、読者の方は興味があるのでしょうか?お教えください。

6月ですね

2005年06月02日 | カナダ
6月になりました。トロントもかなり暖かくなってきました。この週末にかけて、かなり暑くなりそうです。この時期は例年雷雨が多いのですが、まだ今年はこれといった嵐が来ていません。暑くなると可能性は高くなります。台風やハリケーンなどはないので、春から夏にかけてのこの雷雨がトロントの天気の最大の「エキサイトメント」です。ラボのほうは、今月からグラント書きで忙しくなります。また、この件は別に投稿します。