日々思うこと

日常と、
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op.57 鏡

2020-11-23 | 闘病記に名を借りた自分語り

「落涙事例」でも書いたけれど、
ショックで涙しそうになったことの一つが、手術創を自分の目で初めて見たときでした。

それまで、回診のたびに
「傷きれいですね、さすが○○先生(主治医の先生)だ」
のようなことしか言われていなかったので何となく安心していたのですが、
ベッドの上で、初めて鏡で見せてもらったその傷痕は、想像していたものとは全然違っていました。
そうか、お医者さんの言う「傷がきれい」は、
「化膿していない、炎症を起こしていない」という意味なんだな...
そこで初めて気づき、私は何を期待していたのかと落胆しました。

もしも
傷を見ないままだったら、どうだっただろう。
今でも(傷は)きれいだと信じていられたら?

ふと思いました。
「鏡」というものがない世界があったら
人間はもしかしたらもっと幸せなのかも、と。

自分の姿を見ることができない世界では
自分が他人と比べて美しいのか・醜いのかなんて知りようがない。
いくらでもイメージの通りに信じていられるし、外見のことで落ち込むこともないような気がする。

エステやフィットネスなどの「美の伝道者たち」は、よく
「美しくなりたければ鏡をたくさん見ましょう」と言う。
でも、自分を客観視する/できるというのは、幸せなことなのだろうか。
そんなことを思いつつ、今の私は
鏡を脇に押しやって、しばらく目を閉じていたい。