クラッチから異音がする…という事で入庫したPJ-EXD52ギガ。
実際に入庫した段階では特に気になる音がする訳ではありませんでしたが、サービスホールのカバーを外して中を調べると…
中からグリスにまみれたダンパースプリングの破片がゴロゴロと…

こりゃダメだな…という事で急遽そのまま預かりクラッチのO/Hを行う事に…
まずはゴソゴソしてミッションを降ろします…

で、中の状態を調べるとクラッチディスクのダンパーが数カ所破損しており…


その内、1箇所はディスクのプレートまで割れスプリングが完全に脱落…
サービスホールから出てきたスプリングはコレですね…

で、クラッチハウジング側を見ると何故かオイリー。

ニオイからしてどうやらミッションオイルが漏れてるようで、更に詳しく見てみると…


フロントカバーを止めてるボルトの頭が折れてる…
恐らく破損したクラッチカバーの何らかの破片がフォークとの間に挟まりクラッチペダルを踏んだ時に噛み込んだ事でボルトの頭をへし折ったんでしょう…
ハウジング内に転がってた破片を調べると…
ありました…折れた頭が。

破断面を見ると矢印の方向から負荷がかかり折れてるのが分かります…

ボルトの頭は強い力がかかった為に変形してます。

にしてもM10ボルトとは言え、折れるには結構な力がかかったはずです…
問題は折れ残ったボルトがすんなり抜けてくれるか…
ここのボルトにはロックタイトが塗布されてるし、ボルトの出しろによっては苦労しそうだな…と思っていたんですが…
フロントカバーを外すと、思ったよりボルトの頭が出ていて一安心…笑


これだけ出しろがあればリムーバーが使えます…

リムーバーが入れば難なく抜き取り可能…


ボルトは全数、念のためフロントカバー…通称、『天狗の鼻』も交換します。

オイルシールを圧入…


カバーを取り付け規定トルクで締め付け。
トルクは44Nm…

ここのボルト穴はハウジング内と貫通してるので忘れずにロックタイトを塗布しましょう…
忘れるとミッションオイルの漏れに繋がります。
更にレリーズベアリングの交換…

シャフトやフォークを取り付けて…

レリーズベアリングも組み付けてミッション側の作業は完了。

残るはエンジン側の作業…
カバーやディスクの取り外し…


ツインプレートクラッチの為ディスクは2枚です。

これがフロント側ディスク…

こちらがリヤ側のダンパーが破損したディスク…


それからせっかくなのでクランクシャフトのリヤシールも交換…
スリンガーを抜いて…

新品のオイルシールを圧入…

で、フライホイールの取り付けは塑性域締め付け。
締め付けトルクは79Nmで締め付けた後…


60°からの30°での角度締め…
ボルトの頭にペイントをして…

まずは60°…

その後30°で締め付け合計90°の締め付け。
全てのボルトのペイントが同じ方向に向いてる事を確認…

フライホイールを取り付けたらクラッチディスクを組み付けていきます…
新品のクラッチディスク…

まずはフロント側ディスク…

インターミディエイトプレートも取り付けリヤ側ディスクを…

クラッチカバーを仮付けして、二枚のクラッチディスクのスプラインをアライニングしたら…

カバーを規定トルクで締め付け…
インターミディエイトプレート、クラッチカバー共にトルクは86Nmです。

最後にセットボルトを抜いてエンジン側の作業も完了。

後はエンジンとミッションのドッキング…

無事ミッションも載り…

各補機類を取り付けたら完成です…
トラクターヘッドは上からも作業が出来るのでストレスが少ないです…笑

後はデッキパネルを取り付けたら全ての作業が完了です。
過去に二度ほど大型のクラッチO/Hしたことがありますが。
一度目はユニックだったので車体を少し上げてできましたが、二回目のダンプの時は車体を上げることもできず作業しました。
カバーは持ち上げれないし、セットボルトを抜くのを忘れるし、O/Hに二日かかりました。
二度としたくない作業です。
過去にCYJを3台連続でクラッチOHしたなぁ~(泣)(笑)
設備は大事ですよね…(^_^;)
ウチはクラッチリフターが無いので…
車体を上げる事は出来てもクラッチを降ろす時は少なからず危険が伴います…
作業効率、品質、安全性…これらを向上させる上では設備は欠かせませんね…
専用工具や設備を使用する事で今まで苦労していた作業がここまで楽に出来るのか…と感じる事も出来ますから…笑
やっぱりこの仕事、持つべきものは道具ですね…笑
いすゞさんはプッシュ式、プル式両方採用してるようです…
整備書を見る限りだとこの車両も17インチと15.5インチ、それぞれプッシュ式とプル式の計4種類がラインナップされてます。
ミッションや仕様、耐荷重によって使い分けてるんでしょうね…
3台連続でクラッチO/H…
しかもCYJですか…
F2軸が邪魔でミッション降ろすのも苦労しますよね…
私なら3台連続は萎えます…笑
素晴らしいクラッチ交換ですね!
ほぼマニアル通りで素晴らしいです!
一つ気になるのがミディアムプレートの高さは調整していますか?
確かにクレーンが使えるならミッション脱着もスペース的に余裕が出来るので楽に作業出来るかもしれませんね…
カバーとプレートが一体のツインクラッチはもう人力ではどうにもなりませんからね…
ウチはクラッチリフターが欲しいです…笑
今回のこの作業時間はちょうど1日くらいですかね…
昼から初めて次の日の昼くらいに終わる感じです。
レリーズベアリングの圧入も固くはないですが私はプレスでやっちゃいますねぇ…笑
それから実際にはフライホイールの締め付けなんかもインパクトで締め付けてるメカニックがほとんどだと思います…笑
その方法なら緩む事は少ないと思います…
ただ私の場合、緩む緩まないの話ではなくここまでトルク管理に拘るのはあくまでも作業精度に拘りたいからです…
勿論、何から何までトルク管理するわけではありませんが重要な部分に関しては徹底してます…