宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・1・小さなBHは本当に消えたのか?

2019-02-23 11:58:53 | 日記
さて、結論は前に示した通り「ダークマターはプランクスケールのブラックホールである」と言うものです。

しかしながら、そういいますと「そんな小さなブラックホールはとっくに蒸発しているよ」とホーキングさんが言うのです。

そうして皆さん、それを信じておられる、その認識を共有しておられる様です。

例えばこの論文を参照して見てください。
論文1・Hawking 輻射とブラックホールの蒸発<--リンク
http://astro-wakate.sakura.ne.jp/ss2013/web/syuroku/grcosmo_24a.pdf

あるいはこれではどうでしょう。
論文2・Kaluza-Kleinブラックホールの蒸発過程<--リンク
http://www-tap.scphys.kyoto-u.ac.jp/~keiju/papers/master.pdf

上の論文ではイントロダクションでこう述べられています。
『しかし、ブラックホール時空上の場の量子論を考えるとブラックホールは熱的な輻射(Hawking 輻射) を出し蒸発していくことが分かる。
ナイーブに考えればブラックホールはそのうち蒸発して消えてなくなると考えられる。
しかし、ブラックホール蒸発の最終段階 (ブラックホール質量 ー> MPl:プランク質量レベル) では、Hawking 輻射の温度が Planck 温度まで上がるため、背景時空への反作用とさらに量子重力の効果が効いてくる。
そのため、蒸発の最終段階のダイナミクスや終状態についてはほとんど何も分かっていない。
4 次元ブラックホールについては、そのような Planck スケールの物理における問題は残されてはいるが、少なくとも Planck 質量になるまでは、準静的にやせていくだけであろうと考えられている。・・・・・』

『少なくとも Planck 質量になるまでは、準静的にやせていくだけであろう・・・』

いやいやプランクレベルに至るまでに、すでに状況はそんなには楽観的ではないと思われます。

そうしてプランクスケールに至るや、もはや何物もBHには飛び込めず、従ってまた何物もBHからは出てくる事はできない、そこで安定してしまう、と言うのが当方の主張であります。


さてまずは論文1から見ていきましょう。

BHの温度TをT=h*C^3/8*Kb*G*Mと算出した後、黒体表面から単位時間あたりに放出されるエネルギーEを計算し、E=MC^2を使って質量に換算して、BHの質量の減り具合を見積もります。

そうやってもともとのBHの質量が消え去るまで、ホーキング輻射でエネルギーが持ち去られて蒸発するまでの時間を見積もります。

さてその結果は「宇宙初期に作られた 、質量M(=1.73*10^11)Kgを持つミニブラックホールは今頃に蒸発する」という結論に至るのであります。
「Non-equilibrium model inspired from Black Hole」の6ページ目を参照ねがいます。<--リンク
https://www.cc.kyoto-su.ac.jp/project/MISC/menu/symposium/2016/slide/Umetsu.pdf

1730000万トンというと地球質量5.9736 ×10^24 kgの34500億分の1、そう言う訳でミニブラックホールと言います。

そしてこれが物理学者の皆さん、天文学者のみなさんが「宇宙初期に作られたミニブラックホールはダークマターにはなれない」という理由であります。

「全て蒸発してしまった」と、そう言う訳です。

しかしながら実際は、といいますと上記Pdfの7ページにある様な各段階を経てプランクスケールBHに至り、さてそこで本当に蒸発するのかどうか、後かたもなく消えてしまうのかどうか、論文2が言う様にまだ確定はしていないのです。


さてそれで、梅津さんPdfの7ページにある2つの段階、粒子放出に伴う背景時空への影響が無視できない段階と次のプランクスケールで起こっている事、それを真面目に検討しなくてはなりません。

論文1に抜けているのはそこの部分の考察であり、それは「マクロパラメータはどこまで行っても変化しない」という前提、仮定の事であります。

BHがエネルギーが抜けるに従って、「事象の地平」、シュワルツシルト半径Rsが小さくなる事は自明の事であります。<--リンク

そうなった時にBHの近傍空間を黒体と見なし、プランクの法則で記述されるような黒体輻射が発生し続けられるのか、まずは疑問であります。<--リンク


上記の質量M(=1.73*10^11)Kgを持つミニブラックホールのシュワルツシルト半径RsはRs=2*G*M/C^2より
2.57*10^-16 (m)と計算されます。

さて、中性子の半径が約1.2 × 10^-15(m)、つまり中性子よりひとけた小さいのですね、このBHは。

そうであればこのBHは「中性子を喰えない」のであります。

中性子が大きすぎてこのBHの口には余るのですよ。


次に素粒子「クォーク」です。

素粒子「クォーク」の半径の上限は 4.3×10^-19m であるとZEUS Collaborationgが決定した。<--リンク

「クォーク」一個であればこのBHに飛び込めそうですが、残念ながら「クォーク」一個という存在形式は出来ない様です。

そうしますと残るのは電子かニュートリノか光子ぐらいなものになります。

さすがに電子では電荷をもちますので何かと支障がでます。

それでニュートリノか光子が残る、と言う事になりますか。

そうしてこれらのものは弦理論ではプランクスケールの弦の振動ととらえられています。

そうであればサイズ的にはそれらのものはこのBHに飛び込める、ホーキング輻射を発生させる事が出来る訳です。


その様な粒子が中性子よりひとけた小さなこのBHの事象の球面の周りの空間で発生しては消えていく、そのうちのいくつかがBHに飛び込む事でBHの質量が消えていく、そうホーキングさんは主張されている訳です。

さてそれではニュートリノの質量はいかほどでしょうか?
・ニュートリノの質量とは <--リンク
https://www2.kek.jp/ja/newskek/2004/sepoct/doublebeta1.html

『この実験からは現在では、ニュートリノ質量は2.2電子ボルトよりも小さいという結果が得られています。
(1電子ボルトは約5グラムの1京分の1のさらに1京分の1)』

さあそうなりますと、いったいいくつのニュートリノがこのBHに飛び込めばM(=1.73*10^11)Kgという質量がゼロになるのでしょうか?

単にニュートリノがBHに飛び込むだけでは、このBHは消滅しそうにもありません。


論文3・量子トンネル効果に基づくホーキング放射の導出と事象地平面近傍の次元縮約<--リンク
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20190222161715.pdf?id=ART0009701868
↓P47
『ホライズンの極近傍において,エネルギー E を持つ粒子-反粒子を作るエネルギーのゆらぎ 2E を考える.
もし,この粒子対がホライズンのすぐ外側で作られるならば,反粒子は時間 h/2E が経過する前にホライズンの中に落ち込む可能性がある.
我々の世界では不安定である反粒子も,ホライズンの内部では実現可能な軌道に乗せることができ,安定となることが知られている [10].

我々は,今,反粒子のみブラックホールに吸収され,実粒子が我々の世界に留まることを考える.
特に,質量の無い実粒子はホライズンに吸い込まれることなく無限遠に到達することが可能となる.
このとき,我々の世界にいる観測者から見ればブラックホールは反粒子(負のエネルギー状態 -E)を吸収したことによって,自身のエネルギーを減少させ,一方で,その減少分と同じ量のエネルギー E を持つ実粒子が我々の世界に出てきたことになり,これを放射として理解することができる(図1).

これが,あたかもブラックホールが粒子を放出するかのように振る舞うホーキング放射のメカニズムである.
Hawking は実際に Bogoliubov 変換を用いて,重力崩壊する天体が作る時空において,生成される粒子数期待値を計算した.
すると,ブラックホールからの放射はある温度(ホーキング温度 TH = κ/2π)を持つ黒体放射スペクトラムに一致する,すなわち,ブラックホールが黒体放射のように振る舞うことを示した.・・・・・』

これがホーキング先生が語った事の要旨の様です。
さてそうであるとすると、いったいニュートリノの何がプランクの法則で記述されるようなエネルギー分布を持つ黒体輻射を形造る事ができるのでしょうか?

『特に,質量の無い実粒子はホライズンに吸い込まれることなく無限遠に到達することが可能となる.』

いったいこの名前もない実粒子というのは何であって、そうしてまた何がプランクの法則で記述されるようなエネルギー分布を持つ黒体輻射を実現するのか、それがまったく分からないのであります。

そいうことが一切不明のまま「宇宙初期に作られたミニブラックホールはダークマターにはなれない」、「全て蒸発してしまった」と、そう主張されているのでありました。

KWD ダークマター プランクスケール ブラックホール

http://archive.fo/vfEqo


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