宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ブラックホール「いて座A*」は理論上の最高に近い速度で自転していることが判明

2023-11-22 05:24:33 | 日記

https://archive.md/bQFSE

『ペンシルベニア州立大学のRuth A. Daly氏などの研究チームは、天の川銀河中心部に存在する超大質量ブラックホール「いて座A*(いてざエースター)」のX線および電波の観測データを分析し、自転速度を表す回転パラメーターを0.90±0.06と算出しました。これはブラックホールの理論的な自転速度の上限にほぼ近い値です。

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一般相対性理論を自転するブラックホールについて解くと、ある速度より速く自転するブラックホールは、事象の地平面が消えてしまいます。ブラックホールは事象の地平面より内側に存在する時空であるため、事象の地平面が消えてしまう条件ではブラックホールは存在できなくなると考えられています (※) 。これはa_*という記号で表される「回転パラメーター」という数値で表され、全く自転しないブラックホールは回転パラメーター0である一方、事象の地平面が消えてしまう限界値では回転パラメーターは1となります。つまり存在可能なブラックホールは、回転パラメーターが0から1の間に収まります。

見つかっている多くのブラックホールは回転パラメーターが1に近い高速で自転をしていますが、これは太陽の数倍程度の質量を持つ「恒星質量ブラックホール」での話です。多くの銀河の中心部に存在する「超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)」の回転パラメーターは多くの場合で未知です。

Daly氏などの研究チームは、天の川銀河の中心部に存在する超大質量ブラックホールである「いて座A*」の回転パラメーターの算出を試みました。ブラックホールそのものの自転を直接観測することはできないため、ブラックホールの周りを取り巻く物質である降着円盤からの放射を観測することで、いて座A*の回転パラメーターを算出します。
Daly氏らは、いて座A*に関するX線と電波での観測結果から、それぞれの降着円盤の回転速度を推定し、その値からいて座A*の回転パラメーターを算出しました。その結果、回転パラメーターは0.90±0.06という値となりました。これは1に非常に近く、いて座A*は理論的な限界に近い速度で自転していることを示しています。

超大質量ブラックホールの回転パラメーターが分かると、どのようなことが分かるのでしょうか?例えば過去の研究では、いて座A*の回転パラメーターは0.44というかなり小さな値が推定されたことがありました。一方で、超大質量ブラックホールは周りの物質を吸い込んで自転速度を上げる傾向にある、つまり回転パラメーターが上昇する傾向にあると考えられているため、これは矛盾します。しかし今回の研究では、0.44と推定した研究とは研究手法が異なるものの、より矛盾の少ない結果が得られています。
また、ブラックホール周辺の環境は、自転している場合と自転していない場合とでは大きく異なります。ブラックホールの自転は降着円盤からの放射などに影響し、ひいては銀河の進化など、より大きな範囲に影響を与えます。いて座A*が大きな回転パラメーターを持つことは、超大質量ブラックホールを持つと考えられる多くの銀河の環境や進化を考える上でも影響するかもしれません。』

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「銀河系中心部のブラックホールは高速回転、周囲の時空を引きずる 新研究」: https://archive.md/LstWp :

『・・・英王立天文学会月報に10月21日発表された研究結果によると、研究チームは「アウトフロー法」と呼ばれる手法を活用して「いて座A*」の自転速度を算出。アウトフロー法では、ブラックホールの周囲の物質やガス(降着円盤とも呼ばれる)に見られる電波やX線の放射を観測する。


この結果、研究チームはブラックホールが回転していて、「レンズ・サーリング効果」を引き起こしていることを確認した。10年あまり前にアウトフロー法を設計したペンシルベニア州立大のルース・デイリー教授によると、レンズ・サーリング効果は「慣性系の引きずり」とも呼ばれ、ブラックホールの回転で時空が引きずられる際に発生する。


デイリー氏はアウトフロー法を考案して以降、さまざまなブラックホールの回転の研究に取り組み、2019年には750を超える超大質量ブラックホールを調査した論文を執筆した。


「この回転により、いて座A*は周囲の時空の形を大きく変化させる」とデイリー氏。「私たちは全ての空間次元が同等な世界の中で考え、生活することに慣れている。天井までの距離、壁までの距離、床までの距離はどれも直線的で、どれか一つが他に比べて完全につぶれるようなことはない」


「しかし、高速で自転するブラックホールが存在する場合、周囲の時空は対称ではなくなる。回転するブラックホールが周囲の時空を引きずって、つぶしてしまい、言ってみればアメリカンフットボールの球のように見える」(デイリー氏)
時空の変化について心配する必要は全くないが、この現象を解明すれば天文学者にとって非常に有益になりうると、デイリー氏は指摘する。


「銀河の形成や進化におけるブラックホールの役割を理解する素晴らしいツールになる」「ブラックホールが回転するダイナミックな実体で、周囲の銀河に影響を与えることがあるという事実にはとても興奮するし、大変興味深い」(デイリー氏)
研究ではブラックホールの回転に0~1の値を与えた。0はブラックホールが全く回転していない状態を意味し、1は最大値となる。デイリー氏によると、これまでは「いて座A*」の回転値について一致した見解がなかった。


アウトフロー法を使った結果、いて座A*のスピン角運動量の値は0.84~0.96であることが判明したという。』

 

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