宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ダークマター・43-3・ハッブル定数の食い違いについて(3)

2021-03-14 13:01:35 | 日記

さて前のページの結論はこうでした。『ダークエネルギーを考慮してもそれを考慮しない場合の宇宙年齢、それはプランクの場合は138億年でありその数値に変更はない、とするならば、なおかつ宇宙の大きさを24.5%増やす為にはハッブル定数は現状のプランクレポート推定値よりも概算で20%ほどは増やす必要がある、という結論に至るのでした。』そうして注記でも述べましたがプランクレポートのハッブル定数の推定値は少なくとも上方に修正する必要がある、という事でした。

しかしながら上記結論は「宇宙の最初期の状態も物質とダークエネルギーの2成分からなるフリードマン方程式で記述できる」という前提に立つものです。しかしながら実状はといえば、もちろん宇宙の最初期は輻射エネルギー100%であり、その後は輻射と物質からなる2成分のフリードマン方程式に従うのでした。

そうであればこの検討の旅もここで終わるのではなくて、ビッグバンのスタート時までさかのぼる必要があります。

「輻射-物質拮抗時期」と「宇宙の晴れ上がりの時点」での各成分が持っていたエネルギー密度の割合は以下の様なものでした。(42-1・輻射-物質拮抗時期 よりの引用)

『「輻射-物質拮抗時期」
宇宙誕生から7.4万年後 温度8860K (0.88eV)
観測可能な宇宙の半径 1422万光年
(1422万光年先の場所の後退速度は光速の132倍)(注2)
物質密度 陽子3.86*10^10個/m^3
(ダークマター1.25に対し通常物質0.25の割合
ダークエネルギー成分はこの時も陽子3.5個/m^3相当で物質密度に対して無視できる程度の値)
放射のエネルギー密度 陽子3.86*10^10個/m^3
臨界密度 陽子7.72*10^10個/m^3

「宇宙の晴れ上がり」
宇宙誕生から38万年後 温度3000K (0.3eV)
観測可能な宇宙の半径 4200万光年
(4200万光年先の場所の後退速度は光速の63倍)(注2)
物質密度 陽子1.5*10^9個/m^3
(ダークマター1.25に対し通常物質0.25の割合
ダークエネルギー成分はこの時も陽子3.5個/m^3相当で物質密度に対して無視できる程度の値)
放射のエネルギー密度 陽子5.1*10^8個/m^3
臨界密度 陽子2.0*10^9個/m^3 』

それで上記数値を参照するならば「宇宙の晴れ上がり時期」では75%が物質、放射が25%、ダークエネルギーは無視可能となります。そうして付け加えるならば、従来はこの時には物質100%である、として物質100%のフリードマン方程式で扱ってきたのでした。

そうしてまた、物質30%ダークエネルギー70%が現時点での宇宙を表す、と言う理由でその様にパラメータを代入したフリードマン方程式から宇宙の晴れ上がり時期を推定した場合も、晴れ上がり時点でのダークエネルギーはほぼゼロとなり、従って実質上は晴れ上がり時点、およびそれ以前の宇宙の挙動については物質100%として解いたフリードマン方程式の結果と変わる事はないのでした。

しかしながら実状は、といえば「晴れ上がりをふくめてそれ以前の宇宙の状況を表す」としたならば輻射25%物質75%のパラメータ設定で宇宙の晴れ上がりから前の状況を解く必要があります。

そうして、その宇宙と比較検討されるべき宇宙は物質100%として解かれたものになります。それで物質100%の宇宙については ・43-1 ですでに解いてありました。(・43-1・ハッブル定数の食い違いについて

物質100%の宇宙

このグラフのt=0の点が今度は「宇宙の晴れ上がり時点」となります。そうしてこの時刻はこれまでの検討結果よりプランクデータを使った場合はビッグバンから47.7万年後となるのでした。(「・42-3・輻射-物質拮抗時期と宇宙の晴れ上がり時期」から引用)

次は輻射25%物質75%のパラメータ設定で宇宙の晴れ上がりから前の状況を解く事になります。

初期条件(詳細については「42-1・輻射-物質拮抗時期 」参照)
Heq=+1、Ωm:eq=0.75、ΩΛ:eq=0、Ωrad:eq=0.25、a(eq)=1
Ωk:eq=(1-Ωm:eq-ΩΛ:eq-Ωrad:eq)=(1-0.75-0-0.25)=0

それで解くべき式は
『x’=(0.25/x^2+0.75/x)^0.5,x(0)=1』
計算範囲は-0.8から0.2まで、刻み幅は0.005でいいでしょう。

物質75%放射25%の宇宙 

ビッグバンが始まった所がグラフからー0.59あたりである事が読み取れます。

さて物質100%の場合はビッグバンスタートはー0.667でそこから宇宙の晴れ上がりまでは47.7万年かかるのでした。(実際はダークエネルギーを考慮した物質とダークエネルギーの2成分のフリードマン方程式を解いて時間を求めているのですが、宇宙の晴れ上がり時点ではダークエネルギーはほぼゼロで無視できるため、それより前の状況は物質100%でのフリードマン方程式の解と挙動が同じになります。)

しかしながら物質75%放射25%の宇宙ではビッグバンスタートからt=0.59で宇宙の晴れ上がりまで到達します。そうであればその時の時刻は42.2万年と計算できます。

さてプランクではもともと宇宙の晴れ上がりを38.3万年としてきました。それが実は42.2万年ですから10.2%程後ろに伸びた事になります。

宇宙の晴れ上がり時刻の伸びと宇宙の大きさについて今まで行ってきた議論を振り返れば、宇宙の大きさは10%ほど大きくなる事になり、したがってまたハッブル定数もプランク公表値の66.88ではなく73.7程の値となるのでした。

別解の追記:厳密解による方法 輻射+物質モデル  (5.32)式の積分表現にパラメータを代入してウルフラムで計算させる。

Ωm,0=0.75,   Ωr.0=0.25を代入し a=0~1で積分する。

入力文「0から1の範囲で1/(sqrt(0.75/x+0.25/x^2))を積分」

・実行アドレス 

答えはt=0.592593  ≒0.59<--グラフ読み取り値

 

結論
プランクのハッブル定数の推定値は10%程持ち上げる事が妥当である。

そうすると73.7程の値となり、SH0ESの推定値74.03と一致する事になる。(注1)

注1:日経サイエンス2021/4月号 「ハッブル定数 食い違う観測値」から「標準光源としてセファイド変光星とIa型超新星を使った場合のハッブル定数の推定値を出しているチームがSH0ES」

 

追伸(3/25):上記では一応「結論」としましたが、ここで展開している方法は宇宙のはれ上がり時点でそれより前は輻射ー物質の2成分のフリードマン方程式に従い、それ以降は物質ーダークエネルギーの2成分のフリードマン方程式に宇宙は従うものとして解いた結果でした。

しかしながら実際は、といえば輻射ー物質ーダークエネルギーの3成分のフリードマン方程式に宇宙は従うのですから、そこにはまだ誤差が存在しそうです。あるいは言い方を変えますと「宇宙のはれ上がり時点で2つのフリードマン方程式を接続させる」というのは「どの時点で2つの式を接続したらよいのか」という任意性が残っている方法である、と言えます。

そういうわけで、我々はまだ最終的な結論に到達はしていない模様です。

 

・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

 

https://archive.fo/RtLFF  https://archive.fo/w5thl

 

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