宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

中間まとめ・ブラックホールの寿命計算について

2023-05-26 01:54:16 | 日記

このあたりで一応ここまでやってきた事を振り返っておきます。

まずは通説で無視されている、BHがホーキング放射を出すにあたって単位時間にBHが出すエネルギーを制約すると思われる4つの要因をあげました。

その最後にあげたものが「BHがホーキング放射を出す事で動き回る」という事に起因して生じる「相対論からの制約」でした。

その制約はBHの質量が1プランク質量程度よりも大きい場合には無視できそうですが、それを切ると無視できなくなる様でした。

それでその制約条件を定式化したものが「ホーキング放射の一般解」として求められました。

これによって「BHはホーキング放射を出す事ではマイナスエネルギー側にジャンプする事はできない」という事が明らかになりました。

 

ちなみに「通説の寿命式ではBHはマイナスエネルギーにジャンプしない」を前提として導かれていますが「何故ジャンプしないのか?」に対する回答を提示できません。

通説に従うならば「BHはマイナスエネルギーにジャンプするのが自然」であり「そうしてようやくホーキング放射を出さなくなるから」であります。

この事については今まではだれも指摘してはいませんでした。

しかしながら当方はその事についてはかねてから疑問に思っていました。

それでその事を調べますと「BHがホーキング放射を出す事で動き回る」のであるが「その時には運動量保存則が満たされる必要がある」という事から「ホーキング放射を出す事ではBHはマイナスエネルギーにはジャンプできない」という所までは分かっていました。

そうしてその事をベースとして今回はさらに相対論的に状況を正確に記述する事で「ホーキング放射の一般解の導出」に至りました。

そうであれば「ホーキング放射の一般解が求められたのは今回が初めて」という事になります。

 

さらにこの「相対論によるホーキング放射の規制」については「発生する仮想粒子の幾何学的な大きさについては何も言及していない」という事に注意が必要です。

つまりは「発生している仮想粒子の大きさ」については「通説が前提としている、仮想粒子は大きさがない点粒子である」という前提であっても「仮想粒子には有限の大きさがある」という前提であっても「その事とは無関係に相対論による規制は同じように働く」のです。

そうしてまた「相対論による規制」ですから「今までの物理学に何か新しく前提条件を追加した事により発生した規制ではない」という所がポイントになります。

つまりは「BHがホーキング放射を出した反動で動き回る」のであればこの制約条件は「どうしても無視する事が出来ないホーキング放射の制約条件になる」という事です。

あるいは「明示できるホーキング放射の制約条件の中では一番基礎にあるもの」が「ホーキング放射の一般解である」と主張できます。

ちなみに従来からの当方の主張である「BHの直径が1プランク長を切ったBHには大きさをもつ仮想粒子は飛び込めない」=「そこでBHはホーキング放射しなくなる」ゆえに「BHは消滅しない」という事とは独立して存在しているものが「相対論によるホーキング放射の規制条件である」と言えます。

 

さてこうして「仮想粒子には大きさがない」という通説の前提に立った場合でも「相対論によるホーキング放射の規制」は働き、その結果は「静止しているBHはホーキング放射では消滅しない」という結論に至るのでした。

 

ちなみに「BH消滅不可能定理」は定性的なロジックの組み立てから導かれたものです。

そうしてそのロジックを「静止しているBHに展開した結果得られたもの」が「ここまでで導出されたBHの近似寿命式」という事になります。

そうしてその寿命式をみることで「どのような状況でBHが質量を減らしていくのか」がある程度理解する事が可能になりました。

以上がここまでの一応の「ブラックホールの寿命計算の中間まとめ」となります。

 

追記:BHがホーキング放射の反動で動き回る件についての論文など:

たとえば以下の様な論文がArxivプレプリントサーバーに投稿されています。

Hawking-Radiation Recoil of Microscopic Black Holes
Samuel Kov´aˇcik

2021年 NOV 3 Arxiv

Abstract
Hawking radiation would make microscopic black holes evaporate rapidly,which excludes them from many astrophysical considerations. However, ithas been argued that the quantum nature of space would alter this behaviour:the temperature of a Planck-size black hole vanishes, and what is left behind is a Planck-mass remnant with the cross-section of ≈ 10−70m2 , which makes a direct observation nearly impossible. Such black hole remnants have been identified as possible dark matter candidates. Here, we argue that the final stage of evaporation has a recoil effect that gives them a velocity up to ≈ 10−1 c. This would lead to a disagreement with the cold dark matter cosmological model unless the primordial black hole formation ceased shortly after the inflation era.

『微小なブラックホールのホーキング放射による反動効果:
サミュエル・コヴァチック』

『要約:
ホーキング放射によって、微小なブラックホールは急速に蒸発し、多くの天体物理学的な考慮から除外されます。

しかし、空間の量子性がこの振る舞いを変える可能性が指摘されています。プランクサイズのブラックホールの温度はゼロになり、残されるものはプランク質量の残骸であり、その断面積は約10^-70m^2です。このため、直接観測はほぼ不可能となります。このようなブラックホールの残骸は、暗黒物質の候補として考えられています。

このレポートで主張されているのは、蒸発の最終段階において(訳注:ホーキング放射の)反動効果があり、これによって残骸は速度約10^-1cまで獲得するというものです。

この結果は、冷たい暗黒物質宇宙論モデルとの整合性に疑問を投げかけます。

ただし、原始ブラックホールの形成がインフレーション時代の直後に終了した場合を除きます。』

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世の中には当方と同じような事を考える方が居られるものです。

しかしながらこの方のレポートに先立っての当方のレポート

https://archive.md/51ZAJ

「ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・21・BH(ブラックホール)が質量を減らす方法(2)」2019年4月29日

ですでに

『・・・そうでありますからここは前回取り上げた「ホーキングさんが考えたこと・16」での例、プランクスケールに到達したBHが出す事になるホーキング放射の例に戻ってこの事を検討する事としましょう。

・・・

従ってこのBHは光速の13%程度で自分がホーキング放射したニュートリノとは反対方向に走り出す事が分かります。』

が存在していました。

つまりは「プランクスケールのBHが光速の13%ほどで走りだす」という報告は「当方の方が2.5年ほど早かった」のです。

ま、一応こうやって「当方の主張は単なるArxiv論文のパクリではない」という事を示しておくのもそれほど無駄な事ではないでしょう。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/rPMpY

 

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