12月23日の名古屋哺乳類研究会の研究発表会で、特に気になったのが「アライグマ」に関する調査研究の話です。
野呂講師の「矢作川河畔林における哺乳類の基礎調査報告」の中で、矢作川では平成16年頃を境にして、急に全域にわたって確認されるようになったのことです。
また、藤谷武史先生のお話では、名古屋市内でも平成16年から有害鳥獣駆除が始まったとのことです。
アライグマというと「ラスカル」というほどアニメの影響が強く、かわいい動物のイメージがあります。気が「荒いグマ」などというジョーク(?)をよく言っていますが、実物は、ジョークのとおり非常に気が荒い動物で、まず人になつくことはなく、全国各地で飼いきれなくなって放獣され野生化されたといわれています。
アニメの中でも、成獣になったラスカルは近くの農場を荒らすようになり、飼いきれなくなって、もともといた自然の中に戻されます。日本に輸入されたアライグマたちは、飼いきれなくなって、もともといなかった自然の中に放され、トラブルを起こしています。
ところで、アライグマが抱えている問題で一番恐ろしいのは、アライグマに寄生する「アライグマカイチュウ」です。回虫は特定の動物(宿主)に寄生していれば大きな問題を起こしませんが、異なる宿主の体内にはいると、激しい拒絶反応を起こすことがあり、寄生した動物を殺してしまうことがあります。アライグマカイチュウはこの症状をもっとも激しく出す種類で、北米では死亡事例がいくつも報告されています。
回虫の感染(移動)経路は、アライグマから人に直接的に感染するわけではなく、アライグマの糞が土壌を汚染して、食物を経由して口から感染します。
原産国の北米では、感染率は40%ほどといわれていますが、幸いなことに、今のところ日本で野生化したアライグマから、アライグマカイチュウの発見例はないとのことです。
また、酪農大学の浅川教授からは、「アカネズミの回虫」についての報告がありました。日本のアカネズミには2種類の回虫が存在していて、本土には2種類の回虫が存在していますが、周辺の島には、両方存在する島、小型の種類のみ存在する島、両方とも存在しない島の3形態があるそうです。そして、アカネズミに回虫がいる・いないは、本土からの距離や島としての成立年代とは関係がなく、島の降水量などの気候との乾期があるとのことです。
私たちはどうしても、回虫といえば、宿主の動物の方にしか目がいきませんが、回虫は卵などのある時期、自然の中で生きていかなければなりません。そこの自然環境が回虫の生息条件に合わなければ、生きられないことを知ることができました。
さて、アライグマの回虫の話に戻りますが、輸入されていた個体には、寄生虫が発見されていたそうです。しかし、国内で捕獲されたアライグマでの発見事例がないとのこと。
あくまでこれは私個人の仮説ですが、もし、アライグマカイチュウが日本国内の気候に合わず、卵などの時期を過ごせないのであれば、すごくありがたいことです。
研究が進み、アライグマカイチュウ日本で生活できないことが実証されることを心から願っています。