宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

ホーキング放射とブラックホール・51-1・ホーキング放射を再考する(1)

2021-03-05 11:46:08 | 日記

最初の疑問、そうして多分多くの方の疑問、それは「どのようなメカニズムでホーキング放射が起きるのか?」、そうして「何故BHは蒸発するのか?」という事でありましょう。

ホーキングさんの原論文は「Particle Creation by Black Holes」Received April 12, 1975:Commun. math. Phys. 43, 199--220 (1975) でありそれは

https://link.springer.com/article/10.1007/BF02345020 のページからダウンロードできます。そうしてこの論文、誰か訳して解説してくれるととても助かるのですが、、、。(注1)(注5)

そこで展開されているSchwarzschild ブラックホールのホーキング放射のポイントのみ抜き出して解説したものが

Hawking 輻射とブラックホールの蒸発 になります。そうしてこの論文でさえ数式運用を含めて理解するのは大変な事です。

まあ専門家の皆さんが仲間内に話す文章、説明というのはこんなものなのでしょう。ホーキングさんの原典でも説明に出てくる絵はペンローズダイアグラムであり、そんなもの我々が見方を知る訳もありません。

そういう訳で、専門家以外にとってはいまだホーキング放射は「謎の放射」なのであります。あるいは専門家の中においてでさえ「合意された物理的なホーキング放射のモデル:描像は存在していない」かの様であります。(注2)

さて、まずは日本語のWikiから見て見ます。

ホーキング放射 『・・・簡略化された説明
簡略化された説明では、量子力学的に真空ゆらぎからトンネル効果により粒子がブラックホールの事象の地平線付近で対生成を起こす。その対生成で出来た二つの粒子の一方(負のエネルギー粒子)が地平線に向かって落ち、片方(正のエネルギー粒子)が外へ放射される。(注3)エネルギー保存の法則からブラックホールの質量エネルギーは下がる。つまり質量を失う。この放射がホーキング放射であるとされる[2]。』

↑ よく聞く説明で、日本ではこの説明+アルファ程度の説明しか行われてはいない様です。

例えば ブラックホールの謎に迫る
2004 年日本物理学会科学セミナー では『・・・量子論の特徴の一つは、からっぽの空間というものがないことである。一見からっぽに見えても、ミクロなスケールでは常に正エネルギーと負エネルギーの仮想粒子の対生成がおこなわれている。この対生成がホライズンの外で起きたとしよう(図 4)。正エネルギーの粒子はエネルギーを持っているため、エネルギーが大きければブラックホールから逃れることができる。一方、負エネルギーの粒子はブラックホールに吸い込まれる。(注3)負エネルギーの粒子が吸い込まれるため、結果的にはブラックホールのエネルギーは減り、ブラックホールは次第に小さくなっていく。ブラックホールが「蒸発」していくのだ。
遠方の観測者には、ブラックホールから正エネルギーの粒子が届く。この時ブラックホールは、あたかも温度を持った物体のようにエネルギーを発する。温度を持った物体は、温度だけで決まる普遍的な放射をする。放射は、その物体が何からどうできているかには左右されない。太陽の放射もこのような熱放射である。ブラックホールからの放射が普遍的な放射になるのは、これがランダムな量子ゆらぎから来ているからだ。

光さえもブラックホールからは脱出できないので、ブラックホールからは何も出てこないはずであるが、このように量子ゆらぎを考えるとブラックホールは熱放射を起こす(ホーキング放射)。ただし図からもわかるように、ブラックホールから実際に何かが出てきているわけではない。実際、放射は温度だけで決まるので、放射にはブラックホールを作り出した物体の「情報」は反映されない。この点が後々問題になってくる。・・・』などと言う様に説明されています。

あるいは 量子トンネル効果に基づくホーキング放射の導出と事象地平面近傍の次元縮約 では『・・・量子論の重要な性質の1 つに不確定性関係がある.この関係は,粒子の位置を正確に測定するとその運動量の測定値が不確定となり,逆に,運動量を正確に測定するとその粒子の位置の測定値が不確定になることを意味している.粒子の位置と運動量の間の不確定性関係から,時間とエネルギーの間にも類似の関係式
ΔtΔE ∼ (h~),    (23)
を得ることができる.ここで,(h~) はプランク定数を2*PI(円周率)で割った数である.時間Δt の間にある量子力学的状態にある粒子のエネルギーΔE の最小の不確定性となる場合を表している.この関係式から,非常に短い時間であれば,エネルギーのゆらぎΔE が大きくなることが可能となることが分かる.量子場の理論によると,我々の世界ではいたる所でこの「エネルギーのゆらぎ」により粒子-反粒子の対生成・対消滅が起こっていると考えられている.通常,反粒子は正のエネルギーを持ち,我々の進む時間方向に対して遡る方向に進む粒子として考えられ,我々の世界においては安定に存在することが出来ずに,
Δt ∼(h~)/ΔE,    (24)
と非常に短い時間内に実粒子と対消滅しなければならない.また,反粒子を我々の進む時間方向と同じ方向に進む粒子と考えるとき,反粒子は負のエネルギー状態を持つ粒子として解釈することもできる.
一般相対性理論の局所平坦性により,ブラックホールの極近傍のような曲がった時空においても,この粒子-反粒子の対生成は起こっていると考えられる.ホライズンの極近傍において,エネルギーE を持つ粒子-反粒子を作るエネルギーのゆらぎ2E を考える.もし,この粒子対がホライズンのすぐ外側で作られるならば,反粒子は時間(h~)/2E が経過する前にホライズンの中に落ち込む可能性がある.我々の世界では不安定である反粒子も,ホライズンの内部では実現可能な軌道に乗せることができ,安定となることが知られている[10].我々は,今,反粒子のみブラックホールに吸収され,実粒子が我々の世界に留まることを考える.(注4)特に,質量の無い実粒子はホライズンに吸い込まれることなく無限遠に到達することが可能となる.このとき,我々の世界にいる観測者から見ればブラックホールは反粒子(負のエネルギー状態−E)を吸収したことによって,自身のエネルギーを減少させ,一方で,その減少分と同じ量のエネルギーE を持つ実粒子が我々の世界に出てきたことになり,これを放射として理解することができる(図1).これが,あたかもブラックホールが粒子を放出するかのように振る舞うホーキング放射のメカニズムである.・・・』などと言う様に説明されています。

 

注1:たとえば ホーキング放射 な説明があります。

注2:たとえば ブラックホール/ホーキング放射:反粒子のみをキャプチャする理由 の様な議論があります。あるいはそこで紹介されている様な ブラックホールの地平線ではホーキング放射は発生しません。 そういう議論もあります。 あるいは ホーキング放射はどのくらい正確にブラックホールの質量を減少させますか? な議論もあります。

注3:なぜマイナスエネルギーの粒子がBHに吸収され、プラスエネルギーの粒子がBHにはじかれるのか、説明されていません。

注4:なぜ反粒子のみがBHに吸収される場合のみを考えれば良いのか、その逆の場合をなぜ考えなくてよいのか、説明されていません。

注5:ホーキングさんが計算した状況は、星がつぶれてBHになる、まさにその時に何が起きていたのか、と言うものでした。その話を最初に聞いた時には「何故、そんなダイナミックな状況で計算を行う必要があったのか?」疑問に思いました。そのような動的な状況ではなくて、星がBHになった後の「静的な、静かな状況での計算の方がふさわしい」と感じたからです。そうして、何故ホーキングさんがそのような状況で計算をしなくてはならなかったのかが、英文のホーキング放射のWikiに書かれてありました。

ホーキング放射

それによれば『ホーキング放射の発信光子は、モードが過去にさかのぼると、地平線に近づくにつれて遠方の周波数から発散する周波数を持ち、光子の波長を「スクランチアップ」する必要があります。ブラックホールの地平線で無限に。最大限に拡張された外部シュワルツシルト解法では、モードが観測者が行けない過去の領域に拡張された場合にのみ、その光子の周波数は規則的に保たれます。その領域は観測できないようで、物理的に疑わしいため、ホーキングは過去の有限時間に形成される過去の領域のないブラックホールソリューションを使用しました。その場合、すべての発信光子の発生源を特定できます。つまり、ブラックホールが最初に形成された瞬間の微視的な点です。

ホーキングの元の計算では、その小さな点での量子ゆらぎには、すべての放射が含まれています。最終的に長時間の放射を含むモードは、事象の地平線の隣に長く滞在することによって非常に大量に赤方偏移するため、プランク長よりもはるかに短い波長のモードとして開始されます。このような近距離での物理法則は不明であるため、ホーキングの元の計算には納得がいかない人もいます。』という事でした。

 

追記マイナスエネルギー粒子について 阪大物理学オナーセミナー :Note 2 平成 20 年 4 月 27 日 以下引用では数式は正確に表現されていない為、原典を参照願います。

『2 場の量子論
素粒子を記述する数学的枠組みは場の量子論であり、その中の標準理論は特別な対称性を持つゲージ原理を充たす場の量子論である。場の量子論は量子力学に特殊相対論を組み合わせた理論である。量子力学の相対論化にあたって最初に遭遇した困難は負エネルギー粒子の存在であった。場の量子論では負のエネルギー粒子問題は存在しないが、負エネルギー粒子問題を解く過程は教育的に有用な概念を含むので、歴史を追って場の量子論の初歩、場の量子化の理解に取り組むことにする。・・・

場の量子論における負エネルギー問題解決法       相対論的粒子にはエネルギーが負の解がある。歴史的には物理的に意味がないとして負エネルギー解なしで理論を作る試みも行われたが、その場合因果律が破れる。相対論では負エネルギー解も必要なのである。しかし場の量子化では、負の振動数を持つ平面波の係数を生成演算子と置くことによって負エネルギーの矛盾は解決する。というより Eq. (52) の置き換えにより作った場の量子論では負エネルギー粒子の問題ははじめから存在しない。
なぜそうなるかについて、その部分をもう少し詳しく述べよう。場を消滅演算子で展開する時、正エネルギー部分と負エネルギー部分を同等に扱い、しかしそれぞれの役割を見るために分離して書こう。負エネルギー粒子の消滅演算子を ck と書けば KG 場 ϕ は次のように書き直せる。
ϕ(x) =∑k1√2ωV[ake−iωt + cke+iωt]eik·x
, ω =√k2 + m2  (57)

ak はエネルギー ”ω”、運動量 k の粒子を消滅させる演算子である。とすれば、ck は、エネルギーが ”−ω”、運動量 k の粒子を消滅させる演算子と解釈したくなる。しかし今、状態 |ψ > の全エネルギーを E、全運動量を P とすれば、状態 ck|ψ > の全エネルギー運動量は、(E + ω, P − k) となるはずである。ck の作用により系全体のエネルギーが増えているのであるから、負のエネルギー粒子を消したのではなく、エネルギー・運動量・電荷 (ω, −k) を持つ粒子が作られたと解釈する方が自然かつ論理的である。なお、これまでの議論は実場で行ったが、実場でなく複素場を扱っていれば電荷も定義できる(補遺 §A.5 参照)。
もし、|ψ > の全電荷が Q で 1 粒子の持つ電荷が q であれば、ck|ψ > の全電荷もまた Q − q となるはずである。すなわち粒子を作ることにより電荷が減るのであるから、この粒子の持つ電荷は −q であり反粒子と名付ける。以上の議論から、負の振動数の係数は消滅演算子ではなく実は反粒子の生成演算子なのだと再解釈すれば負エネルギーの粒子は現れない。そうであるならば、エネルギー運動量 (ω, k) を持つ反粒子の生成演算子はa†k= c−k (58)の置き換えにより得られる。そうすれば Eq. (57) は書き直して

ϕ(x) =∑k1√2ωV[ake−iωt + a†−ke+iωt]eik·x

=∑k1√2ωV[ake−iωt+ik·x + a†ke+iωt−ik·x]
=∑k1√2ωV[ake−ik·x + a†ke+ik·x]   (59)
最後の式で kµ → pµ で置き換えたものは、まさに Eq. (54a) を再現する。こうして負振動数部分の消滅演算子を生成演算子と再解釈して作られる粒子(反粒子)の量子数は、電荷をはじめとして全て粒子の量子数の逆、すなわちマイナス符号を付けたものになる。この性質は、ディラックの空孔理論とあっている。空孔理論では反粒子と粒子を合わせた量子数は真空の量子数になるので、反粒子の量子数は粒子の逆となる。なお、”負のエネルギーを持つ粒子が反粒子である”と言う表現をしばしば目にするが、これは誤りである。負のエネルギーを持つ粒子は存在しない。反粒子もまた正のエネルギーを持つのである。

多様な場の量子      場は物理現象のいろいろな場面で現れる。ここでは真空としての場が粒子の発生源という描像をとったが、外的状況により場の現れ方は多様である。場とは一般的には、ある種のエネルギーが空間的に拡がっている状態を表す。場が励起されるとエネルギー量子 (粒子) が飛び出す。たとえば静的電磁場には粒子は一切現れないが、場の量子論では全ての現象を量子で記述する。その考え方に従えば、電磁場は仮想フォトンの集合体である。仮想粒子 (virtualparticle) とはアインシュタインの関係式E =√p2 + m2 を充たさない粒子のことをいう。エネルギー量子ではないので粒子として観測されることはない。電磁場を揺らせば(注:外部からエネルギーを与えれば)実フォトンが飛び出してくる。古典的な電磁波は多数の実フォトンの集合体と考えられる。 ・・・』 

↑ ホーキング放射は「エネルギー量子」であり観測可能である。だがその出生をたどれば「仮想粒子の対生成という形で誕生している」のである。そうして最終的にはBHからエネルギーを分け与えられる形でBHの外側で仮想粒子から実粒子に変換されて飛び出してくるのである。それから出てくる粒子のうちの約半数は反粒子なのである。つまり「BHは粒子、あるいは反粒子に対するえり好みはない」のである。

・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

https://archive.fo/1DpB2

 

 

 

 

 

 

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