宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・3・熱暴走するBH(ブラックホール)

2019-02-26 00:31:56 | 日記
BHの考察に関係する式のおさらいを少々やります。

ホライズン半径 Rs=2*G*M/C^2=定数項1*M
ホライズン温度 T=h*C^3/(8*pi*Kb*G*M)=定数項2/M
放射エネルギー E=定数項3*T^4*(4*Pi*Rs^2)=定数項3*T^4*(BH表面積)

さてこれ等の式からBHの質量Mが半分になるとBH半径は半分になり、温度は2倍になり、そうして放射Eは(2^4/(2^2)で4倍になる事が分かります。
半径が半分になりますので球の表面積は4分の1になるのですが、いかんせんエネルギーEは温度の4乗に比例しますので、差し引き放射エネルギーは4倍になってしまいます。

そして放射EはE=M*C^2でBHの質量の減少分になります。
これが「BHは小さくなるとドンドン熱くなり、そうなるとさらに加速度的に小さくなる。」につながり「最後は爆発し消滅する」という表現になっている理由ですね。

さて、大筋の議論はそうでありましょうが、しかしながら最後の所の議論がいかにも「大雑把」であります。
なにやらビックバンに似ていて、「爆発させれば跡かたもなく消えてしまうだろう」とでもいうような、荒っぽい結論です。


この「爆発的な最後を迎える」というシナリオの根拠になっているのが、質量が減少して温度が2倍になると放出されるエネルギーは4倍になる、という計算結果でした。
これは黒体輻射の式から導かれる結論ですが、その式の成り立つ前提は放射されるエネルギーは黒体の表面から放射され、その量は表面積に比例するというものです。

つまりエネルギーが放出される層は黒体表面に張られた厚さがたとえば1ミクロンの層であり、この層は光の透過率が100%であって、しかもどれだけ黒体が大きくなろうが、小さくなろうが層の厚みは変わらない、そういう事を前提としています。
しかしながら、もしこの層の厚みが黒体の大きさが半分になったら、それはBHの場合は温度が2倍になるということですが、層の厚みが半分になっている、としたらどうなるでしょうか?

その場合は放出されるエネルギーは4倍ではなく2倍と言う事になります。
つまりこのばあいはBHは確かに熱暴走はするのですが、それは爆発的ではなくなる、と言う事になります。

さて、このエネルギーを放出する事になる層の厚さについての議論詳細は次の「ホーキングさんが考えたこと・4」で扱っていますので、そちらを参照ねがいます。<--リンク


次に現在の宇宙背景放射温度2.725Kと丁度釣り合っている、熱平衡状態にあるBHの質量を求めます。
そうするとその質量MはM=4.503*10^22Kgとなり、これは月の質量の60%にあたる事が分かります。

このBHは仮想粒子を飲み込む事でホーキング放射をしていますが、その温度は2.725K。
そうしてホーキング放射を出す代わりに、宇宙背景放射のマイクロ波を飲み込んでいます。
そうでありますから、このBHの質量の変動はなく、温度的には定常状態にあります。

さてネットによれば『・・・最後には中心部に中性子星が残る。
中心核の質量が太陽の質量の約2~3倍以上ある星では重力崩壊は止まらず,最後にブラックホールが生じると考えられている。』とのこと。
そうであれば上記のようなBHは星の重力崩壊で誕生する事はできず、ビックバン直後に生成されたとされる原始BH(PBH)として誕生する以外に方法はなさそうです。

そうして、このBHより重量のあるBHの温度はいつも宇宙背景放射温度よりも低く、つまりBHが吸収する宇宙背景放射のエネルギーは常にホーキング放射でBHが失っているエネルギーを上回っているという事になります。
そうであればそのようなBHは決して蒸発することはない、と言う事になります。
それどころかそれらのBHの温度は次第に下がっていくのであります。

以上の事は我々の宇宙において、星が重力崩壊して誕生した、あるいはこれから誕生する事になる全てのBHに当てはまります。

他方で熱平衡状態にあるBHのホライズン半径Rsは67ミクロンであり、そうであればこのBHは運良く物質の塊、たとえば星間ガスなどに遭遇すれば、それを吸収して重量を増やす事ができます。

但し、このBHよりも少しだけ軽いBHはホーキング放射によってエネルギーを失う量が宇宙背景放射を吸収する量を上回りますから、質量減少の坂道をころがり落ち始める事になります。
そうして、そのBH人生の中で運悪く物質のかたまりに遭遇する事がなければその行先はプランクスケールのBHと言う事になります。

追伸(4月7日訂正内容)
上記は宇宙背景放射と熱平衡状態にあるBHが存在しうると仮定した議論でありました。
しかしそれ以降の検討結果では、BHが光をホーキング放射する場合はその波長λは最長で2*Rsまでしか許されない事が分かりました。

その条件を入れますとBHが宇宙背景放射温度2.725Kで放射される光を吸収し放射する為には上記で提示した質量の14倍の質量を持つ事が必要になります。
それはつまり「月の質量の8.4倍の重さのBHである事が必要である」と言う事になります。

そしてこのBHは背景放射光のピーク周波数以上の光とは吸収と放射を行いますが、それに達しない振動数の光に対しては「透明」になっています。
つまり2.725Kの黒体放射光を「白色光」と見る生物にとっては「このBHは緑から青色に見える」と言う事であり「黒体には見えない」と言う事になります。

以上、この事についての詳細の議論は「BHは光を出すのか?」の章に譲ります。


さて話は変わって、次にホライズン上での重力加速度Aの事を考察します。

万有引力の式に観測質量として1kgを入れる事でA=G*M/Rs^2でAが決まります。
これも結局はA=定数項4/Mという形になり、つまりBHの質量が半分になるとホライズンでの重力の強さは倍になることがわかります。
そしてそれはちょうど温度Tの式と同じ形をしていて、つまりは重力のつよさがホライズンの温度を決めている、ホライズンでの空間の曲がり具合が温度を決めている事になります。

そうしてこの温度というのはその場所での仮想粒子対の発生の頻度と発生した粒子一つあたりのエネルギーの大きさを決めているのでした。
強い重力場は多くの仮想粒子を生み出し、それはまたきわめて局所的な現象として量子力学で記述できる、そうホーキングさんは言っているのです。
そしてこの局所現象としての仮想粒子の生成と消滅に対して、BHホライズンというのは局所的な現象ではなく(つまり、その場所の重力場の強さで記述できる現象ではなく)つねにBHシステムとしてBH全体で考える事が必要の様です。

ちなみにこの重力場による仮想粒子の生成については、BHであろうと太陽、あるいは地球が作る重力場であろうと区別はない様です。
しかしながらそれでは地球上でも重力場があるのだから、それなりに仮想粒子が発生している事になりますが、BHホライズンと比較するとあまりにも地球上の重力は弱いので、ほとんど重力ゼロの場所での粒子生成と変わりはない様です。
(ちなみに下記BHでのホーキング温度TはT=3.977*10^-20(K)でした。)


BHホライズンについてのちょっとした計算
地球上での重力加速度はご存じのように9.8m/s^2です。.
それではホライズン上の重力加速度が9.8m/s^2になるBHの質量はどれくらいになるのでしょうか?

計算結果は地球の51京倍、太陽の15.5兆倍でした。
Rsは0.49光年ほどになります。
これぐらいのサイズのBHですと、ホライズン上の重力は地上と同じ、しかし一度ホライズンの中に入ったら二度とホライズンの外には出られない、というのがアインシュタインの結論でした。

「いや、9.8m/s^2程度の引力ならロケットで脱出できるでしょう」というのはニュートンさんの意見です。
しかしながらアインシュタインは「いいや、けっしてできない」と言うのでありました。

ちなみに今までに見つかっているBHの一番大きなものは「太陽の210億倍の質量のBH」であるらしく、まあとても15.5兆倍には遠く、我々の宇宙では今の所はここで考えている様な、そんなに大きなBHは存在していない様に思われます。<--リンク

そして、我々の銀河の質量が太陽の7000億倍ですから、このBHを実現させる為には天の川銀河20個分をまとめてBHにしなくてはいけません。<--リンク
さてそうであればBH同士の衝突・合体があるとはいえ、これはなかなか大変な目標と言えそうです。

KWD ダークマター プランクスケール ブラックホール

http://archive.fo/qcADE
http://archive.fo/R4r5p
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